表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カクリモン  作者: 廿楽 亜久
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/38

25話 調査

 迫るカクリモノに、軽々と一閃し、倒していく斎藤。

 逵中たちから護衛として、派遣されたらしい。学校には、伝えたところで混乱になるだけだろうと、集団移動にまぎれて離れた。警察には事情が伝えられているため、後で適当な理由をつけられるのだろう。


「高ェならどこでもいいだろ」


 という斎藤の意見により、駅前の大型ショッピングモールの最上階に向かっていた。

 とにかく、遠くまで空を見渡せればいいのだから、いいかと、干川も梶も斎藤に続き、ショッピングモールに入った。


「うわ……すげー人いっぱい」


 新しく作られた建物は、カクリモノ対策も最新のものをしており、避難所のひとつになっていた。


「確かに古い学校より安心だよな」


 梶の言葉に相槌を打ちながら、階段を上がっていく。

 エレベーターはすでに動かないようにされていたため、最上階まで歩くしかない。


「とうちゃーっく」

「つかれた……」


 息を切らせながら、ようやくたどり着いた展望台は、予想通り東京一帯を見渡せそうだ。

 普段であれば、キレイだの富士山だの騒ぐものだが、すでに干川にも梶にもそんな体力残っていなかった。


「で?」

「ム、ムリ……ちょっ、と……待って……」


 唯一息を切らせていない斎藤が、早くしろと催促し、干川を窓辺まで引きずれば、空にぐるりと描かれた円。

 まだ一部は途切れていて、完全ではないが、確かに円だ。


『途切れてる? ってことは、まだ外枠も完成してないってことかな……』


 電話先の宮田も難しそうに唸っている。


『今、干川くんが見た光景を専門家に解析してもらってるから、三人共、今日はそこで待機して。また何か動きがあったら、連絡して』

「わかりました」


 すでに日は落ちて暗い。ここで一晩泊まるのかと、外を見るが、窓に写った楽しげな友人の顔。


「楽しそうだなぁ……お前」

「いやいや! 考えてみろって。すごくね? 展望台で泊まり! しかも、他の客いない!」


 確かに、珍しい光景ではあるが、男三人で展望台で夜空を見ながら泊まると言われて、喜ぶ人は少ないだろう。しかも状況が状況だ。


「つーか、飯取ってこいよ。下で配ってんだろ」

「一番体力ある人が行ってくださいよー俺らのバテ具合見ました?」

「ハァ? なんで俺が取りに行くんだよ。ガキが取りに行け」

「……じゃあ、自分の分だけ持ってきてくださーい。俺らはあるんで」


 学校を出る際に、非常食の食料を一部拝借してきたのだ。一日くらいなら越せる。

 カバンから非常食を取り出せば、目の前から消えたそれ。


「だと思った!!!」


 案の定、奪い取られる始末。

 とはいえ、斎藤の分も最初から入っていたため、奪われたところで問題はない。が、気持ちの問題が大きい。


「ほしいなら素直に言えよ……!!!」


 騒がしすぎる夕食を終え、展望台カフェスペースに置かれたソファで横になる。


「電気は通じてるから助かる」

「親に連絡ついた?」

「一応、避難所にいるって言っといた。まぁ、あっちも避難所みたいだけど」

「そっか」

「お前は? 家に帰ってこいとか言われてねぇの?」


 梶の家は東京のため、両親共に今回のことに巻き込まれ、避難所にいるらしいが、干川は千葉だ。直接は、巻き込まれてはいないだろう。


「電車もバスも動いてないし、危ないから避難所にいなさいだって」

「まぁ、そうだよなぁ」

「ずっとニュースで流れてるってさ」

「ネットもすごいぜ? 大戦の再来!? だとか、東京終末散歩とか。あ、この人更新途切れてる」

「やめて……本気で」

「……ん。寝るか。こんな早寝するの小学校以来だよ」

「確かに」


 ようやく静かになった展望台に、斎藤も静かに目を閉じた。



 ふと目を開ければ、まだ暗い。外を見ても地平線の向こうがうっすら白んでいるくらいだ。

 早く寝た分、起きてしまったのだろう。外に目をやれば、相変わらず空に浮かんでいる円。


「あれ……?」


 見渡す限り、その円に切れ目はない。無くなっていた。


*****


 叫び声すら止まり、ただひたすら走った。隣からは狂ったような笑い声。


「お前、別にあそこにいてもよかっただろ!?」


 隣で狂ったように笑い続ける梶に叫べば、笑い声混じりに「ムリ」だと答えられた。

 宮田が言うには、円が繋がったということは、ミントたちが魔方陣を完成させたことになるそうだ。まだ発動には時間がかかるそうだが、すぐに起点を見つけ破壊しないといけないそうだ。

