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第22話 罠に嵌る奴のこと見るのって楽しいよね

ブクマ、評価、感想ありがとうございます。

申し訳ありませんが明日の更新はお休みとさせていただきます。


【盗賊side】


「あぁ、くっそっ!なんだってこんなど田舎に冒険者がいるんだよ!」

「知らねっスよ……。」


アサヒが放置した盗賊達は薄暗い森の中を徘徊していた。誰にも見られないようアサヒがかなり奥まで連れて行ったため、なかなか森を抜けられないのだ。思い通りにならない状況が余計に盗賊のリーダーの神経を逆なでした。


「帝国の名前を落として、尚且つ指名手配されないようにするはずだったのに…」


このリーダーの男は昔帝国の騎士として活躍していたが、目に余るほどの態度が問題でクビとなった。完全に逆恨みである。今回のようなことをすでに何度も行っており、帝国への不信感を高めようとしていた。はっきり言って帝国の屈強な基盤に傷の1つも付けられていない。考える頭はあるのに自分にとって都合の悪いことには目を向けない。残念な男であった。


「リーダー、この後どうするんで?」

「あんな凄腕の冒険者がいんのに手ェ出せるかよ。とにかくあの村から離れるんだ。」

「確かに、伝説の竜種を使役できるなんてゴールド級の冒険者ですからね。」


ゴールド級、というのは冒険者の一番上の階級のことである。冒険者は下から、ウッド級→ストーン級→アイアン級→ブロンズ級→シルバー級→ゴールド級、に区分されている。ゴールド級とは伝説とまで言われている冒険者のことで、現在ゴールド級の現役冒険者は数人程しかいない。


「クソがっ…!」


当たり散らすように転がっていた石を蹴り飛ばす。それにビクつく仲間達。リーダーの男は元帝国の騎士。帝国の騎士は少なくともアイアン級以上の実力がなければなれない。ジンに一蹴されたものの実力者であることは確かだ。それゆえに仲間は何時自分達に怒りが向けられのかと怯えていた。


「あ、リーダー!洞窟がありますよ!今日はもう遅いですし、一晩ここで過ごすのはどうですかい!?」


1人の男が声を上げる。少しでも自分達から興味を逸らすために。


「ん、ああ…それもそうだな。おい、テメェが一番前で行くぞ。」

「は、ハイっす。」


呼ばれたハゲ頭の男を先頭に一行は洞窟の中を進む。見えてきたのはー…


「迷路…?」

「それに植物も生えとりますぜ?なんで洞窟の中にこんなもんがぁ…」

「は、ははは!!!」

「リーダー?」


突如大声をあげて笑い出したリーダーに目を白黒させる仲間達。そんな訝しむような視線などまるで関係ないとでも言うように笑い続ける。


「こりゃあ、幸運だ!まさかダンジョンがあるとはなぁ!」

「だ、ダンジョン、ですかい!?じゃあ、危ないじゃないですか!」


ダンジョンとは凶悪なモンスターが溢れ、罠が命を狙ってくる危険な場所。そのため、ダンジョンは発見され次第討伐されるようになっている。成長されるとダンジョン外にもモンスターが溢れる可能性があるからだ。


「ふっは!それは成長したダンジョンだよ!これは生まれたてのダンジョンだ!大したモンスターもいねぇ!」

「な、なんで生まれたてって分かるんですかい?」

「ここにダンジョンがあるなんて話聞いたこともねぇよ!発見されてりゃ否が応でも噂が出る!未発見、つまり誰も殺してねぇってことだ!」

「ダンジョンは死体が無いと強くありませんからね。」


ダンジョンで人が死んだ場合DPに変換されるので強くなる訳だが、DPという存在がある事を知られていないため、そういった話が出来上がっている。


「ダンジョンコアってもんはありえねぇ程の金額で売れる!うまく行きゃあ、一生遊んで暮らせるぞ!」


(…そして、その金を使って帝国に復讐を……)


仲間にやる気を出させるため本心をひた隠しにし宣う。金の話に湧く仲間達を尻目にほくそ笑む。


(お前らにはびた一文もやらねぇよ。俺が全部奪ってやる。)


リーダーのビジョンにはダンジョンコアを奪った後、仲間を皆殺しにする自分が映っていた。


そんな男達を嘲るように目を細める黒い影。彼のビジョンにも悲惨な末路が映っていた。…もちろん、ダンジョンに食い殺される彼らの姿がー……




【アサヒside】



俺のダンジョンに人間がやって来た。リーベが来たことあるけど、ちゃんとした人間の侵入者は初めてだ。


リーダーの演説を聞きながら、モンスター達に指示を出す。フッフッフッ、お前らにはびた一文もやら無いからな!


