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第12話 人の振り見て我が振り直せ

ブクマが50超えました。ありがとうございます。今回初の戦闘シーンを書きました。本当に数行ですが。今後はできるだけ長い戦闘シーンを書けるようにしたいです。


神様を追い出す方法を思いついた。

いや、本当に何故俺すぐに思いつかなかったんだって、頭を殴りつけたくなるぐらい単純なんだけどさ。俺の勇気が必要なだけで。


先ほどの侵入者の一件を見終わって飽きたのか再び人の布団に潜り込むグローリア様。ビースティッド様は酒樽抱えたまま寝こけている。


よし…正直やりたくないのだが、他に良い方法も思いつかない。こいつらを追い出せるのなら安いもんだ。


準備に取りかかろう。


「ライム、よろしくな。」

「ん、任せて〜じゃなかった、任せろ。」

『マスターそっくりですね。』


まずは、ライム達に俺とレットさんに変身してもらい少しの間身代わりになってもらう。

自室を後にし転移で迷宮出口へ向かう。

護衛に狩りに出ていた鬼人2人を連れてレッツラ外へ。

そう、至極単純。電波が悪いなら屋外に出ろ、もしくは場所を変えろ、だ。グローリア様は俺の作ったダンジョンに結界を張ったようだが、さすがに外にまでは手が届いてないだろう。本当になんで俺はこの方法を思いつかなかったんだ。まぁ、俺がダンジョンから外に出る気が無かったってのが原因か。レットさんは俺にしか使えないからダンジョンコアと外に出ないといけない。ここが一番心配だったのだがダンジョンから出た瞬間割れるということも無かった。本人にも確認して出ても問題ないとのことだったが初の試みなので結構心臓バクバクだ。まさかダンジョンの本体を外に出すキチガイは今までいなかったので俺が初の事例。前例のないことに挑戦するって怖えー。


「頼むぜーお前ら、俺戦えないからな?」

「はい。しっかりとお守りするようオーガット殿に仰せつかっていますので。」

「御安心を。」

「お前らカッケーわ。」


それに比べて俺の腰の引けたビビリっぷりな。ダセーな、俺。だって仕方ないじゃないか。初の異世界。引きこもる気満々だったのに不服ながら外に出た訳だが、怖えんだよ。夜だから余計に森が怖いし時々叫び声とか悲鳴とか聞こえてくるし、ちょいちょい地面に血がこびりついてるし。俺は肝試しとかホラゲとか無理な人なんだよ。回れ右してダッシュして帰りたい。俺の愛しのマイルーム。


『完全に引きこもりの発想ですね。まだダンジョンから5メートルも離れてませんが。』

「レットさんは俺の心読めんの?後5メートルはデカイ、5メートルはちょっとじゃない。」

『ブツブツ呟いてましたよ。全部漏れてます。』


え、嘘。俺いつの間に独り言癖がついてたんだ。危ない奴じゃないか。

くそぅ…レットさんは何故こんなに平然としてるんだ。一番剥き出しで危険なのに…システムだから死ぬのが怖いとかないのかな。こんなに表情豊かなのに何を今更って感じだけど。堂々としすぎだよ、俺の心臓。

鬼人2人は言わずもがな迷いのない歩みで森を進んで行く。俺を挟んで警戒もしっかり行って。本当にお前らいつからこんなにカッコよくなっちゃったんだ。最初の頃はトリス相手に屁っ放り腰だったのに。それは今もか。

俺がこんなにビクビクしてるのが恥ずかしいじゃないか。


はぁ、モグ達にダンジョンを森に広げてもらうのは早計だったな。あの結界、俺のダンジョン全域に対応してて新たに広がったダンジョンにも効果があった。おかげで俺は森を抜けた草原まで行かなくてはならない。あそこはダンジョン外だからな。…あれ?てことは今もダンジョン内なのか?気分的には外だったけど。


「つまりまだレットさんがダンジョンから出ても大丈夫なのかは分からないと。」

『大丈夫ですよ、心配性ですね。』


だって、さぁ。てっきり一番の問題を解決した気でいたよ。そうか、この森まだダンジョン内だったわ。うわ、恥ずかしい。


『というか、マスターはそんなに何を心配しているのですか?』

「襲われる心配とか、レットさんが突然四散しないかの心配。」

『何度も言っていますが、ダンジョンコアは外に出ても問題ありません。それと襲われたところで死ぬことはありません。そもそも護衛に鬼人2人もいるのーー…』


レットさんの言葉を最後まで聞くことは出来なかった。


何かが駆け抜ける音がしたと思ったら、突如右横から鋭い牙を持った獣が飛び出してきたからだ。


体が固まったように動かなくなった俺の前に、月明かりを浴びて煌く刀が一閃。


鮮やかに振り下ろされたそれは獣の首を正確に捉えた。


ザシュッ!!!


