第11話 ダンジョン開放!
ダンジョン開放です。残酷描写がちょびっと入ってます。読み辛いと思いますがお付き合い下さい。
今日からダンジョン開放だ。
「いよいよだな。」
『はい。大丈夫ですよ。余程のことがない限りこのダンジョンが突破されることはありません。』
「当たり前だ。そう易々と攻略されてたまるか。」
「んぅ〜すぅすぅ……仕事なんて、しないわ〜。」
「プハッ、あーうめ〜酒サイコー。」
「…あんたら本当に何しに来たんだ…。」
マジでもう気が抜けるわ。
結局この2人は帰らず、グローリア様は人の布団を掻っ攫い、ビースティッド様は一晩中酒を飲み続けた。しかも最悪なことに術者が寝ても結界とやらは解けることはなく救援コールを出すことはできなかった。
仕方なく放置。むしろ寝かせていた方が被害が少ないような気がしてきた。
時刻は11時58分。ちょうど0時きっかりにダンジョンが開放される。ドキドキの瞬間だ。まぁ、そんなすぐに誰かが入ってくるということもないだろうが。この後少しの間は起きているつもりだ。さすがに初日から爆睡出来るほど神経は図太くない。
ダンジョンマスターになってコアが破壊されない限り不老不死となったが、睡眠や食事が不必要になったわけではない。今後は夜中だろうとなんだろうと侵入者が来たら起きなくてはならないのでかなり苦痛である。
『0時になりました。ダンジョンを開放します。』
レットさんが文字を表示したと思ったらゴゴゴ…と地響きがして迷宮の入り口に通路が出来てその先にぽっかりと穴が開いた。入り口から数十メートルはただの洞窟のようだが中に進んでいくとダンジョンのようになる。
「じゃあ、まずは土魔蛾偵察隊出動。」
指示を出すと20匹程の小さな蛾がダンジョンから出て行く。現在、土魔蛾は100匹くらい居て、その一部を外への偵察隊として編成した。ダンジョンのモンスターの視界はレットさんが画面表示出来るのでいわば移動式小型カメラのようなものだ。俺は一歩もダンジョンを出ずに外の様子を把握できるというわけだ。チキンということなかれ、俺は慎重なんだ。
画面に映ったのは広大な森だった。モンスターなどが徘徊し夜なのも相まって薄気味悪い雰囲気を醸し出している。俺のダンジョンは小高い丘の側面に大穴を開けていた。森を抜けると草原が広がりその先に小さな集落が点々とあった。木で出来たお粗末な柵があり見張りらしき男達はぐっすりと寝こけている。
「なんか田舎って感じだな。」
『ダンジョンの場所ですが、フィルティ大森林にありますね。それなりに強いモンスターもいますので寝床を求めてダンジョンに入ってくるかもしれません。』
俺のダンジョンはフィルティ大森林にあるらしい。レットさんでもダンジョンがどこにあるのか事前に把握することはできない。開放されないと現在位置は分からないんだとか。
「でも、強国とかが近くになくて良かったよ。軍隊とか強い冒険者とかに攻められたら堪らないし。」
『そうですね。女神教国の近くだった場合殲滅は間違いなかったでしょう。』
「本当に神敵認定なんてやめて欲しいね。」
立地的には悪くないな。
すぐ目の前に街があるわけでもないし。森でほどほどにモンスターがやって来そうだし。
「よし、次は…モグ拡張隊、出動。」
「キュイ!(任せろ!)」
モグ達には迷宮を掘って行ってそのまま前方の森の方に巣を広げてもらう。実は迷宮の下はモグ達の巣が張り巡らされており、その間に落とし穴と階段が存在する。そしてこの巣はダンジョンの魔力を帯びていることからダンジョンの一部ということになる。しかも、巣の上の地面もダンジョンとして認識される。森方面に広げていけば森自体もダンジョン。ダンジョンが広がれば森に踏み入れただけで侵入者扱いとなる。わざわざダンジョン内で待っていなくとも、外に居るモンスターを倒してDPに変えられる。
最近モグ達の穴掘り技術が上がってきたのか速い速い。あっという間にダンジョン前方の森を領域内にできた。
『フィルティ大森林をダンジョン領域としました。』
「おー。お疲れさん。幼虫用意したから取りおいで〜。」
「キュイ!(ご飯!)」
いつの間にか帰ってきたのか襖を開けてドタバタと入ってくるモグ拡張隊。あれ?なんかデカくなってね?気のせいか?
「次行こー。オーガットを含めた鬼人5人、ゴブリンアサシン集団、小隊2つで外のモンスター狩ってこい。」
「了解しました。」
「ギィ!(任せてください!)」
迷宮から続々と和装した鬼人と忍者姿のゴブリンが出て行く。一時的にダンジョンの戦力は減るが、待っていてもDPは入ってこない。外に行って狩ってきてもらわないと。それに、冒険者とかを相手する前の予行練習にもなるしね。自信をつけてダンジョンの防衛に励んでほしいし。
げ、オーガットの奴リリーに送り出されてデレデレしてやがる。お前だけ何かしらの不幸に見舞われろ。
「グゴアアア!!!(俺も行きたいぞ!!!)」
「ダンジョンを空けるボスモンスターが居るか。我慢しろ。」
トリスがボス部屋で暴れまわってる。ダンジョン内は特殊な魔力で覆われているためトリスがいくら暴れたところで壊れないが、壁とか床が抉れるから勘弁してほしい。
全く…トリスの戦闘狂っぷりは有難いと言えば有難いが落ち着きがなくて困るな。同じボスモンスターのペントなんかダンジョンが開いたってのに微動だにしてな…あ、これ、寝てるわ。お前正気か?もう1人のボスモンスターは…置手紙…?「実家に帰ります。」いたわ、ダンジョン空けるボスモンスター。
うちのボスモンスター、マジでキャラ濃いな。なんか呪いかかってんの?
