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第35話 だれか嘘だと言ってくれ

引っ越し方法と引っ越し先についての回。

よろしくお願します。


逃げるが勝ち


俺の故郷日本にはこんな素晴らしい言葉がある。文字通りそのまんまだ。

ついでにこんな言葉も好きだ。


肉を切らせて骨を断つ


自身が傷つく覚悟で相手にダメージを与える。…この場合はアレにダメージどころか自分のみに大損害な気がしないでもないが。


『本当にダンジョンを捨ててしまわれるとは……』

「もうこれぐらいしか生き残る手段なかったからな。」


そう、俺はフィルティ大森林の地下に作ったまだまだこれからのダンジョンを捨てたのだ。

まずやったことはモグたち土竜(モール)軍団にひたすら掘ってもらった。とにかく遠くに遠くに……ダミーコアを持たせて。

ダミーコア。その名の通りダンジョンコアの偽物。本当に形だけの代物で破壊されたところで何もない。ダンジョンを維持する機能もない。言ってしまえばただのおっきいきれいな石である。

それを、とにかく遠くへと運ぶ。トリスが化け物を引き付けてくれている間に。

いやもう半泣きでレットさんを握りながら見たよ…右半身がえぐれた時は俺の寿命が確実に縮んだ。まさかバトル中に進化しちゃうなんてさ。もうお前が主人公(ヒーロー)だ。

それはさておき、遠くに運んだダミーコアをどうするのかというと、キャスリング機能を使うためだ。レットさんとダミーコアの場所を入れ替える。そうすることでレットさんを逃がしたのだ。

キャスリングし、そこにモンスターを転送し俺とトリスを移動した後、フィルティ大森林のダンジョンと転送先をつなぐ地下通路、モグたちが掘った道をふさげば、レットさんの力が及ばなくなったダンジョンは重みに耐えられず崩れる、というわけだ。


「申し訳ありません。俺たちの力が及ばなかったばかりに……」

「ん?ああ気にすんな、こればっかりは仕方ないからな。」

「マスター狭いぞおおおおおお!!!!!」

「うるせえ!つーか暴れんな!」


少しはオーガットの殊勝な態度を見習え!今回のMVPはお前だけどさ!…って、


「お前しゃべれんの?」

「進化したからな!」

「進化すげえな」


そういや進化してからオーガットはしゃべれるようになったしな。ゴブたちは無理だったけど。うっ……今回あいつらも死んじまったしな…レットさんが言うにはダンジョンの場所が変わっても三日後には復活するらしいけど。


『進化と言えば、モグたちも進化しましたね。』

「えっ」

「キュイッキュッ(おっきくなった!)」

「おおおお、なんか土竜とはいいがたいサイズだな。」

『モグベアー、災害指定種ですよ』


国一つ潰せちゃっ……え、モグたちが?なんか手が鋼鉄みたいだし地中をとんでもない速度で掘れそうだけど…あ、なるほど、地面を掘りまくって地盤沈下的なものを引き起こせちゃうのか。

にしても狭いな、これ。

モンスターのサイズが大きいってのもあるが、急ごしらえだから部屋としても成り立ってないし。

とりあえず、部屋を量産しよう。まだDPはあったはず……


『ありませんよ、DP。』

「……え?ないってどういう」

『DPは以前のダンジョンに依存します。モンスターはマスターのものなので、場所が変わっても復活しますが。』

「DPって俺のじゃないの?もしくはレットさんのでもないの?」

『ダンジョンのものです。』


つまり、


「無一文……?」

『はい。』

「0DP……?」

『はい。』


神は死んだ。いや氏んでくれて構わないんだけどさ。

レットさんの画面に表示された0の文字に愕然とする。0、ゼロ、零、無し、貧乏。


「嘘だろおおおおおおおおおお!!!!!!」

『だからダンジョンまで捨てることはないといったんです。』

「だって!あの化け物から逃げ切るためにはそれぐらいしないと無理だよ!?」

『まあ、あの人、マスターの居場所わかってるみたいでしたからね。別にダンジョンを作るぐらいでないとどうしようもないのはわかります。』

「だろおおおおおおお!?!????」

『結果無一文ですけどね。』

「うわああああああああ!!!!!!!」

「うっさいやんね、もっとシャキッとしたらどうやい。そんなんやからいつまでたっても童貞……」

「うるさいのはてめえだあ!黙ってろ骸骨爺!!!」


肩で息をしながら、リット爺をにらみつける。童貞童貞言いやがって……こんの変態くそ爺め……。

落ち着け自分。最初期に戻ったと思えばいい。むしろ一番最初よりはましだと思うべきだ。なんせ俺には心強いモンスターたちがいる。本当の0からじゃない。

ならば、現状を整理して、DPの収入源を考えねば。


まず現在地、どこぞの地下空間。

ほんとにただ掘っただけの地面むき出しの空間だ。モグお手製である。前のダンジョンからどれだけ離れているかもわからない。もしかしたらあの化け物が即追いかけてくるかもしれない。

……ものすごい手詰まり感。


最初の頃ってどうやってDP手に入れたんだっけ。グローリア様の賞金以外だとクエストのクリアだけど、前のダンジョンでけっこう達成しちゃってるから無理だし……


「あ、地脈からの収入。」

『ちょうど今入ってきま……え?』

「どうしたの?レットさん」

『地脈からの収入が、1万DPとのことです。』


うん?あれ?前のダンジョンは500DPだったよな。え、20倍?モグたちすっごくいい物件引き当てたね。ラッキー!


『……地脈からの収入って、そのダンジョンのある土地の難易度でも左右されるんですよ。だからフィルティ大森林のダンジョンは収入が少ないんです。』

「まあ、あのあたりド田舎だしなあ。すぐに襲われる訳じゃないし楽っていえば楽だよね。」


ん?てことは、地脈からの収入が多いここは


『即死亡の可能性もある、危険地帯なのでは?』

「も、モグ!地上につながる穴をあけてくれ!できるだけ小さいやつ!モス偵察隊出動!」


一体どんな場所にダンジョンができたんだ?


レットさんのディスプレイには西洋風な建物や白い服に身を包んだ人々が映っている。大都市って感じだな。そりゃ地脈からの収入も多くなるわけだ。こんな大都市なら、冒険者もたくさんいるだろうしな。


「ん?ここは……」

「ちょっ、リット爺近いんだけど。どうしたのさ。」

「いや、その言いづらいんやけど……や、やっぱなんでもな……」

「無駄に引っ張るな!言え!気になるだろ!……まさかここ……」


そんな嘘だよな?

なあ、だれか嘘だって言ってくれ。

すがる思いでレットさんの画面を見る。レットさんは数秒の間の後、その正確すぎるGPSで出した結論を告げた。


『グローリア様のおひざ元、ダンジョンを神敵とする宗教を信仰する女神教国の首都レインのちょうど真下ですね。』

「嘘だろおおおおおおおおお!!!!!!」


一生分叫んだ気がする。


アサヒ「ハードモードすぎんだろ…これ。」

レットさん『普段の行いですね。』

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