幼女とコワモテは見た目で損してる
初作品です。ちょっとづつ、マイペースに投稿していきます。
よろしくお願いします(`・ω・´)ゝ
巨大な木、世界樹
世界樹の支える大地-ウエノダイチ-
世界樹を支える大地-シタノダイチ-
2つの大地による世界
その世界の名は 【樹界】
世界樹の上、そこにはヒトを愛し慈しむ天族が住む、血統で王が決まる国
【ミマモリ】
世界樹の下、天族の愛を受け庇護下にあり、天族の「お告げ」により王が決まる国
【キノモト】
キノモトの周り、結界の外に多種多様の種族が生き、ただただ強い者が王を決める国
【ハナレ】
これら3つの国によりこの世界は構成されていた。
この物語は、ミマモリの国で生まれた女の子、ミカから話が始まる・・・
それはとても可愛らしい赤ん坊であった。
生まれた瞬間泣くのではなく笑う、この世に生まれてとても嬉しいと言わんばかりの笑顔。
その笑顔は生まれるのに立ち会った天族を笑顔にした。
生まれた時、地の周りでは、花は咲き乱れ、鳥は歌い出し、獣は争いをやめた。
人は言う、これは吉兆世界にとって何かいい事があるという兆候ではないか!と。
<生まれて数年>
ミカの父は言った。
「ミカは凄い!天性の美人で髪は太陽に見劣りしない金、瞳は世界樹を育む湖の青、笑えば周りの者は楽しくなり、泣けば周りは悲しくなるカリスマともいうべき同調させる力もある、この子は凄い子になるぞ!」
ミカの母も言った。
「ミカは天才よ!文字を覚える速度がとても早く、今世の天族一魔法の素質があるとまで長老に言われたわ!」
赤ん坊であるミカは喋り始めて、すぐこう言った。
「ほんと、すいません、私は周りに助けられてばかりの平々凡々(へいへいぼんぼん)の一天族なんです」
間違いなく異常な発言である。
夫婦は親バカであった。
1日の大半は溺愛する娘の自慢話、幸せは娘の成長を見守るという普通の親バカであった。
しかし・・・両親の愛に包まれた娘は普通では無かった。
天族で最も美人になるであろうと父が言う美貌は、生まれて10年を数えた頃から成長がゆっくりになり15年になるまでに成長は止まった。
母が言う天族一の魔法の素養があれど、魔法は習得出来なかった。
周りから見たら出来ているのだが、それは自然に対しての「願い事」の結果であり本人は何も出来ていなかった。
自然と会話が出来る、という非凡な才能があったが、周りから独り言を言う子、だという認識であった。
生まれて時を刻み
<10年>同年代でも格別に理知的、優秀で大人顔負けの問答が出来る天才であった。
「この世界は凄い、世界は教師です」
人は笑顔で彼女を見た。
ミカは自然に愛された。
<15年>知識を教える先生を超え、新たな方面から革新的な視点で物事を考える。しかし幼い。
「私が人に教わる事は無い、しかし世界にはまだ教わる事しかない」
人は困惑で彼女を見た。
自然は彼女の願い事を聞き、ほとんどを実行してくれる。
<20年>人々に知識を乞われる賢者となった。しかし幼い。
「世界あるゆえに、我あり、世界は全てを知るものである」
人は奇異な目で彼女を見た。
自然は彼女の全てを守り、彼女の望み以上の事をしてくれた。
ミカは賢者となった後も身体に悩み続けた。
親はわからない。医者にはわからない。長老にもわからない。
探した先の占い師は言う。
「王の才が開いて見える、この子は国を永く治める王の器よ」
ミカはただただ悲しかった、占い師にこの占いを無いものとして願う。
「それはとても恐ろしいです、いやほんとうに」
年をとらない自然の声を聞く賢者の王、それは安定を望む国の夢であり理想の王である。
血筋があれば…となるが。
ミカは賢者として、相談役として人の役に立つ事をする。
「自然の事での相談役、というのは自然に対しても利益あるしね」
ある天族の農家
「ある時期から作物が実りにくくなりまして…」
ミカは世界樹に聞いて答えた。
「自然の1部として食物連鎖として、作物全てを取るのではなく、少し残し、獣に食べて貰う事にして欲しい。必ず次の年は前の年より多く実らせるから」
ある天族の湖管理人
「水が濁りまして…」
ミカは湖に聞いて答えた。
「周りの植物を管理し過ぎです。天族が立ち入る場所以外は自然に任せて、放置して下さい、必ず水は綺麗になるから」
天族の相談役という立ち位置となる。
「私はただ自然から聞いた言葉を伝えてるだけで…楽だなこれ」
ミカは楽な方向に流された。
<100年>
天族の寿命はヒト族より少し長い程度-ヒトの平均寿命は60である-、ミカを愛した両親は寿命で亡くなった-最後まで愛してくれた80という大往生である-同年代の友人達も亡くなった-元々極小数であったが-。
しかし、ミカは幼いままであった。
伴侶は出来ず、皆からは賢者として敬われているが何処か侮られてる気もする…
「賢者とは!偉く、人に助言をする!敬われるべきなの!」
幼女は敬えと周りに言う。
