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[十三 美杉長政] さらわれ属性

「よし、スキル確認。俺から」


 【見せやがれ】:対象をアナライズ(分析)することが出来る。


「前と同じじゃねーかよ。がっかりだ」

「あたしも前に覚えたスキルだわ」


 【土竜の遊弋】:手を付けた対象の土エリアを耕す。


「ああ、箱探しでだっけか。やってたな」

「羽瑠は?」


 トースケに促される羽瑠。何の遠慮もなく呼び捨てだった。羽瑠に、それを気にしている素振りはなかった。


「わたしも、前にあったスキルだったよ」

「なんだ? ライトアップか? 軽くなるやつか?」


 羽瑠のスキルなら覚えている。軽量化するスキルなら、結構楽しい。ライトアップは、守るのが大変だ。囮としては機能する。


「言わなきゃ駄目?」

「言わない理由がわかんねーよ。どっちのスキルでも覚悟はしてるぞ」

「じゃあ……」


 【さらわれ属性】:さらわれやすい。


 しばし、言葉を失った。


 なんだろう。デメリットしか感じないスキルだ。


「そんなスキル、前にあったか?」

「あったのです。訊かれなかったから言わなかったけれど」


 だから、何度もさらわれてたのか。迷惑この上ないな。


「前のパーティに戻ってもらった方が、いいんじゃない?」

「い、いやです」

「だって足手まといこの上ないわよ」

「嫌です。嫌です。嫌なんです。堂安翔也!」

「ぎゃーーーーなんてことを言うのよっ」


 何やってんだ、こいつら。


 せっかくなので、アナライズも実行してみることにした。対象はもちろん、羽瑠とトースケだ。羽瑠から実行してみる。


「羽瑠は、薄幸歌手だってよ、職業」

「あ、そうなんだ」

「なんて希望したんだ?」


 継続参加が認められていたので、今回は面接をしていない。メールで希望職種を伝えていた。


「さらわれない歌手って」


 やっぱり、希望は聞いてもらえないんだな。


 こうも希望通りにならないと、嫌がらせのようにも思えてきた。希望に関連した職業だが、質は落とされる。他の人達も、皆こうなのだろうか。


「トースケは、土竜もぐらの申し子? なんて希望したんだ?」

「してないわよ」


 なんだって。


「特別感あるかっこよさで、なんかズルいな」

「当然よ。特待プレイヤーだし」

「なに、特待プレイヤーって」

「宣伝効果が見込めるプレイヤーのことよ。優遇処置されるの」

「悪い宣伝効果だったじゃないか」

「うるっさいわね。見込みがあったんだから、問題ないわ」


 ロールクエスト参加を許された理由が、長政には考えつかなかったが、段々、トースケが許されたから、長政も参加を許された、と思えてきた。長政は、自分が特別優れた人間とは思っていないが、トースケよりはマシな人間性な気がした。


「誰にも誘われない程にぼっちだったのにな」

「誤解しないで。何人かには誘われたのよ」

「じゃあ、なんで組まなかったんだよ」

「一般人だったからよ。事務所から避けなさいって言われてたの」


 ほんとコイツ、ナチュラルに好感度下がる発言を繰り返すな。そういうことを、一般視聴者が見ている前で言うなよ。


 思うところはあったが、今のトースケの発言に、ちょっと引っかかった。一般人は避けなさいと言われていたのに、なぜ今、長政と一緒にいるのか。同じことを、羽瑠も感じたようだった。


「俺も羽瑠も、一般人なんだが」

「そ、そうです」

「はあ? もう明らかに有名人じゃない。あんたは悪い意味でだけど」

「一般の有名人なんだが」

「それはね、もう一般人って言わないの」


 おいおい。これ、どう捉えりゃいいんだ。返す言葉がねーよ。


「おい、羽瑠。なんか言い返せよ」

「えっと……、堂安翔也っ」

「ぎゃーーーーー」


 ダンシーの真名の扱いが、報復用途になっている。


 そもそも、有名人とは、どこから有名人と言われるのか。

 世間に名が知れ渡っていれば、定義上は有名人なのだろう。そういう意味で、ロールクエストの世界では、前回優勝した経歴上、確かに有名人ではある。さらに長政には、別の悪評もついてまわっている。


 しばらく、雑魚敵と戦った。ロールクエスト1の初期モンスターが多い。だが時々、一直線にゴブリンが襲いかかってくる。奇襲されないよう、常に注意した。

 複数のゴブリンに襲われることもある。最初は焦ったが、トースケがいると、特に脅威とならない。


「土竜の遊弋」


 トースケが地面に手をあて、スキル名を発する。次の瞬間には、正面の土が盛り上がり広がっていく。

 向かってきたゴブリンは、その耕された土に、足をとられるのだった。その間に攻撃を集中させて倒せる。


「有能。やっぱズルいな」

「ふふん」


 トースケは得意気だった。断じてトースケがすごいわけではないが。


 実時間で午前中いっぱい戦っただろうか。ワールド内は暗くなってきていた。昼夜の概念が実装されている。

 暗くなりきる前に、城下町に戻った。城下町内は松明で明るい。


 戦利品を換金すると、そこそこのお金になった。そのお金で、貨幣袋と荷袋を買った。残った貨幣は貨幣袋に入れ、さらに荷袋にいれた。ずっしりとした、そこそこの重みになっている。


 町の食堂に行った。

 食事メニューは、案外普通だった。カツ丼とか、カレーライス。現実の食堂のような品揃えだ。ゲーム内通貨で食べられる。

 スポンサー出店だと、有名ラーメン店もあった。ワールド内は暗いが、昼時ということもあり、列が出来ている。他にもスポンサーによる出店は色々ある。


 全員で昼食後、装備を購入した。

 長政は、結局ロールクエスト1時と同じ、鉄の剣と盾を購入した。相変わらず重いが、知っている重みだ。使いこなせる。


「あたしは、杖」

「ゴルフクラブみたいな形だな」

「殴る時しか使わないから、こういうのが良いの」


 魔法使いっぽいイメージで選んだのではなく、撲殺用か。そう言われると、トースケに似合っているような気がしてきた。斬るより叩きたそうな顔だ。どんな顔だ。


「で、羽瑠は短剣か」

「うん。重い武器は無理だし、包丁なら使い慣れてるから」


 料理をするというのは、サッカー部に所属していた時に、聞いたことがある。

 羽瑠の短剣は、腰元に鞘を引っ掛けて所持された。装備したというより、所持したと表現する方が適切な雰囲気だった。多分、本人は戦闘で使う気がない。


 少ないが、残りの金は、分配した。休憩時間で好きに使えばいい。

 昼休憩として、しばしの自由時間を決めた。


 昼食が終わったばかりだが、ラーメンも食べようか。行列を見ながらちょっと考え、結局足を運んだ。




 お読み頂き、ありがとうございます。

 ブックマークすることで、いつでもお読み頂けます。

 続稿も、よろしくお願いいたします。

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