 危険だが、カクシリャが関わるなら干川が見つけるのが速いという理由で、斎藤と共に探すように言われた。梶はそのままその場に残ることを勧められたのだが、


「下手するとこっちのほうが安全!」


 出ようとした直前、カクリモノが展望台に突っ込み、ひと騒動あったのだ。

 もちろん、斎藤が倒したのだが、曰く、前からよく現れていたカクリモノよりも強いそうだ。強さで言うと下半身だけのゴリラくらいに。

 そもそも、比較的新しいショッピングモールはカクリモノ対策も行なっており、展望台までの階段にシャッターを降ろし、隔離したとはいえ、侵入されたのは事実。別の場所に避難しようという人たちも現れ、大混乱していた。

 結局どうなったかはわからないが、その混乱の中に梶も残りたくないと、斎藤に護衛してもらえるであろう干川についてきたのだ。


「はぁ……はぁ……」


 一度切れた息を整えると、後ろから斎藤も戻ってきた。

 カクリモノが強くなってきたとはいえ、倒せないほどではないらしい。


「で、どっち行くんだよ?」


 基点のありそうな場所は、宮田から送られてきている。梶が、地図アプリを見せるものの眉をひそめている。


「あの交差点、右に行って……まぁ、道があればっすけど」


 先程から何度か、道が陥没していたり、塞がれていたりで通れないこともあった。

 多少ならば、ガレキを乗り越えてしまうのだが、どうにもならない部分もある。確認してくるかと歩けば、梶と斎藤もついてくる。

 途中、何かに気がついたように足を止め振り返った斎藤に、梶も足を止めて振り返った。


「?」


 斎藤も道の先を見つめると、飛んできたコンクリートミキサー車を掴んでいるクチバシの大きな鳥。


「「ギャァァアアァァアアッ!!!!」」


 ふたりの叫びに、干川も振り返れば、飛ぶというより突っ込んできた鳥に、同じように叫び声を上げ、目の前に落ちてきた衝撃で吹っ飛んだ。

 干川よりも近くに落ちてきた梶は、衝撃こそすごかったが、咄嗟に斎藤が襟をつかみ庇ってくれたおかげで、干川のように吹っ飛ぶことはなかった。


「干川!!!」

「チッ」


 干川もどうやら無事らしく、すぐに立ち上がっているが、カクリモノが向こうにいる。

 斎藤がすぐに小刀を鳥の頭に投げつければ、こちらに向く。


「こっちだ! 鳥頭!!!」


 思惑通り、干川ではなくこちらに向いた鳥は、コンクリートミキサー車の上に乗ると、腹を膨らませ、火を吐いた。

 驚いて距離を取った斎藤と梶の予想では、吐かれた火は消えるはずだった。だが、消えない。それどころか道全体に広がっている。


「あ、ガソリン」

「クソガキ! 勝手に生き残れ!!」

「アホかァァ!!!」


 道の向こうに消えていった叫びと共に、爆発音が響いた。


 斎藤とはぐれてから数分。合流するにも連絡がつかず、仕方なく目的地へ向かおうと、慎重に進んできたが、ついに見つけてしまった。カクリモノだ。まだこちらには気づいていないらしい。