『盗賊のリーダーも同じようなこと思ってそうですね。』

「俺はあいつほどゲスく無い!」

『……』


レットさん、無言やめてよ。俺が頑張った結果なんだからさ。このダンジョンは。むしろ褒めて欲しいよね。


『動き出しましたよ。』

「おー。」


俺がボコったハゲ頭を先頭にリーダーを三番目にして進み始める。このリーダーの安全位置な。俺でもそうするけど。1人ずつ狩って行くか。こう、1人また1人消えていく……みたいなホラー感いいよね。俺がそんな風になったら嫌だけど、見る分には楽しい。


『先頭の者が斥候の役割をこなしていますね。』

「あのハゲ頭が斥候…似合わねー。」


天井や壁を用心深く見ながら進んでいく。お、罠に気づいたな。避けちゃつまんねーじゃんか。よし無理矢理起動してしまえ。


「1号!」

「グガァ(はい。)」


金剛岩人間の1号は透明化というスキルを覚えている。物音はどうしても出る訳だが、そこは訓練を重ね極小さな物音で移動が可能となった。ススス…と一行の後ろに回り込む。と、一番後ろのやつがグルンと後ろを振り返った。


「え!?気づいた!?」

『どうでしょう…?気配察知のスキルを所持している可能性も…』


ちょくちょく出てくるスキルというのは、ある特定の動きなどを鍛錬することで身につける特別な力のことを指す。因みに俺は連撃、威嚇、受身、を覚えている。つっても、ステータスみたいなのがある訳じゃ無いから、レットさんに言われて分かるんだよね。でも、技!って感じじゃ無いから嬉しさも無ければ、かっこよさも無い。どれも地味だ。派手なスキル無いのかね。


「いや、あいつ絶対目ぇ合ってんだろ。スッゲェガン見してんだけど。」

『瞳孔かっ開いてますね。』


「どうした?」

「あーなんか匂いがしたんすけど気のせいでしたわ。」

「そりゃそうだ、察知のスキル持ってる訳じゃねぇんだからな!」


野生か、こいつは。匂いかよ、ゴーレムに匂いあんのか。お前はビースティッド様の化身か?すぐに追い出さねば。疫病神だからな。


「よし、さっさと起動!1号行けぇ!」

「ウガァ(行きます。)」


1号が体重を掛け、ハゲ頭が避けた床のタイルを勢いよく踏み抜く。


ズゴゴゴゴと迫力のある音を立てて一行の歩く後ろの壁が開く。1号は既に抜け道に避難している。転送が使えれば楽なんだが、フィールドに侵入者がいると罠やモンスターを設置したりは出来ないのだ。


「は!?なんだなんだ!?お前、さては罠に引っかかりやがったな!?」

「いや、俺は何もっ…グハッ!」


リーダー短気だなー。一番後ろを歩いてた奴の顔面を殴り飛ばす。仲間割れ早いよ。あ、よろついて壁に手を…すっげ、こいつの運の悪さ凄まじいな。グッバイ、疫病神。


「え、ギャアアアア!!!」


落とし穴に真っ逆さま。あそこは確かー、イアンが作った状態異常落とし穴だったな。痺れ草とか眠り草とか…変わり種で下痢になる花が咲いてたな。でも即死するようなものは無かったような。そうだ、じわじわ殺すをコンセプトにしたんだ。

あ、早くしないと後ろの罠が起動する。


「1号!橋落とせ!」

「ウガァ(架けました。)」


天井から鉄製の橋が降ってくる。2つ同時に起動した場合の処置だ。何せこの罠はー…


「大玉が転がってきたぞ!!」

「さっさと進めぇ!!!」


大玉が連続で幾つも出てくるからだ。全て手作り。壁の後ろではセッセとモグ達が岩の大玉を送り出している。

落とし穴に架けられた橋の上を転がり騎士もどきを追い立てる。逃げ込む先は別れ道。ぴったり3つだ。

先頭のハゲ頭が真ん中の道に駆け込むと床が少し沈んでー…


「えっ!?」


壁が降りてきて閉じられた。

勢いに乗って走っていた2番目のやつは壁に衝突。うひゃー痛そー。

リーダーのやつは素早く方向転換し他の道に入る。勿論、その道も閉じられた。2番(面倒なので番号)はぶつけた額を抑えていたが迫ってくる大玉に青ざめ残った道に入って行った。


「一番高かったからなー、この重さで反応するタイプのやつ。」

『その割に壁が上がるのが速いですがね。』


あの3本の道は一歩入ると大体大人1人分の重さで反応し、壁が閉じられる仕組みだ。ただ長時間閉じられているという訳ではなく、10分もすれば勝手に開く。10分待っていれば元の道に戻れる訳だが、先程まで大玉に追いかけられていた上に、今も閉じられた壁に何度も大玉を叩きつけている。音だけでも迫力は凄まじい。いつかこの壁が壊れるんじゃないか、と思う訳だ。まぁ、ダンジョン内は特殊な魔力で覆われているので壊れたりしないが。


案の定、3人は音にビビりその場を離れて行く。さぁ、これで全員バラバラ。分断成功。まさか落とし穴に1人落ちるとは思ってなかったけど。これで各個撃破出来る。1人ずつ、やっていこうじゃないか。

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