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それからというもの空烏は奏に
付きまとうようになった。
「なぁなぁ奏、ほんとになんの力もねえの?」
「うん、そう。空烏は?」
「俺は烏だな。羽生えてんだろ?
あ、そうだ帰りうち寄れよ。
いいもん見せてやるよ!」
「いいものって?」
「なーいしょ!」
「なんだそりゃ···。」
2人は他愛ない話をしながら昼休みを過ごした。
ホームルームが終わり奏が教室を
出ようとした時、空烏が飛びついてきた。
「おい!うち寄るって約束だろ!」
「いや、行くとは言ってないけど。」
「とにかく遊びに来いよ!」
「···分かった。」
2人は空烏の家に行くため帰路についた。
「空烏のうちってこっち方面なんだ。」
「ん?ああ、そうだぜ。
少し前に越してきてさ。」
「ふーん···僕んちと近いんだ。」
「え!まじで?じゃ、一緒に帰れるな!」
「あ、うん。」
興味無さそうに返事をする奏だが
その顔は少し嬉しそうだ。
__________
「ここがオレんち!上がって!」
「お邪魔します。」
玄関から中へ入ると甘い良い香りがした。
ぱたぱたと足音が近づいてくる。
「あら!空烏おかえり。お友達?」
黒い羽を持つ小柄な女性だ。
「そう!今日知り合った東堂奏。」
「初めまして。空烏の母です。
うちの子がお世話になります。」
「いえ、こちらこそ。今日はお邪魔します。」
「ゆっくりしてってね!
空烏、今クッキー焼いてるから
後で部屋に持ってくわね!」
「さんきゅー。奏部屋行こうぜ。」
「うん。」
「ここがオレの部屋!まぁ適当にくつろいでくれ。」
「ありがとう。」
「んで、学校で言ってたいいもんだけど···。
じゃーん!これ!」
「ん?これって羽?と鱗と···」
「これはただの羽じゃなくて、朱雀の羽だよ!
んでこの鱗は青龍の!それから···」
「いいものって、これ?」
「お前これ?って!ときめかねぇの!?」
「いや、まったく···」
「まじかよ。この羽の鮮やかさとか
鱗の彩りとかさいっこーじゃん!
それに···」
空烏は興奮しているのか話が止まらない。
「そ、そっか。」
奏は驚きながらも楽しそうに聞いている。
__________
「空烏、そろそろ僕帰るよ。」
窓から夕陽が射している。
「おお!今日はありがとな。また来いよ!」
「僕こそ、その、ありがとう。」
奏は少し顔を赤くし、しどろもどろ答えた。
奏は空烏に見送られながら帰路につく。
夜ベッドに入った奏は
(チカラを持たない僕にも、
空烏は優しくしてくれる。
また、沢山話聞きたいなぁ。)
と空烏を思いながら眠るのだった。