「さてと…これでどれぐらい稼げるかだな。」
『ダンジョンに侵入者です。迷宮内です。』
「え?マジで?早くね?」
俺まだ心の準備出来てないんだけど…。
人間だったら…うぅ…俺殺せんのかな…ゾンビ映画とかグロいの駄目な人なんだけど…。
レットさんが映した映像には見慣れたゴブリンが6体。それぞれ棍棒を持って入ってきた。
…なんだろ、ゴブリンアサシン集団のメンツ見てもキモイとか思わないんだけど、こいつらの顔はすっごく醜悪に見える。どころか怒りが湧いてくる。こう…腹の底からムカムカして来るっていうか…何勝手に人ん家に入って来とんじゃー!みたいな。何が言いたいのかっていうと、今すぐぶち殺したい。そうだ、俺こいつらのこと殺したいんだ。
…ふむ…ダンジョンマスターは自分の領域が侵されると殺意が湧くように設定されてるのか。神様に対して言いようのない苛立ちが込み上げてくるのもそういう…いや、アレは純粋にムカついてるわ。
「よし、殺そう。」
『セリフだけ聞くと殺人鬼みたいですよ。』
京都へ行こうと同じぐらいのテンションだわ。ダンジョンマスターのオプションには感謝だな。これでこの後くる侵入者に対して変な同情しなくて済む。
【sideゴブリン】
今まで何もなかった場所に穴が開いていた。ぽっかりと。昨日は無かった筈のその穴は奥が見えない洞穴のようだった。
本来なら知能が低いと言われているゴブリンでさえ、この怪しげな洞窟に入ることは無かっただろう。だが、彼らは入った。何故なら彼らは住処を他のモンスターに追われ逃げてきたから。フィルティ大森林には中位種のオーガや狼族などが生息しており、最下位種に位置するゴブリンが生きていくには辛いものがあった。弱者である彼らは隠れ家には手頃なこの洞窟の奥を進んで行った。その先に自身の死が待っているということを知らずに………。
「ギィ!(迷路だぞ!)」
進んで行った先には土壁で出来た迷路があった。ただの土壁であるはずのソレは何故か鋼鉄のように硬い。そして森に生えているものとは全く違う種々多様な草花が生い茂っていた。
突然できた洞穴。迷路。何か不思議な力が働いているであろう壁。
これらから導き出される結果はここがダンジョンであるということ。
ゴブリン達は恐れた。
ダンジョンはモンスターの巣窟。自分達はなんて恐ろしい場所に踏み入れてしまったのだろうと。
だが、戻る道も無かった。戻っても結局は外のモンスターに殺されると考えたから。それだったら出来立てのダンジョンの方が安全なのでは?と、進み始めた。
彼らがもしここで引き返せば、アサヒの配下達に荒らされ比較的安全となった森で生活できていたかもしれない。
草花と土壁、知識のない者からしたら同じ光景が続くだけ。ゴブリン達は延々と続く同じ景色に辟易していた。モンスターが出てくる気配もない。ここは本当にダンジョンなのかと首を傾げていた。何もない、何も起こらない。
それはただの勘違いだった。何もない、というのは。
実際には彼らの心臓は黒い忍者服に身を包んだゴブリン達に貫かれていた。だが、彼らは気がつかない。
通常の【土魔蛾】の鱗粉には幻覚を見せる効果があるだけで感覚への干渉までは出来ない。しかし拐かしの迷宮とレットの補正によって五感が麻痺しゴブリン達は何もないと錯覚していた。
最後まで自分の死を理解できずに息を引き取った。
【sideアサヒ】
ひょえーー。
殺すって言ったの俺だけどなかなかエグい死に方って言うか…まさか胸刺されてんのに吐血しながら仲間と喋るとは思わなかった。自分が死にかけなのを気づかないって…。予想以上だ、鱗粉。ヤクよりヤバいんじゃないか。
「初戦にしては上出来ね。」
「いつの間に起きてたんですか。」
「侵入者って言うからこの私がサポートしてあげようと思って。」
「出番無かったですね。」
「あんたはいちいち一言多いのよ。」
そーゆーのいいんでさっさと帰ってくれませんかね。じゃないとリット爺が実家に帰ったきりになっちゃうんで。…実家って前世のなんかな?骸骨になった親父が帰ってきたなんて息子さん可哀想だな。
どうっすかなー。
偵察隊の目を通して森を見る。
あれ?もしかして……これなら追い出せるかも。
予想以上に長くなってしまったのでぶった切ります。まぁ、作者の脳ではありきたりな方法しか思いつきません。すみません。これから精進して行きたいと思います。