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第36話 ホームonダンジョン

ブクマ、感想ありがとうございます。

励みになります。


前回、神は死んだ。いや死んでしまえ。


なんだって化け物に襲われたあとにあんの駄女神のお膝元にダンジョン構えちゃってるわけ?

そもそもかなり距離があるはずじゃあ…


『あるに決まってるじゃないですか。フィルティ大森林から北西に三千キロですよ?』


三千キロって…沖縄から北海道ぐらいじゃないか…。

え、てことはものの数時間ぐらいでその距離を掘ったと。

そんなこと出来るわけが…いや出来ちゃってるわ。ファンタジーすげぇ。

ちなみに距離感とかが分かる人型…リット爺やリリー達が慄くような目でモグ達を見ている。それにドヤ顔(?)で返すモグ達。あ、うん。お前らがすごいのは有難いが今回ばかりは裏目に出ちゃったんだな、これが。なっちゃったもんは仕方ないけどさ。


「あのさ…これ何もないけどダンジョンとして機能してるよね?」

『じゃないと崩れますからね。もちろんですよ。』

「…だ、ダンジョン探査機的なものが存在する場合は…」

『………さあ?』


事の重大性が分かってる連中が一斉に骸骨ジジイを見る。おい、イアンとわいわいしてんじゃねえ。皆んなの視線に気づいてきゃっとかすんな。怖い。


「なんや、小童。わしに厳し過ぎるんとちゃうか?」

「骸骨ですしじーさんですし変態ですしおすし?」

「おすし?」

「ええ、美味しいですよ…ってそれはどうでもいいんです。いいから、ダンジョン探査機的なものがあるのかないのか教えてくださいよ!」

「そんなんないやんよ。安心せい。」


ひとまずは安心か…?いや待てリット爺が死んでから開発されてる可能性もある。早いとこ整備して戦力揃えないと…DPが圧倒的に足りてない!!!


「てか、ダンジョンとして出来てるなら人一人分ぐらいの出入り口がどっかしらに開いてるよな!?」

『開いてますね。』

「オーガット見て来て!」

「はっ!」


開いていたのは…暖炉の奥だった。

映画とかでよく見る暖炉の奥がくるっと回って隠し扉ならぬダンジョンへの通路…どころかモンスターうじゃうじゃの大広間だ。初っ端から全戦力、絶対殺すマンである。炎から水まで取り揃えております。

ぱっと見扉とは分からないのでありがたいけど…ダンジョンってなんでもアリだな。暖炉ってことはどっかの家に繋がってるってことだろ?人の家に繋がるダンジョンって。


「マスター。」

「ん?どうした?」


ちなみに今はスマホで電話して会話を、レットさんで映像を見てる。


「人の声と生活音がするのですが。」


在宅かよっ……!!


