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第16話 仲良くなるなら同じ釜の飯を食べましょう

危うく次の日になりそうでした。危ない、危ない。

ブクマ、評価ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。


リーベを先頭に森を抜けた先の草原を歩く。

今更ながら俺にしては大胆なことしてるよなー。このまま人里突入するんだもんな……くっ、持病の腰がっ!…さすがに引き返しませんけども。


「ふっふふーん♪」

「機嫌いいな。ちびり君。」

「ちびり君って何だよ!ふざけんな!」

「わりーわりー。」


タックルをかましてくるリーベを華麗に避ける。からかいがいがあるわー。ちんまい、可愛い。決してショタコンとかではないからな。子供は可愛いもんだろ。


「そういや、材料だけ集めたけど、薬に調合するのはどうすんだ?」

「村の医者の爺さんにやって貰うんだよ。余った材料は買い取ってもらうんだ。あ、ちゃんと金払うよ。」

「いいって、ガキが気遣ってんじゃねーよ。」

「でも、」

「でもも、カバもないんですー。好意は大人しく貰っとけ。」

「カバ?」


あれ、言わない?でもも、クソも無い?そうですか、言わないですか。


「あーところで村でなんか買い取ってくれる店ってあるか?」

「買い取り?うちにはそんなの無いよ。ここど田舎だよ?」

「だよな…。」


金の入手は無理か。こっちの金銭についてはリット爺に教えてもらったけど、実物は見たこと無いし。正直無一文で村に入って大丈夫か心配なんだけど。まぁ、ど田舎っぽいし入村料は取られないだろう。つーか、ここってどんだけ辺鄙な場所にあるんだよ。この調子だと侵入者は皆無ってことになるかもな。嬉しいんだけど、うちのトリスさんがなぁ。


「外に出てまでダンジョンのことを考えなくてもいいと思いますよ、アサヒ様。」


ボソリと耳打ちしてくるジン。難しい顔してたか。


「そーゆー訳には行かねーだろ。俺はお前らの人生?モンスター生預かってんだからな。毎日楽しく生きて欲しいんだよ。」

「うふふ、私達は毎日楽しく生きてますわ。ご主人様。」

「いやーでも、トリスがなぁ…。」

「トリスは問題無いですわ、オーガット達を放り込んでおけば元気ですから。ね、ジン。」

「ちょ、勘弁してくださいよ、姉御。」


残念だったな、オーガット。ナチュラルに売り出されだぞ。そして、姉御か、かっこいいな。ヤクザ集団か何かなのか鬼人兵団は。


「仲良いなー、お前ら。」

「ん?まぁ、そうだな。」

「いいな。そういうの。」


笑ってるけど、寂しそうだった。


気付いたら頭をぐりぐりと撫で回していた。

そして、弾かれた。お兄さん悲しいぜ。


…いかんな、俺。子供にはゲロ甘で大人やモンスターの侵入者には容赦なしか。矛盾してんな。こいつも侵入者なのに。


ち、考えてもしゃーねーな。いいか、それで。俺が優しくしたいと思った奴には優しくして、殺したい奴は殺して。異世界に来てまで悩むなんてアホらし。


「俺、自由に生きるわ。」

「え、アサヒ様は十分自由人だと思ってました。」

「好き勝手してると思ってましたわ。」


2人とも本音だったのが尚のこと心を抉った。…くすん。




˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚




村に着いた。辺鄙でのどかな場所だ。落ち着く。


「こんの馬鹿が!お前の脳みそは家畜の糞でも詰まってんのか、あぁん?」

「だから悪かったよ…。」

「いいや、分かってないね。お前のオツムはいくら言ったとこで理解しないんだよ。ど腐れ■■■野郎。」


そんな平和な村に不釣り合いな罵倒。リーベとその妹さんと同じストリートチルドレン仲間のシルバ。茶髪の癖っ毛でなかなか可愛い顔をしている男の子だ。言ってることは一切可愛くないんだけどね。何なのそのボキャブラリー。君だけ英才教育受けてるよね。じゃないと流れるように悪口出てこないって。思わず規制かけちゃったよ。


