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第10話 ダブルでやって来た


「いよいよ明日ダンジョンが解放される!今日はそのための英気を養ってくれ!カンパーイ!!!」


「おい、アサヒ!酒はまだか!」


「あんた、この私を誘わないなんてどういう了見かしら?」


「なんであんたらが普通にいるんだよ!!!」


「酒の匂いがしたから。」


「仕事サボりたかったから。」


「何当たり前の事ように宣言してんだ、馬鹿か!!!」


もうヤダ、なんでこの人たちナチュラルに混じってんの。1人だけでもお腹いっぱいなのに2人とかげろりんちょするって。


今日は異世界に来て15日目。つまり明日ダンジョン開放の日なのだ。

そしたらなかなかこのような宴会は開けなくなる。だから前日にどんちゃん騒いで明日に備えようと思ったのだ。……ついでにオーガットとリリーの恋愛成就記念祝賀会も兼ねて。


そして冒頭につながる訳だ。

俺だってある程度の事は予想してた。多分来るだろうなとは。二度ある事は三度あるって言うだろ?それなら一度ある事は二度あるんだろうなって。(謎理論)

だから、本物のレットさんを奪取されないように大量に囮用のタブレットを購入して、メールを予め用意してもらい、来た瞬間送信しようと思ったのだ。

来た!送信!……神様はどうやら馬鹿ではなかったらしい。


「ふふふ、甘いのよ、アサヒ!私は女神よ、ここに外の世界との交信を阻む結界を張るのなんて容易い事なのよ!!!」

「普段ダラダラしてて女神とは程遠い位置にいる癖に神様のチート能力無駄遣いしないで下さい!!!」


なんたる屈辱…っ!

駄女神に負けるなんて!!!


「あんた今失礼な事考えてたでしょ。」

「アサヒ〜酒ぇ〜。」

「いえ、そんな事は全く。ただちょっと貴方如きの対策も取れない自分の不甲斐なさを嘆いていたところです。」

「なぁーさーけー。」

「はっ!言うじゃ無い。当たり前でしょ、あんたみたいな平々凡々な人間が神である私に勝てるはずが無いでしょ。」

「さーけーさーけーさーブフッ!」

「「うるさい、黙れ、酒神!!!」」


あぁ、最悪だ。モンスター達の士気が下がる。特に被害者のリット爺が酷い。後でイアンをけしかけないと。


「グルアアア!!(らしく無いな、マスター。こんな奴ら無視しておけば良いだろう。俺たちの宴なんだからな!)」

「ギィギィギィ!!(そうですよ、マスター!マスターならその内こいつらを追い出す良い方法が思いつきますって!)」

「楽しまないと損だと思いますぞ、主。」


「トリス、ゴブ、ギンっ…!そうだな!こいつらの為に俺たちが楽しめないなんておかしいな!絶好のカモが来たと思えば良いんだ!」

「あんたそれ、本人の前で言うセリフじゃ無いわよ?」


プラスに考えろ。賞金でもなんでもこいつらは(DP)持ちで格好の獲物、つまりはDPそのものなんだ。前回だってプラマイプラスだったろう、ストレスと迷惑料を除けば。


「どうぞ、楽しんでいってください、グローリア様、ビースティッド様。参加費1人1万DPです。」

「あんたの満面の笑み気持ち悪いわね。」


失礼な。サービススマイルだぞ。あんたら神様より激レアなんだからな。


「嫌よ、参加費払うなんて!私があんたをダンジョンマスターにしてあげたのよ!つまりここにある物は全て私の物なのよ!」


ジャ○アンか。


「グローリア様、よぉ〜くお考え下さい。グローリア様が払ってくれた参加費は結果的にはグローリア様の物になるのです。」

「はぁ?」

「出される料理、広くなる別荘、俺にDPが入って来ればグローリア様の安寧の地はより整備され美しくなるのです。これは言わば先行投資です。」

「本当に、私の為になるのよね?」

「はい!」


大丈夫です。ちゃんと貴方のためになります。

別荘ダンジョンの予想図が俺とグローリア様との間で差異が生まれようと、別荘は広くなります。

実は1万DPもあれば今回の会費は全て賄えるんです。いつもよりグレードの上げたものを予算内で出せます。そしたらグローリア様はいつもより美味しいものが食べれるんです。

ほら、ちゃんとタメになってるでしょう?


「俺はさっさと酒が飲みてぇんだよ。払うからさっさと出せ。」

「ありがとうございます!さすがは獣の神様!太っ腹!」

「あんた、さっきまでボロクソ言ってたわよね?ふん、仕方ないわね。その男に払えて私に払えないわけ無いもの。」


まずは2万DPゲット!グフフフフ。


『マスター、顔がアウトです。』

「顔がアウトって結構傷つくんだけど。最近本当に表情(文面)豊かになってきたよね。」

『そうですか?普通ですよ、普通。』


「何よ、あんた。ダンジョンコアなんかと会話してんの?」

「いくらグローリア(ダンジョンポイント)様でもウチの優秀なコアの悪口言うんなら許しませんよ。」

「あんたが私のことをDPとしてしか認識してないことがわかったわ。というかコアに優秀も劣等もあるわけ無いでしょ。」

「少なくとも何処ぞの怠け女神様よりは優秀ですね、レットさんは。」

「はぁ?あんたコアに名前つけて……ちょっと待ちなさい、あんたのコア見せなさい!」


え?何だよ。なんでそんな鬼気迫る感じで近づいてくるんだ。怖えよ。


「ダメに決まってんでしょーが。大事なレットさんを他所様においそれと渡すわけにはっ…あ!」


グローリア様が手をかざしたと思ったら俺の体は金縛りにあったみたいに動かなくなった。ちくしょう、なんだってこんなのが神様なんだ。あーーレットさんがっ…!悪漢の手にっ…!