鮮血が飛び散り、大口を開けた獣の首が地面に転がり落ちた。

一瞬の出来事だった。


「アサヒ様、大丈夫でしたか?あ、申し訳ありません、返り血が掛かってしまいましたね。」

「何をしているんだ、お前は。アサヒ様、これでお拭きください。」

「あ、うん、ありがとね。」


手ぬぐいを受け取る手が無様に震える。顔に飛び散った獣の血を拭き取る。俺の顔は今真っ青だろう。

怖かった。

死が差し迫ってきた。一回死んでいるとはいえ死ぬのは怖いし嫌なんだと改めて思う。

こういう時、この獣が眼の前で殺されたことを苦痛に思うはずなのに俺の心は同情も哀しみも感じなかった。命を奪うことに抵抗がない。それは特に怖いようには感じなかった。この世の摂理で当然のことなんだ。

ただただ、誰も死ななくて良かったと安堵の気持ちの方が強かった。

じゃあ、まずは俺を守ってくれたこいつらを労わないと。


「お前らのおかげで助かったよ。ありがとな。今後も期待してる。」

「あ、有難きお言葉っ!」

「精進していきます!」


なんかイケメンが自分に平身低頭って違和感あるわー。さっきの戦闘だってフツメンがやるのとイケメンがやるのじゃ差が出る。…世知辛い世の中だな…。


『言ったでしょう?大丈夫だと。』

「…レットさんはドヤ顔なんてどこで覚えてくんのさ…。」


レットさんはディスプレイに((`・∀︎・´))ドヤヤヤャャャャと表示してあった。長ぇよ。


4人で雑談しながら歩くこと30分。その間も何度か襲撃にあった訳だが、難なく倒す鬼人達。ここの森には中位種のそれなりに強いモンスターも出るらしいのだが、あそこまであっさりと倒せているということは雑魚しか出てきてないのだろう。ラッキー。


「や、やっと森抜けたー!」


だだっ広い草原。吹き抜ける風が気持ちいい。見晴らしがいいのでモンスターが寄ってきたらすぐに分かる。

レットさんも一歩出た瞬間爆発!俺死亡!みたいなストーリー終了な展開にならなかった。俺がビビりすぎて最終的に鬼人君に背中押してもらった。うぅ、君たちの命もかかってるのになんでそんな堂々としてんのさ。


「そこで死んだらそこまでって事です。それに、アサヒ様が生きてないのに俺たちが生きてる意味ないですから。一緒に死ねるなら本望です。」


だってさ。

何このイケメン。俺なんでこんなイケメンに好かれてんの?主と慕われてんの?うちのモンスターやたら忠誠心高いのは何でなの?俺をどうしたいの?


『マスターって褒められ慣れてないですよね。』

「うるへー」


俺だって褒められた事なかった訳じゃねーよ。でも、褒められるのってテストで良い点取ったとか、目に見える結果じゃん?努力して褒められて当然の結果っていうかさ。こんな何もしてないのに慕われる意味が分からんのですよ。


「そ、それより、さっさとメール送信しよう、うん!」

『誤魔化しましたね。分かりましたよ、では、天界コールセンターの方に…』


「いたぞぉーー!!!アサヒーー!!!」

「ギャーーー!!!何でここに!?」


四つん這いで森からで出てくるビースティッド様。いや、何で四つん這い?あれ?背中に乗ってんのグローリア様か。うわぁ、女王様プレイだ……。


「はっ!俺の鼻を誤魔化せる訳ねーだろーが!」


リアルで獣だな…姿形は真似られても匂いまでは無理か…。


「さぁ、観念なさい、アサヒ!」

「残念でしたね、女王様。」

「女王様…?」

「もう、メールは送信しましたー。イエイ。」

「「嘘でしょ(だろ)!?」」


はっはっはっー一歩遅かったな、ノロマどもが!


「つーか、グローリア様は来てすぐに結界張ればよかったのに。」

「私はダンジョン内でしか力を行使出来ないのっ!」


え、そうなの?新事実。もはや女神教の主神ってよりダンジョンマスターの神様だな。戒律関係ねーな、おい。


「弱点ベラベラ喋ってくれるあたり、お優しいですよね。(おバカですよね。)」

「あんた、副音声が聞こえるんだけどっ!?」


気のせいですよ、気のせい。


「クソォ!恥を忍んで駄女神を背中に乗せてやったのに…!」

「はぁ!?元はと言えば、あんたがさっさと起きて気づかないからでしょ!?」

「オメーだって間抜け顔晒して爆睡してたじゃねーか!!」

「うっさいわよ、こんの酒神!!!」

「黙れ、ニート女神ぃ!!!」


「醜い。」

『醜いですね。』


人とは追い詰められるとあんな醜態晒すんだな…この場合は神様だけど。神だろうと人間だろうと本質は変わらんな。俺はああはなりたくないな。人の振り見て我が振り直せ、だな。気をつけよ。


そして2人は何を思ったかどこかへダッシュして行った。逃げるんだろうか。だがしかしそうは問屋が卸さない。颯爽と現れた苦労神が首根っこを掴み去っていった。


……逃げるんだったら異空間とか、そういうところに行けば良いのに……あんな抜けてるのに俺は手こずらされたのか……。



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