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第23話 新たな人生とトラウマと豪運

ブクマ、評価、ありがとうございます。

とりあえず、盗賊編は終了です。ちょっと下ネタがあります。くだらないのでスルーしてください。


分断された3人は迷宮の中をそれぞれ進んで行く。この調子だと合流は無理そうだな。


「ふんふん〜♪」

『機嫌いいですね。この人達は死の瀬戸際に居るというのに。』

「だって、俺の作った罠に嵌ってヘロヘロになってるんだよ?楽しくない訳ないじゃないか。」


ハゲ頭は1人になっても斥候頑張ってるな。中々罠にも引っかかってくんないし。つまんないじゃないか。ふむふむ、そうだなー。ちょうど、あの辺りに居るモンスターは、と。


「ヴァイ!」

「シャー!(了解した!)」


俺はハゲ頭の股間に目を向ける。

2度目のチャンスを与えてやろう、……新たな人生を歩むが良い、ハゲ頭!そのあとすぐ閉じるけども!


土壁に擬態してスルスルとヴァイが近づいていき……


ガッブッ!!!


「うっギィァアァアアアッ!!!!!!」



この日、俺は新たな人生の門出を迎えた男の産声を聞いた。



「あーはっはっはっwww」

『ダンジョンコアなのでいまいち理解出来ませんが、そんなに痛いのですか?』

「痛い。もうね、見てるだけで痛い。」


自分が指示したとはいえ、俺も思わず下半身を抑えた。俺だけでなく、レットさんの映像を伝えるスマホで様子を見ていたオーガット達を筆頭とした人型モンスターも抑えている。分かる、分かるぜ、その気持ち。悲惨な男だったなー1日に2回も金的されること中々ないよ?ある意味一生モンの経験したな、うん。


「お、おい!?どうしたんだ、ボールズ!」


ん?ああ、そうだ、仲間の叫び声を伝えようと思って、ダンジョン内に仕掛けた小型スピーカーからハゲ頭の流したんだった。恐怖を煽ろうかなって。…て、え?ボールズ?ハゲ頭の名前ボールズなの!?待って、それは、あかん、あかんってぇえーーー!!!


『何震えてんですか?気持ち悪いですよ?』

「ちょっと、笑いこらえてて……って、今気持ち悪いって言った?気持ち悪いって言った?」

『あ、2番が趣味悪い部屋に入りますよ。』

「酷くない?」


頑張って作ったのにさぁ。気味悪がってリット爺しか手伝ってくれなかったから、2人だけで作ったのに。自分があの部屋に入ったら気絶する自信があるけども。


「ヒッ、い、ああ、」


2番の掠れた悲鳴が聞こえる。

それもそうだろう、何せこの部屋は、壁や床、天井、至る所に無機質な手や目玉、顔が埋まっているのだから。マネキンをバラバラにして片っ端から埋めていったのだ。足の踏み場もないほど大量に生えた人間の体のパーツは気持ち悪いことこの上ないだろう。しかも顔は目にガラス玉を入れて限りなくリアルにしたものだ。赤いペンキを撒き散らして血飛沫が飛んでるような演出も。


「匠の技だな。」

『マスターの拘りが伺えますよね。しかも入ってきた通路は壁からいつの間にか腕が出てくる仕組みですし…怖くて引き返せませんね。』

「プラスでモス達の幻覚地獄だ。」



「ひっ、うあああ!!!寄るなぁ!来るな、ゔっ、離れろぉ!!!あああああああああ!!!」


ただのマネキンの腕や顔から逃げ惑う2番。顔や股間を濡らしながら。一体どんな幻覚を見せられているのやら。こればっかりは人の頭を覗かないと分からないからな。見たくもないけど。


「こいつはこのまま走らせておこう。その内ダウンするだろ。」

『放置プレイですか。上級者ですね。』

「セリフだけ聞くと俺が変態みたいだから勘弁してくれる?」


人聞き悪いなー。レットさんって遠慮ないを通り越してるよね。もう酷いどころじゃないよ。


『あと1人ですけど、サクサク行き過ぎてて逆に怖いですね。』

「でも、こいつアホそうだしなー。」


すぐに罠に引っかかってぽっくり逝くんじゃないか?