 気づかれる前に、別の道に行こうと引き返した時だ。こちらに近づくエンジン音。その音に気がついたようにこちらを見るカクリモノ。


「あ」


 完全に目があった。


「うわぁぁあああ!!!」


 走れば、向こうも追いかけてきた。


「死ぬ! これはさすがに死――」


 銃声。それからタイヤの急ブレーキの音と共に、掴まれた腕と襟。


「確保!」

「了解。一斉射撃、始め!」


 訳も分からず抱き上げられたまま、後ろから聞こえる銃声とカクリモノの咆哮。


「ほとんど効いてないぞ!?」

「敵はノロマだ! このまま振り切る!」


 ようやく腕から解放され、座らされれば荷物置きなのか、一角にはダンボールの山。それに、銃火器。服装からして自衛隊のようだ。


「怪我は? 逃げ遅れたのかい?」

「え、あ……えっと……」

「それとも自分からあんな危険な場所に?」


 険しい口調に、首を横に振れば、信じていない目。


「とにかく、近くの避難所に連れていく。ケガもそこで手当してもらいなさい」

「あ、ありがとうございます」


 天ノ門のことを言えば、違った反応をするかもしれないが、斎藤とはぐれた今、迷惑をかけることになるかもしれない。むしろ、避難所ならば落ち合いやすいかもしれない。

 数分ほどで避難所に指定された運動場に到着した。


「はい。終わり」

「ありがとうございます」


 消毒して絆創膏を貼る程度の怪我だったため、すぐに手当は終わった。

 斎藤に連絡しようと立ち上がると、肩を叩かれ振り返れば、白衣を着た初老の女性。


「場所、わからないでしょ?」

「あ、えっと……」

「運動場にみんな集まってるのよ。一緒に行ってあげる」

「あ、あの」

「あ、ご家族に連絡は取れてる? 携帯ある?」

「そうじゃなくて! 僕、用事があって」

「用事? こんな時に何言ってるの。外に出たら危ないんだから。ここなら、ちゃんと自衛隊の人が守ってくれるから。ね? それとも、来ないといけないなんていう人なの? 私が電話してあげようか?」


 腕を掴まれ、やむなく一緒に廊下に出ると、運動場に向かう。

 正直、もう人は入れないくらいスペースがなかった。だというのに、少し隙間のある場所に向かうと、入れてもらえないかと頼んでいる。


「あ、あの!! 僕、カクリシャで! この辺の調査をするので、すぐに出ていきます!」


 どうにか、それだけ伝えれば、不思議そうに首をかしげた。


「なに言ってるの。カクリシャが戦うのは昔の話よ。私が子供の時の話よ」

「もう、それ何十年前の話?」


 笑い声に押され、開けられたスペースに座らされれば、白衣の女性はどこに何があるかなど、必要なことを告げると忙しいのか医務室の方へ戻っていった。


 人が多い。きっといくつかの避難所が、設備の整った運動場にまとめられたのだろう。ちらほら見かける胸から名札のようなものを下げている人たちは、スタッフのようなものをしているボランティアだそうだ。

