第31話 あんのクソ野郎
いつの間にか…年が、明けていました……。
本当にすみません。久しぶりに書いたのでちょっとキャラが変わってるやもしれません。エタらないように頑張ります。今後ともよろしくお願いします。
懐が暖かいと幸せだよ、うん。お金って大事。
『顔がだらしないですよ。マスター。』
「ムフフフフ〜」
レットさんが絶対零度の視線を向けてきているような気がするが、そんなものは気にならない程度に俺はテンションが高かった。
1万人も殺したからなぁ。あっさりと100万DPを超えました。イヤッフゥ!!!
『それで次はどうするんですか?』
「そうだなぁ、残りの帝国軍は2万だっけ?」
そしたら……うっは!考えたらニヤニヤが止まらない。うん、欲しい、とっても欲しい、が、
「どうやってダンジョンに誘い込むかなんだよなぁ。」
『草原はダンジョン外ですからね。』
現在帝国軍本隊が陣取っている草原はダンジョン外。罠を仕掛けられないのだ。それに俺のスタンスはダンジョンに入ってきたら殺す、なのだ。まだ入ってきてない奴を誘い込んで殺すってのはどうなんだ?
「DPは欲しい。」
『この間のことでもっと稼ぐべきだったと後悔しましたからね。』
「だがしかし無差別に殺すのは嫌だなぁ。」
『1万人殺しておいて?』
「そこは、ほら、良心の呵責?」
「な、なんだとぉっ!!?」
「うわっ!」
え?何、何、何!?
突然手元からおっさんの切羽詰まったような大声が聞こえた。レットさんのディスプレイに映されたデブい皇帝が何か宣っていた。その横で恭しく頭を下げている勇者こと工藤先輩。……い、嫌な予感しかしねぇ。
「1万の別働隊が全員いなくなっただとぉ!!?そんな馬鹿なことがあってたまるか!!!」
「はぁ?なんでもうバレて……まさか!」
「間違い無いでしょう。」
とかなんとかケロッとした顔で皇帝に進言する工藤先輩。
馬鹿か俺はっ……!
こいつは、この男は!
「原因はフィルティ大森林内に出来たダンジョンかと。一度国に帰って体制を立て直すべきでしょう。」
自分が楽しければ何でもいい、究極の愉快犯先輩なのに!!!!!
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やられた、完全に。
あの後帝国軍は先輩の言う通りに国へと帰っていった。戦争は先延ばし……うん、良いことだ。それは、良い。本来なら1万よりも遥かに多い犠牲が出る可能性だってあったんだからな。
だがしかし、
「帝国の標的が俺たちに……」
『それだけではありません。全世界がこのダンジョンのことを知ってしまいました。』
帝国は1万の犠牲を隠そうと箝口令を敷いたものの、人の口には戸は立てられない、あっという間に噂は広がり……
「あれからまだ1週間しか経ってないのに何故に草原に市場が出来ちゃってんのかな?」
『冒険者ギルドの支部まで出来てしまってマスターは出るに出られなくなってしまいましたしね。』
先日まで帝国軍がいた市場に冒険者ギルドのダンジョン調査用の支部が出来上がり、そこから続々と様々なお店が建ち始め……すっかり寂れた田舎街とは呼べない程の賑わいを見せている。
ジンとリリーはギルドに登録してるから怪しまれなくて済むが、俺はリーベ達のいる村でしか活動していないエセ冒険者。
「無断で冒険者を騙るビビり……」
『無様ですね。』
「俺もそんな主人公いて良いのかとは思うけどさ。」
モス達の目を通して映し出される映像には皆笑顔でダンジョン攻略について花を咲かせている。大規模ダンジョンだからお宝たくさんとか何とか。……俺のダンジョンにそんな夢見てもらっても困るんだけど。宝箱全部ミミックか空だよ?お前らにとっては何の得もないんだよ?大規模とか噂に尾ひれつき過ぎだろ。4階層しかない上に1つはボスモンスターさえ居ないからな?まだまだ卵だよ?