と、思ってたんだけど…


「こいつスゲェな。なんなの?転んで飛んでくる丸太避けたり、」

『ただ走っているだけなのにゴブ達が放った吹き矢は鎧に当たって弾くし、』

「虫にビビって飛び上がったら落とし穴を飛び越えたり、」

『恐ろしい程の強運ですね。』

「もはや悪運だよ。」


本当見てて清々しいくらいに罠に引っかかるのに何れも意図せず避ける。虫にビビる時、キャア!と甲高い叫び声に手を握り口元に当てて飛び上がっていた。なんだお前、ボールズのお仲間か?いや、ボールズは生っ粋のカマでは無いけどさ。これから成るんだけどさ。


「もうダンジョン内の罠全てを把握してんじゃねぇの?これ。」

『この人、スキルに豪運っていうの持ってますね。』

「原因それか。」


どうやったら身につけられるんだろうか、そんなスキル…。

運がいいって言うだけでダンジョンクリアできちゃうんじゃ無い?というかそんな便利スキルあるならさ、村で盗みを働くの俺たちが居ない時に出来なかったのか?


『いつでも働くわけじゃ無いみたいですね。ツいてない分だけ運がいいというシステムです。』

「つまり、俺たちに捕まったことが不運だったから、今物凄く運がいいのか。」


スキル自体が運任せな感じだな。タイミングが悪いのか、いいのか。でもこんなに避けてるならそろそろスキルの効果が消えるのでは?運を使い果たすみたいにさ。


「どうっすかなー。」

『もう少し様子見をしたら如何でしょう。豪運のスキルがキレるまでは。』

「それもそうだね。」


無駄にモンスター送り込んでミラクルに殺られたら意味が無い。もしもの為に近くの通路にモンスターを配備しておこう。そこら中に抜け道があるからな。元はモグ達の巣穴であった地中の道を人一人が通り抜けられるように広げたのだ。地下坑道って秘密基地っぽくってワクワクするよな。


「お、今矢が当たったな。」

『ですが、ギリギリで急所避けますね。』

「もういいや、ミラクル見るの飽きてきた。ミラクルの数も減ってきたし、オーガット殺っちまえーー。」

「分かりました。」


鬼人出しちまえば、さすがに行けんだろ。

殺れー。行っちまえー。


「な!人間!?」


正面の道から現れたオーガットに驚いて一歩下がるリーダー。だが、すぐに臨戦態勢を取った。こいつもリーダーやるだけあってそれなりにちゃんとしてるんだな。

オーガットは正面に剣を真っ直ぐ構え、


「ここで死ね。」


一気に間合いを詰め斬り付けようとする、が、足元の窪みに引っかかって転んだ。orzになってる。それを見下ろして笑いを堪えるリーダー。


……えええ。ご、豪運スッゲー。

あ、ああ、カッコつけただけあってオーガットが落ち込んでる。……はぁ、仕方ない、フォローしてやるか。


「リリー!レットさん、通信!」

「分かってますわ!」

『繋ぎました。』


「オーガット、応援しているわ!貴方ならやれるって信じてるわ!頑張って!」

「ほら、オーガット、お前の彼女が見てるぜ。いいとこ見せろ。」

「はい!」


すぐやる気出したな。タフだし、チョロい。


立ち上がり、打ちあう2人。剣と刀が火花を散らしてかちあう。かちあう度に切り傷が作られる。何故か一方的にオーガットの方に。おかしい、鬼人のオーガットがこんなに…俺たちのあの時遭遇したのがそんなに不運だったの?それともリーダーの隠れざる実力?