しかし…ただただ背伸びする可愛らしい幼女であった。
天族の王は死にたくなかった。
歳を取らない、不老不死が羨ましい、手段は自らの手が届く範囲に無いが、不老不死を実現した者が天族の中にいる…その秘密が喉から手が出る程欲しい…
見てみればただの幼子である、拷問の1つでもすれば不老不死の秘密を話すであろう…
天族の王は無実の罪で投獄することにした。
自然はミカの友である…
自然の前で話す事は全て理解する、自然は世界そのものである。
ミカは自然が言う事を聞いた。
「不老不死っていいもんなんかなあ…あげれるならあげたい位なんだけど…取り敢えず拷問はイヤかな!」
捕まってたまるかと家を出た。
自然が言う
「こっちこっち」
自然は友達、友達の言葉を信じて走り出した。
草は言う
「早く逃げた方がいい…」
草は追っ手の足の前に結び目を作り続け追っ手を転ばせた。
大地は言う
「もっと早く逃げた方がいい…」
大地はミカの走る部分の土を前に滑らせて加速させ、追っ手の走る部分を後ろに滑らせ転ばせた。
風は言う
「ミカは飛べるから、早く飛んだ方がいい…」
大地の端に着いた時、風が言う意味をミカは理解した。
「あー、そう…あー…わかった…心の準備をさせて…」
立っていられない程の突風が吹く…
ミカは大地の端から飛んだ
「Ah-Ah-Ah-」
涙を流しながら落下し、
風が巻き起こり落下速度を緩やかにし、滑空し、キノモトの上を飛んだ。
適度な位置に降り立つ事を考えると、風が中々降ろそうとせず、キノモトを超え世界樹の外、ハナレに向かうのに気付く。
「待って!待って待って!」
風は話を聞かずハナレの大きな建物に…
空飛ぶ幼女を目撃したのは視力に定評のあるバックベアード-浮遊する1つ目の目玉の魔物-、ハナレの城を守る魔物だけであった。
ハナレ【王城】
弱肉強食が掟のハナレで、王になる、というのはハナレ一強いという事である。
一騎当千のツワモノ、一騎打ちのみならず多数対一、闇討ち奇襲も叩き返す、最強といえるのがハナレの王であった。
ハナレの王は闇より深い色の髪を後ろに撫でつけ、赤い豪奢金で縁取られたマント、鈍く黒く輝く全身鎧-常在戦場の意をもつ王の儀礼服である-を装備した悪魔であった。
名はハリス。
ハリスは悪寒で気付く
「体が震える…強大な奴がくる…くくく、王の座につき数十年、敵無しと言われた我に攻撃を仕掛ける奴がいるとはな…楽しみだ」
立ち上がり、周りに控える部下に指示を出す。
「この城は暗殺を防ぐ為に魔法の一切が効かない特別な魔石で造られている、よって例え刺客と我が本気で戦おうが城が傷付く事は無い。戦いの場はこの玉座の間で行う。」
我を震わせる程の力の刺客…
「もし、我が負けて死んだら必ずその者に従うのだ。強い者はより強い者に従う。これが世の常だから…」
部下のサイクロプス-1つ目の巨人-は王の心を理解した…1つしかない目が潤んで滲む。
その時代の王の方針で発展も破壊も決まるというハナレにおいて今代の王は歴代の王の中でも最強最優であった。
第六感で危機を察知し刺客を全て返り討ちにし、従うものには繁栄を、従わないものには破壊を。
その王の危機を感じてしまった…
「王の力を心に刻ませて頂きます」
「まだ負けは決まっていないが、かなり強い奴が来る…気を付けろ、巻き添えを食らうなよ」
城の築材全て、魔法が効かず防御力ではハナレ最硬。
王が玉座の間で戦う、という一騎打ちを望まれるなら、唯一の入り口、扉が開いた時が戦いの始まりである。
扉が開く「来たかあ!」ハリスが叫び拳を構える-徒手空拳、魔力を込めた拳が今代の王の最強の武器である-
「ん??」
扉を開いたのは城の門番のバックベアード
「ハリス様!空から幼女が!」と報告した瞬間
「天井が!?」
魔法の一切が効かない天井が砂煙をあげながら崩壊する。
壊れる筈の無いものが壊れる時、ただ驚くばかりで対処出来ないのが一般、対処出来るのが王たるハリスの実力である…が
崩壊したのは城を構成する魔石がミカを傷付けない為に避けた為、ミカを傷付けたくないという意思で魔石は動き崩壊した。
拳で頭上に来た魔石を殴る魔石は確かに砕けたが質量は変わらずそのままハリスを潰してきた。
アーチ構造の天井は互いに支え合いながら出来てる形であり、一部が抜けた際はそこに重なる部分全部が崩壊する。
魔法で飛ばす事が出来ず、ただ本来の筋力だけで戦うには魔法寄りの能力を持つハリスには辛かった。
「巻き込んじゃダメよ!」
可愛らしい声が叱るととてつもない風でハリスを横に吹っ飛ばした。ハリスは壁に体を打ち付け、前のめりに倒れる。魔法でダメージを低減出来ずダイレクトなダメージである。
崩壊の砂煙が薄くなり、部下達が玉座を見やる。
そこには
床に倒れたハリス
玉座に座る幼女
それは歴然とした勝者と敗者
ハナレの掟は強い者が上に立つ、である。
その日…ハナレに新たな王が誕生した。