「あぁ……俺ののんびりダンジョンライフ計画がぁ……」
ちくしょう、あんのクソ野郎め……有る事無い事噂流しやがって……。
俺としてはフィルティ大森林内にダンジョンがあることすら誰にも知られず、入った奴は誰も帰ってこない呪いの森的な感じにしたかったのに。そしたら余程のアホでない限り寄ってこないはずだ。帝国軍行方不明事件はトゥメドス王国の策略ってことにすれば誰もここにダンジョンがあることなんて気付かない。そして俺は悠々自適に生活出来た。今まで通りに。
『すっかり人気のダンジョンになっていますね。あ、森にまたもや侵入者です。』
「……だぁあああーーー!!!!お前らさっきから何なの!?人ん家に土足で入りやがって!!!」
1週間ずっとこんな感じなのだ。気が休まらないったらありゃしない。最初のうちは我慢して上手く誘導してダンジョン本体には近づかせなかったが段々めんどくさくなってきてある程度侵入したら殺している。
「いい加減にしろよ…?お前らのせいで、俺は圧倒的に睡眠が足りてない!!!1時間ごとにずらして入ってきて!お前ら仲良く一緒に来いよ!!!!」
怒り任せに地中に引きずり込んで、トリスの訓練部屋に放り込む。ギャーギャー言ってるがそんなん知らん。俺は今すこぶる機嫌が悪い。
「ちょっと前の平穏が懐かしい……。」
『その内女神教国のダンジョン狩りを専門とする部隊が来るかもしれませんね。』
「イーーヤーーダーーー!!!」
なんだよ、ダンジョン狩り専門って。お前らはあの駄女神に信仰捧げてろよ。俺のことは放っておいてくれ。
「ご主人様!」
「ん?あぁ、リリーか。どうした?」
先ほどまで偵察に出ていたサキュバスのリリーが帰ってきた。手には何か紙を持っている。
「あの、勇者という者から渡されたんですの。」
「な ん だ と?」
今現在眠くて仕方ない状況を作り上げた原因じゃないか。リリーから手紙をふんだくり乱雑に封を開ける。
Dear 愛しの太陽へ
元気か?元気だろうな!なんたって客人がたくさん、そりゃあもうたくさん来てるだろうから、毎日楽しいだろ!
やっぱ異世界ダンジョンものは探索に来る冒険者がいないと話にならないからな。頑張って宣伝しといてやったぜ!
あぁ、感謝なんかしなくていいからな。俺が好きにやったことだし。だが、もし俺にどうしても感謝したいと言うのであれば、カ◯ミンゴー(高級洋菓子店)のレアチーズケーキが食べてぇな。
じゃあな!また遊びに行くぜ!
From お前の永遠のパイセンo(`・ω´・+o)
「ぶっ殺してやる。」
『包丁振り回さないでください、マスター。』
「一旦落ち着きましょ?ね?ね?」
「何がお前のパイセンだぁ!!!最後の顔文字のドヤぁって感じイラつく!!!しかも何ちゃっかりお礼要求してんだ!!!!定番の冒険者との熱き戦い的な展開はお呼びじゃねぇんだよ!!!」
俺は、俺は、ただただ、平穏に、普通に、暮らしたいんだよォオオオ!!!!
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アサヒの虚しい雄叫びがダンジョン内に響いていた頃。
ギッツァ帝国の首都にある王城の一番高い塔の上に1人の女が立っていた。
緋色の長髪は風に靡き、真っ赤に燃える瞳は鋭くフィルティ大森林のある方角を睨みつけていた。
「……いい、匂いだ……血の、匂いが、する」
艶やかな唇が心底愉快そうに弧を描き、瞳は爛々と輝く。
「……久しぶりに、愉しめ、そう」
バサリと純白の翼が生える。
「……愉しく、なかったら、コロシテヤル」