「ジンに一瞬で負けてましたし、そんな筈は……。」

『もう少し様子見をしておいた方が良かったのでは?』

「ミスった…すまん、オーガット。」


でもどうする?運なんて不確定要素の多いものに対策も何もーー…


「あっ!」


決着は突然訪れた。

首を狙ったオーガットの一撃は阻まれることなく真っ直ぐ向かって行く。しかし、それが当たることはなかった。壁に設置してあった罠が誤作動し小さな岩の玉が発射されリーダーの腰にぶち当たった。ゴキリ、と鈍い音がし背骨が折れて…華麗なイナバウアーを決めた。荒川○香ばりの。刀は空振り、リーダーは後方に倒れた。腰をぶつけた一撃が効いたのか気絶した。


……

………う、ううん?ぷ、プラマイゼロ?


「なんかスッキリしない終わりだなー。」

『オーガットも呆気ない終わりに呆然としてますよ。』

「わ、私オーガットのところに行ってきますわ!」


うん、慰めてやってくれ。空ぶった刀が虚しく空中で止まってるから。背中から哀愁が漂ってるわ。


『どうします?他3人も一応生きてますよ。厄病神とやらは危険な状態ですけど。』

「ああ、落とし穴に落ちた奴か。」


最後尾歩いてて殴られて罠に引っかかったアンラッキー君。ぶるぶる痙攣して泡を吹き白目を向いていた。しかも、床と股間がビチョビチョ…あー色々垂れ流したっぽいな。

ハゲ頭は股間を抑えてダウンしてるな。新たな人生を歩んで欲しいが…DPの方が大事だね。

2番の方は〜恐怖で失神したのかな?…あれ?なんで動かないはずの手が体を掴んでるんだ?顔のマネキンは噛み付いてる、よな。……ま、マネキンバラした怨み?


「し、塩買おう!10キロ、いいや、100キロだ!」

『はぁ?何を言ってんですか?震えないで下さいよ、落ちます、落ちてしまいますから!』

「あ、ごめん。」


手が震えすぎて危うくレットさんを落としそうになった。ごめん、ごめん。だから、その(ー'`ー;)不満な顔文字消してよ。悪かったからさ。


『で、どうするんですか?』

「ゴブ、モグ、運んでくれ。」

『運ぶって、一体どこへ。』

「んー、ストレス発散場?」

『?』



˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚


数十分後、彼らは目を覚ました。地を震わす大音声によって。


「グルゴァアアアアアアッッッ!!!!!」


ライムのにわか仕込みとは一線を画すその咆哮は、浴びた者全てを恐怖させた。


「ひっ、ウギャアアアア!!!」

「なんなんだよぉ〜、なんでこんな次から次へと化け物が出てくんだよぉ〜。」

「手がぁ、顔がぁ、ひっ、うあ、あははは」

「俺の下半身がぁ、俺の、俺のぉ。」


恐れ戦く彼らの前には第一階層がボス、トリス。


「いやー活躍の場が無いとか怒鳴ってきたからちょうど良かったわ。皆んな生きてるんだし、最後の最後まで足掻いてくれな。」

『足掻けるほどのメンタルは残ってないようですよ。』


トラウマ植え付けすぎたかな?ま、いいか。どうぞ、トリスのサンドバッグになって下さい。


「ウグルアアアア!!(軟弱者がぁ!!!立ち上がれぇ!)」

「ギャーーー!!!」

「ゴルァアアアアアア!!!(やる気出しやがれ!なんだ、その腑抜けた腰はぁ!!!)」

「腰がぁ、イッデェえええ!!!」

「ガァアアアアアアア!!!(男がめそめそ泣いてんじゃねぇ!!!立ち向かえぇええ!!!)」

「ひっ、フッフフ、あひっ!」



俺はその日ヘッドホンを装備して布団に潜り込んだ。



だから、俺は気付けなかった。深夜、布団に侵入する怪しい影に。




「すーすー…んぅ、」


お、お、


「俺の隣に美少女が居るぅぅう!!?」


横には淡い青色をしたロングヘアーが特徴的な超絶美少女が居た。


「ん、ふあ、あ、おはようございます。」


寝起きのあどけない笑みに俺の脳は最大の警報を鳴らしていた。


次回、【ラブコメの予感!?〜そして運命の恋〜】をお送り致します。(大嘘)

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