「うちのアホが本当にご迷惑を…。」

「いやいや、そこまで畏ることないから。それよりさっさと薬を作ってきた方がいいんじゃないか?妹、病気なんだろ?」

「は?妹が病気?リーベの?」

「違うのか?……まさか…何処に行くんだ?リーベ。」


間。


「騙してゴメンなさい。」

「本当にうちの馬鹿な兄がご迷惑をおかけ致しました。」


リーベをこってり絞り上げて聞き出した内容を要約すると、こいつの妹はバリバリ元気で、単純に金儲けのために薬になるシロヌイ草を採ってくるつもりだったらしい。そこで俺と会って咄嗟に嘘をついて一緒に探してもらおうと思ったんだと。しかも外で暮らしてるわけじゃなく、孤児達は村の大人に世話になっていて俺が想像したような悲惨な状況では全くない。同情を引く作戦だな。いいと思うぞ、俺みたいな甘ちゃんには効果抜群だ。実際協力した訳だしな。


…はぁ。


「てめー、俺の同情を返せ!」

「いっつ!」


げんこつを落としてやった。ったく、糞生意気なガキだな、おい。


「わ、悪かったよ、でも、ああして話さないと協力してくんなかったろ?だから…その…」


お前の境遇に同情して協力した部分はあるが、どちらにしろリーベを助けたと思う。むしろ金儲けだって言ってくれた方が、もっとイアンに用意してもらったかもしれない。売り上げの4分の3を寄越せと。もうちょっと減らしてもいいけど。


「あ、あの売り上げを全額渡しますからそれでどうか許していただけませんか?」

「おい、リーベ、お前には勿体無い妹ちゃんだな。うちが貰ってやろうか、糞ガキ。」

「うう、悪かったってぇ…。」


なんか一気に気が抜けた。大した役者だよ、全然分からなかった。異世界なんだしそういうこともあるだろうと思ったし、日本にいた頃だって海外にはストリートチルドレンがいたんだから納得しちまった。嘘発見器みたいなの売ってないかな。若しくは嘘を見抜ける聖なる瞳を持つモンスターとか。…モンスターに聖属性なんてあるのか?


「…今回はいいよ。お前らが金を貰え。」

「ま、マジで!?さすがアサヒ!」

「調子乗んじゃねぇ。今度からここで世話になるからな。」

「へ?」



「じゃあ、今度からあんさんらが薬草採ってきてくれんのかい?」


俺たちは村の医者のところでシロヌイ草を換金した。そこで医者の爺さんと交渉して今度からは俺たちに依頼をしてくれるように頼むことにした。


「ええ、値段もいつも買い取ってる額と同じでいいです。信用できないなら安くしても構わないですよ。」

「そりゃあ、子供に行かせるよりありがたいがぁ…本当にいいのかい?ギルドからの正式な依頼じゃないよ?」

「いいですよ、ここを拠点にのんびりやってくつもりなんで。」

「え?冒険者さん、こんなとこ拠点にすんのかい?」

「まぁ、はい。他の街にも行ったりするから何日かは留守にすることはあるでしょうが。」


何かと便利だしな。遠くまで行くわけにもいかないし、かと言って外の情報が一切入ってこないってのも不安だし。村の人からの頼みごとをこなしつつ、情報集めて、ダンジョンと村の行ったり来たりのんびりライフがベストだな。スマホを買ったのでレットさんとはいつでも連絡取れるし。本当にどうやってメールとか電話が繋がってるのやら。