「誰が悪漢よ、失礼ね。」

「おい、グローリア〜返してやれよ、それがねぇと酒が頼めねーんだとよ。」

「あんた、このコア見て何も感じなかったわけ?これだから駄神はっ!」


いや、あんたが言うなよ。

なんだ、レットさんにはとんでもない秘密が隠されてるのか?あれか、番組で引っ張って引っ張って最終的にまた来週〜みたいな大いなる秘密が隠されているのかっ…!?スンマセン、ふざけた。


「はー長年女神やってダンジョンマスター生み出してきたけどこれは初めての例ね。」

「今とっても聞き捨てならない言葉が聞こえましたけど、とりあえず何が初めてなんですか?」

「コアに自我が芽生えたことよ。」

「レットさんは個性的ですけど?それが何か?」

「えー一から説明するの面倒だわ……。」


全部めんどくさがってんな、この女神は。

ぶつくさ言いつつ説明してくれた。


こちらの世界ではダンジョンコアというのは一種のシステムの様なもので、必要事項以外には答えないらしい。つまり自分から話しかけてきたり、ダンジョン以外の項目に関しての会話は受け付けない。

よくあるネット小説ってダンジョンコアは相棒っ…!みたいなイメージあったけどそうでも無いんだな。


「でも、レットさんは俺がダンジョンのこと以外で話しかけても返答してくれますよ?」


うん。この間のオーガット達へのプレゼント選びの時も普通に返答してくれたし。思い出してきたらイライラして来た。オーガットめ…裏切り者ぉ…。


「それよ。あんたがダンジョンコアに名前を付けたから、自我が芽生えたのね。多分だけど。それだけじゃなくて色んな話を振ったりして感情を覚えたのね。」


へー名付けってそんな効果あったんだな。呼びづらいからテキトーに付けただけなんだけど。

待てよ、よくよく考えたら名前って一生モンだよな。確かにおいそれとつけていいモンじゃ無い気がする。俺も俗に言うキラキラネームなるものを付けられたら恥ずかしくて名乗れない。是留舵ぜるだとか弟吾琉であるとか。親戚の子供にいた時は由来を聞いてみたかったが、怖くて聞けなかった。


「別にそれだけでしょ?いいじゃ無いですか。俺は会話相手がいて万々歳。」

「あんたね〜。それだけじゃないわ。コアの性能が上がってダンジョンの性能が付随するように上がってるの!」

「ダンジョンの性能が上がる?それってつまりモンスターが強くなったり内装の効果が上がったり、ってことですか?」

「そうなるわね。おかしいとは思ってたけどあんた普通にモンスターと会話してるじゃない?あれってモンスターの知能が上がってるってことなのよ。」


そういえば、今更だけど鳴き声でも何となく言ってること分かるんだよな。

普通に通じるし。あれってレットさんの補正が掛かってたのか。


…つまり、


「レットさんが凄いってことか。」

「そうだけど、そこじゃ無いような…」


凄いぞ、レットさん。さすがは俺のダンジョンのコアだぜ。

覗き込んだ画面には(ノ∀\*)と表示してあった。照れてんのか。


「こんな事ってあるのね…不味いわ…こんな補正の掛かったダンジョンが開放されたら世界のパワーバランスが崩れるんじゃ…。…バレたら私が原因ってことで…仕事が……は、そうよ、これなら…」


グローリア様がブツブツ言ってるうちにレットさんを回収。なんかこの人(?)怖いんだけど。それと嫌な予感がひしひしとする。

観察していると急に顔を上げて目をこれでもかと言うほどに見開いた。…美人なのになー、もったねーな、本当に。


「決めたわ!」

「一応聞きますけど何を?」

「私、ここに残るわ!!!」

「ダウトォオオオ!!!」


何言ってんだ、この人は!残るってダンジョンに残るってことだろ!?こんな爆弾抱えてダンジョン運営なんてしたく無いっつーの!!!


「私はあんたという危険人物を監視するの!」

「危険人物とは失礼ですね!ただダンジョンコアに名前付けただけで危険人物認定はひどいですよ!ていうか、賞金首に言われたく無いですね!」

「知らないわよ、いつの間にか賞金掛かっちゃったんだから!とにかく、私はあんたを監視するの!立派な仕事よ、間接的にでも私が生み出してしまった例外を、私が監視するの!」

「サボりの言い訳にしたいだけでしょうが!」

「そうよ!」

「言い切ってんじゃ無いですよ!!」


なんてことだ、俺はなんて都合のいい言い訳を与えてしまったんだ。

思わずorzポーズになってしまう。

クソ、何か無いのか、こいつらを追い出す手段はっ…!ああ、もう本当に結界邪魔だなおい!


「と言うわけだからよろしく♡」


ちょっとどっかの海にでも飛び込んでくれませんかね?そのまま流されてくれるだけでいいんで。


「んじゃあ、俺も世話になるわー今度こそよろしくなー。」


…酒の湖でも作ろっかなー。溺死でも……してくん無いよね…。


明日、ダンジョン、開放。


……

………俺初日から死ぬなんてこと無いよね?主にこの人たちからのストレスで。



リット爺「…のう、小童や。」

アサヒ「なんですか?」

リット爺「わっしには女神様がダンジョンマスターを今まで生み出し続けていると言ったように聞こえたんやけど。」

アサヒ「…そうっすね。俺もあの人にダンジョンマスターにして貰いましたし。」

リット爺「……」ガシャン!

アサヒ「そんなショック受けんでくださいよ!イアンーー!!!」


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