 外に出ようとすれば、きっと声をかけられる。適当に嘘をつくにも、ひとりで外に出たところで自殺行為なのは変わらない。

 やはり斎藤に連絡を取ろうと、スマホをつければ、近づいてくる足音。


「あら、学生さん」

「学生?」


 隣の声に顔を上げれば、首からボランティアと書かれた札を下げた知り合いが立っていた。


「こんにちは。なにか困ってることありますか?」

「特にないわよ。お昼の心配くらい」

「あはは。お昼はおにぎりですよ。さっき向こうで作ってましたから」


 すると、こちらに向けられる視線と振られる手。ようやく開けっ放しになっていた口が、言葉を発し始めた。


「ひ、日向さん!?」

「知り合い?」

「はい。バイトの。向こうで話す?」

「あ、はい!」


 慌てて立ち上がれば、日向は一度隣に頭を下げると、出口に向かって歩いていく。


「いやーびっくりした」

「お互い様です。日向さん、ボランティアなんですね」

「実習中だったからね。学生はみんな、ボランティアだよ。強制的に」


 小さく付け加えられた言葉に、干川も乾いた笑いを漏らすしかない。

 廊下を抜けて、裏口のような場所から外に出れば、誰もいない。遠くに銃を持った人は見える程度。


「喫煙所が隣だから、あんまり人が来なくていいんだよ」

「へぇ……で、えっと……」


 先程歩いている最中から、頭の上にすっかり慣れてしまった感覚があった。上を向けば、案の定、雷鬼が顔をのぞかせていた。

 先程までは、いなかったはずだ。


「精霊は姿を消せるからね。この歳で、ずっと一緒だといろいろ言われるからさぁ……学校とかは隠れてもらってるの。それでどうしたの?」

「あ、実は」


 今までのことをかい摘んで説明すれば、「ふたりに連絡しなよ」と真っ当なことを言われ、慌てて携帯を取り出す。着信はない。

 梶の方へ電話をすれば、通話と同時に叫び声。


『生きてたぁァア゛ア゛! こっちが死にそう!! 主にあの人のせいで!!』

「が、がんばれ……」

『干川、今どこ!? ――あ゛!? 死んでないっすよ! 生きてる!』


 後ろから斎藤の声も聞こえるが、遠いし、どこか切羽詰った様子だ。戦闘中だろう。


「俺は運良く避難所に来られて、今、日向さんと一緒」

『そっち行きたい』

「だろうね……」

『あの黄色いのいても、ぜってーそっちの方が安全!!! なにあいつ俺に恨みでもあんの!? 瀕死のやつこっちに投げ飛ばしてくんだけウォォオ!?』


 向こうでまた鈍い音。梶の慌て具合からして、また倒したカクリモノを投げ飛ばされたのだろう。

 干川もなんと励まそうかと、迷っていれば、隣で同じように電話をかけている日向が、うるさそうにこちらに目を向ける。


「元気そうだね。とりあえず、私が一緒に行ってあげるから、ふたりはどこか安全な場所に行くように言ってくれる?」

「だって」

『うるせェ!! んで、テメェに従わなきゃ――』

『岳』

『…………んで、いるんすか……?』


 日向の携帯から干川の携帯を経由するという、なんともアナログな方法で届いた声に、斎藤も一瞬にして静まる。


『お前ひとりならまだしも、梶がいるんだ。任務は結城が引き継ぐ。いいな?』

『うぃっす……』


 大人しく引き下がった斎藤に、干川も感動していれば、小声で耳打ちされる言葉。


「チンピラって結構上下関係しっかりしてるから」

『聞こえてんぞ! クソオン――』

「はいはーい。じゃあ、梶君がんばってねー」


 切られた電話に、日向も自分の携帯に目をやれば、榊も電話越しでもわかるようなため息。


『ああは言ったが、大丈夫か?』

「大丈夫ですよ。ちょうど暇だったし、息抜きがてら行ってきます」

『……わかった。気を付けて。手に負えないことはあまりないだろうが……ミントたちの姿も確認されていない。十分気をつけるように』

「…………はい」


 通話を切れば、早速行くのか名札を外してポケットにしまっている。


「だ、大丈夫なんですか? 仕事とか」

「ちょっとくらいいいでしょ。24時間働けません」


 大丈夫なのだろうかと、振り返ると同時に開いたドア。現れたのは、ボランティアという名札をかけた若い男。


「あ、すみません。って、どっか行くの?」


 どうやら日向の知り合いらしく、首をかしげている。止められるのではないかと、慌てたように日向の方を見れば、あっけからんと返していた。


「散歩。1時間くらい行ってこようかなって」

「マジか。コーラ頼む」

「え゛!?」


 予想外の答えと小銭を渡されている日向に、干川も訳が分からず声を上げれば、日向も笑っていた。


「ダイエット?」

「この状況でカロリー気にしないだろ」


 慣れたようにタバコに火を点け始める男に、日向は少し眉をひそめると、男も気づいたように干川を見た。


「いい?」

「あ、はい。ドゾ」

「というか、喫煙所は隣ですよ。お兄さん」

「勘弁してくださいよ。姉さん。関係者ばっかなのに、俺なんて初日のアレで印象最悪なんだぜ?」

「あー……そうね。うん。ドンマイ」

「ま、俺の方はまだいいけど。話分かる人だし、単位はくれるだろ。つーか、お前もよくアレ耐えられるな」

「ヤメロ」


 煙を吐きながら笑う男は、時計を見て、少し唸る。


「とりあえず、誤魔化すのはいいけど、昼の配布始まったらキツいとは思う」

「あと1時間ちょっとね。じゃ、頼んだ」

「おー」


 男に手を振られると、日向は干川に改めて行こうと言うと、外に向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