はじまり
翼の生えているもの、
鋭い牙や爪をもつもの、
強靭な肉体をもつもの····
人類は数百年の時を経て、新たなチカラを身につけた。
獣のチカラを···
人々はそれらをアビリティビースト(獣の力)から
アビストと名付けた────
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「ふぅ···」
ため息をついた男の名は、東堂 奏«とうどう かなで»。
獣蹄«じゅうてい»高校の2年生である。
彼は今、高校の屋上にいた。
バサバサバサッ
奏の頭上に黒い影が落ちる。
「おーい!奏、なにしてんだよ。」
正体はクラスメートの時高 空烏«ときたか くう»だ。
背中から生えている大きな黒い翼で飛んできたようだ。
そう、彼は烏のチカラを持っている。
「なにって寝てる。」
「寝てる···じゃなくって!授業中だぞ!?」
「だから?」
「だからってお前な···」
空烏は呆れて言葉が出ないようだ。
「寝てたって問題ないよ。今は獣学«けものがく»の時間だし。」
「そりゃ、そうかもだけどさ··」
獣学«けものがく»とは各々の獣のチカラの
使い方を学ぶ時間である。
「空烏は受けなくていいのか?」
「だって奏居ねぇとつまんね」
「僕にはチカラなんてないからさ。
受ける必要は無いしとにかく暇なんだよ」
そう、奏にはチカラがない。
本来人は生まれた時に何かしら獣のチカラを持ち
それは身体的特徴として現れるのだ。
空烏の黒い翼は烏としてのチカラのカタチだ。
しかし奏には特徴と言われるものが何一つ現れていない。
「今日は獣学で最後だよな」
「ん?そうだけどどした?」
「いや、もう帰ろうかな」
「んじゃ、オレもかーえろ♪」
2人は学校をさぼり、帰路についた。