なんで人がいるのか、いるのにダンジョン出来ちゃったのか。居候だぞ?これ。不法侵入っていうか、勝手に家広げちゃったっていうか。

しかもうちのイケメンリア充オーガットが不審者扱い間違いなしです、ありがとうございます。


「どうします?殺します?」

「駄目だけど?」


こいつこんなに血の気多かったっけ?お前は不法侵入の上に殺人まで重ねるつもりなのか。異世界とモンスターの倫理観舐めてたわ。


「では、どうしますか?」

「……ライムや。」

「ん?なに?」


とりあえず情に訴えよう作戦である。



˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚



「勝手に入ってしまって…ごめんなさい!」


栗色の目にアイスブルーの可愛らしい容姿をした年の頃は7歳といったところか、そんな少年が目に涙を浮かべて謝る。

あいつ演技派だなあ。


家主は落ち着いた雰囲気の老夫婦だった。人の良い方なのであまり迷惑はかけたくない。…すでに無理とか言わないでほしい。

お婆さんが微笑みながらライムにお菓子を勧める。お爺さんは高そうな茶葉を用意していた。

完全に絵面が孫を甘やかすお爺ちゃんお婆ちゃんである。和むわぁ。

ライムのやつ遠慮なくばくばく食ってやがる。人の家だぞ。


『ダンジョンのほぼ真上なので自分の巣だと思ってるのでは?』

「図々しすぎるぞ。さっきのへこへこ感は何処行ったの。」


世間話の中で、家はどこだ、親はどこだ、と聞かれたので耳につけたピアス(小型スピーカー内蔵)で指示を出す。これは会話は不可の一方通行だから指示を出すのみ。

家は…ない。親もいない。今日が両親の葬式でふらふらしていたら迷い込んだ、で行こう。今の今までクッキーばくばく食ってたやつの言うことじゃないけどな。


『なぜ家も親も無いと?』

「うまくいけば同情買ってライムを住まわせてくれるかなぁ、って。」


別にうまくいけば程度だけど。なにも持たせず追い出すことはなかろう。

そしたら案の定と言ったらあれだが、うちで引き取る云々の話をしてくれた。いやはや彼らを騙すようで申し訳ないが、うちも死活問題なのだ。これでライムが暖炉にうまいこと近づかないように誘導できるだろう。となると…暖炉の出入り口が使えないから別の場所から冒険者を誘い込まないとな…ぐぢゅう……ん?何今の音。


思考を止め慌てて画面を見る……と、青色のドロドロとしたものが老夫婦に覆いかぶさり、彼らを溶かしていた。ら、ライムくーーーん?????


「な、何してんの!?何が起こってるの!?俺が数分目を離した隙に!!!」

『襲いかかって来たんです。初老の男性が。』

「ん?んんんん?」

『巻き戻しましょうか?』


あらやだ、レットさん優秀。

文字通り、襲いかかって来た。うん、文字通り。

お婆さんがライムを部屋に案内すると言ってお爺さんに背を向けたところで、ライムの背後から片手にハンカチを持ったお爺さんが襲いかかる…前にライムがスライムに変化。絶叫する2人をそのまま呑み込んだ。

……スライムやっぱり最強説。グロイ。

こう人間がグジュグジュと徐々に溶けていって形をなさなくなっていく過程がものすごくグロイ。

俺はストップをかける事を忘れ目を逸らした。もうあそこまで溶かしたらどうしようもないだろう。

リリーに音声解説を頼み俺は右を向く。


「ライムがお婆さんとお爺さんを溶かして養分にしましたわ。完全に溶けてます。魔力が全然なくてご不満そうね。」


何に文句をつけてんだ、あいつは…人の体食べといて…。


「あ、なんか、屈強な黒服の男達が部屋に入って来ました。ライムの姿を見て驚き、溶かされました。今度は魔力が高かったのか喜んでますね。」


そうですか、よかったですね。

……何故に老夫婦の家に屈強な黒服の男達がいるんですかね………。


「御主人様、ライムが何か呼んでますよ?」

「あ、ああ。」

『音声あげます。』


「マスター!なんか襲って来たから食べちゃったーごめーん!」


あんまり悪いと思ってないよね。可愛いから許すけど。さっきの男の子の姿でぴょんぴょん跳ねている。


「あー別にいいよ。ほかに人いるかどうか探してくれ。」

「分かったー」

「他の幻擬粘着体(イミテートスライム)も手伝いに行ってくれ。あ、人型に変身してな。」

「「はい!」」


館の調査はライム達に任せて、モグ達と共にダンジョンを作る。

もうこの際ひたすら節約してしこたまDP貯めてやる。


まずはモグ達に大部屋の拡張を任せ、モンスター達がぎゅうぎゅうづめの現状をなんとかする。もう本当に狭いし、炎タイプと水タイプが同時にいるこの空間は辛い。体おかしくなる。

…そしたらコアルーム作って、迷路作って、通路を……そうだ、いい事思いついた。

そうだよ、この立地を逆手に取ればいい。誰もダンジョンが人の家に繋がってるとは思わない。地上の家で普通に生活していれば尚のことだ。……まあ、早速異変起きちゃってるけども。まずはそこをなんとかしよう。


『……(w_−; ………』

「…何そのコメントしづらい顔文字。」

『何かムズムズするんですよね。こう、体に虫がついていて気持ち悪い感じが…』

「はあ…?」


虫がついてるって言われても、この場合のレットさんの体ってダンジョンでいいのか?

つまりダンジョンに何かついてると。地上にある家が気持ち悪いのかな。今まで大自然の中にいたから。


「マスターーーーなんかいたーーー」

「え?」


ライムの大声がなぜかダンジョンの大部屋すぐ横から聞こえた。ちょっと待て。そこは地下だろ。なんでそんなとこから…まさか、地下室的なものがあるのか?それがダンジョンに隣接していてレットさんがくすぐったかったとか?

というか、いた、ってどういうこと?


「人間の子供が縛られてます!」

「ムームー言ってます!」

「どうするー?殺す?」

「だから駄目だよ?」


どうもうちのダンジョンは子供に縁があるらしい。

あと選択肢に即殺すのコマンドを出さないでくれません?

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