第37話 子供は国の宝です
ブクマ、感想ありがとうございます。励みになります。
今俺の目の前にはハードプレイに勤しむ子供達が……じゃなかった。体を縄で縛られ、猿轡をされた少年少女達が地下にある牢屋にすし詰めにされていた。
俺とジン、ライム達は苦しそうな、助けを求めるような視線を鉄格子越しに一身に受けていた。気分はよくないね。
にしても、この家はとんでもない秘密を抱えていたようだ。
「大方、人身売買ですね。しかも子供限定の。」
「だから俺のこと品定めするみたいに見てきたんだー。あいつら。」
「だろうなあ。探せば裏帳簿とか出てきそうだな。」
さっきから問題起こりすぎなんだよ。
同時にいろいろ起きないでくれ、本当に。俺の脳みそはダンジョンのことだけに使いたいんだけど。
一番に片付けないといけない問題は子供たちだよな。俺の飯代もだけどこいつら放置したら餓死する。
「ジン、この子の猿轡外してくれるか?」
「はっ。」
「げほ、えほっ、はあはあ……」
空気を思いっきり吸い込んでむせる少年。話を聞くのに選んだ理由はこいつが一番冷静そうだったからだ。黒髪の美少年は涙を目にためてぎろっとこちらをにらむ。
「てめえら誰だ……売人か?」
「売人が態々猿轡外すか。バーカバーカ。」
「……何しに来た。」
「答えると思うか。バーカバーカ。」
にやにやしながら言ってみた。一回目は何とか我慢したが、二回目でキレたのかお前がバカとか叫んでる。子供は元気が一番だよね。ジンがあきれ気味に何してるんですか……と言ってきたので、本題に入る。
「で、お前らに帰る家とかある?」
「答えると思ったか。バーカブウアアアアアアアカッ!!!!」
言ってやったとばかりに肩で息をする少年。何だこのガキなかなか見どころあるじゃないか。
「じゃあ、俺たちは冒険者でここに調査依頼があったから来た。ここまではいいか?」
「急にまじめになんなよ!俺がバカみたいじゃんかよ!!!」
「ああ、お前はバカだ。で、人身売買の首謀者と思われる老夫婦とその一味は先ほど連行された。」
「俺はバカじゃねえ!!!」
正しくは食べちゃったっていうのが正解だけどな、だれもそれは知らないので問題なし。
「はんっ信じられるかよ。冒険者にも買い手がいるんだぜ。お前らもそれだろ。だってそこにいるちんちくりんが殺していいかどうかてめえに許可とってたじゃねえか!」
「あーーーそれはあれだ、お前らのこともあいつらの仲間だと思ったんだよ。」
「この状態の俺らを見てか!?」
「そうそう。」
決してお前らが邪魔だから殺そうとかそういうわけではない。
こいつ意外と頭回るな。子供だと思ってなめすぎてた。設定適当にしすぎた感が否めない。ま、何とか丸め込めるだろう。
「依頼のほうは、俺の知り合いから個人的に出されたものだ。だからギルドは関与してないし、全部俺と俺の仲間たちが勝手にやったことだ。気にすんな。」
「気にするわ!」
「戻るけど、お前ら帰る家とかある?行き先スラム一択?」
そう聞いたっきりキャンキャン騒いでいたのに急にだまってしまう。
他の子ども達にも目をやると、泣いていたり暗い顔していたり似たり寄ったりのリアクションだ。
ふむ、スラム一択というのはほんの冗談のつもりだったんだが、この大都市には彼らを世話する施設がないのか?宗教国家のようだし教会でシスターが面倒を見てくれるとかないのかな。
この世界の常識もうちょっと知っておくべきだな。
「よし、行くぞ。」
「お、おい?」
「ちょっとここでおとなしくしてろ。……お前らの帰る家、作ってやる。」
「え?」
スタスタとダンジョンへとつながる暖炉へ歩いていく。後ろのほうでこのまま放置かよ!!!と叫ぶ声がした。だってウロチョロされた迷惑なんだもん。ダンジョンに入られたら殺さなくちゃいけないし。