「そういう訳なんで、いいですかね?」

「むしろこっちからお願いしたいよ、早速いいかい?」

「はい。」


欲しい薬草の名前を聞いて、メモしておく。そしたらやたらと驚かれた。紙は高いのでメモ帳なんてないんだとか。よくよく考えたら日本のものホイホイ買えてるから不便に感じないけど、もしこっちの生活水準だったら我慢できないかもしれないな。


「じゃあ、リーベ。今晩お前の住んでるとこに泊めろ。」

「ガキ10人ぐらいいるぞ?狭いし、飯は出ないからな。」

「なんでお前はアサヒさんにお礼をする気持ちがないんだよ!」


スパーンと小気味いい音を立ててシルバがリーベの頭を叩く。そんな漫才のようなやり取りを見て笑う妹ちゃん。微笑ましい俺たち。和むわ。


「飯ぐらい作ってやるよ。子供達全員分。」

「ええ!?いいんですか!?」

「ん?おう。」


シルバがはわわ、とか言って震えてる。そんなにびっくりすることか?


「俺は夕飯作ってるけどお前らどうする?」

「私はここの方にご挨拶を兼ねて話を聞いてきますわ。」

「俺はアサヒ様の護衛と手伝いを。」


本来なら女のリリーを護衛すべきなのだが、俺が一番弱いので仕方ない。もう少し頑張らないとな。でも俺別に運動がずば抜けて出来るってわけでもないしなぁ。




「本当にご馳走になっていいんですか?全員分なんて…。」


孤児達が集まって暮らしているという家に行くと責任者のお姉さんがいた。なかなかしっかりしたお姉さんだった。帰ってきたリーベを抱きしめ、事の顛末をシルバから聞き、俺たちに謝り倒し、今度はリーベがギブするほど抱きしめ続けた。


「大丈夫ですよ。台所を貸してもらえれば。」

「あ、はい。それはもちろん!」


家の台所はIHキッチンで料理してきた俺にはとてもじゃないが扱えそうになかった。温度調節出来る火って素晴らしいね。一応ガスコンロ持ってきておいて良かった。背負っていた麻の袋にはカレー料理一式を入れておいた。外で食べるならカレーだと思って、イアンに薬草頼むついでに買っておいた。俺はチキンカレー派なので鶏肉をゴロゴロ入れる。普段は唐辛子多めなんだが今日は子供も食べるので甘口にしておく。俺のお気に入りのカレー粉(インデアン食品)15種類のスパイスが入っていて本格ながらもリーズナブルなお値段だ。サラサラなルーは口当たりがいいし、食べやすい。ピリッとしたスパイシーな香りがたまらん。ご飯は中学の林間学校以来の飯ごう炊飯だ。おこげがまたうまいんだよなぁ。


「俺特製チキンカレー。見た目アレかもしれんが、味は保証する。」

「ほ、本当に食えんだよな?アサヒ…。」

「うるせーなぁ。お前が食えば他のやつも食べるんだからさっさと食べろ。」


当然というべきか、カレーはすぐには受け入れられなかったが、リーベが食べて美味いと言ったことでみんな恐る恐る食べ始めた。すぐに子供達も美味しいと言ってぱくついた。リーベはおかわりまでしている。具にリンゴを入れてみたが甘くて好評らしい。んー俺としてはもちっと辛いほうが好きなんだよなぁ。


「俺、こんなにお腹いっぱい美味しいの食べたの初めてだ!」

「そう思うんだったら礼の1つでも言うんだな。」

「ありがと!」


やっぱ、食べてくれる人がいると作る気するんだよなー。俺は高校生になって一人暮らしだったから、最初のうちは自分で作ってたんだけど途中から飽きてカップ麺とかコンビニ弁当ばっかになっちゃったんだよな。ぼっち飯よりみんなで食べるのが一番いい。


「つーわけだから今夜は世話になるからよろしくなー。」

「「「よろしく!!!」」」


満面の笑みで出迎えてくれる子供達。


懐に入り込むならまずは胃袋を掴めってな。


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