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「教会は祈りをささげる場所やよ?親を亡くした子供は身寄りがないのは基本奴隷、スラム落ちか餓死やしなあ。」
そう言いながらレットさんが映した教会の祈りのシーンを見せられる。ちなみにリット爺はその光景を鼻で笑っている。グローリア様に祈るとかwwwというのには全力で同意するがやめてやれ。信仰を甘く見ると怖いんだぞ。お前だって邪神教徒だろ。
「田舎は村全体で育ててるとかあるんやろうけど、それは人の結束があるからなりたってるんやよ。ここの人らは信仰に金つぎ込むやんなあ。自分の子どもでもないのに養育費払うわけないやんね。」
信仰に金って……それより人命でしょ?子供は国の宝だよ?なぜそこで駄女神に課金しちゃうの。無宗教らしい日本人の考えだけどさ。
「そっかあ……孤児院もないってことか。」
「コジイン?」
「そっからかあ……」
この世界ほんとに慈悲ない。悲しい。
なればこそ、俺が作ろうではないか。謎の慈善活動家アサヒの登場である。
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そうと決まれば、この家の所有権を俺に移行しなければ。
ライム(家主のおじいちゃん)とスーツ姿のジンを連れて街を歩く。正直出てきたくなかったが俺があの家の家主となるために必要なのだ。
女神教国の首都レインは綺麗で美しい真っ白な街、といった印象だ。
前に行った商業都市オーベルンは石畳な無骨なイメージだったが、ここは正反対。
見た目重視の白さを追求した石造りの家が建ってる。ちょいちょい教会っぽいものがあり、ワンピースのような白地の服に金色の輪っかやらアクセサリーをつけている人が歩いている。
白地の服を着ているのは女神教の金がある方の信者なのだとか。貴族だったり、商業に成功した人だったり、とにかく金のある信者は白い服にこだわるらしい。清楚なイメージを重視しているのかと思ったら全くそんなことはなく、ただ白い生地の値段が高いから金をむしり取るための策らしい。金策かよ。
もちろん白い服を着ていない信者もいるので俺たちが目立ちすぎるというわけじゃないけど、なんか居心地が悪い。なんだろう、ここにいるみんながグローリア様の味方だからだろうか。そう改めて考えると怖くなってきた。
「アサヒ様、着きましたよ。」
「あ、ああ。」
真っ白な建物。この国はほんとに白好きだな。
ここは商業ギルドだ。首都レインの店の管理はもちろん住所登録なども行っている。身分証のほうは冒険者ギルドで発行しているものがあるので、あとは家主の許可があればいいだろう。
で、俺の手元には、あの洋館の権利書がある。
どうやらあのお屋敷の持ち主は男爵の貴族位持ちだったようで、一介の冒険者、しかも一番ランクの低いウッドの冒険者に家を渡して隠居など怪しまれたが、ごり押した。何事も適当にやればうまくいくのだ。
一応身元とか聞き込みして調べておいたけど、あのお爺ちゃんが若い頃戦争で何かしらの功績を挙げて一代限りで爵位を貰ったらしいから、親戚とかも無く貴族らしいしがらみもないようだ。子供は何故か勘当されたんだって。ま、勘当されてんだったらこっちに戻ってくることはないだろう。
合法的にマイホームを手に入れることができて思わず足取りが軽くなる。と、ジンがすすっと俺のそばに寄ってきた。
「何者かがつけてきています。仕留めますか?」
「なあそれ流行ってんの?」
もう俺お前らの血の気の多さにびっくりだよ。
誰かにつけられてるって人身売買のお仲間か?もしくは取引先とか。
ってことは悪者だよな、うん。人を売っちゃいけないもんな。それで経済回ってるとか俺知らない。
ってことは、俺のDPにしてもいいよな、うん。
早くギャグ回を書きたい今日この頃。




