死の目覚め
今日もあの夢を見た。
朝の光の中、ゆっくりと、先程まで脳裏にあったものを思い出す。
赤いパーカーの男。白い帽子。その影で顔は見えない。肩には緑色のリュックがかかっている。
ここは駅前交差点、不思議と他に人はいない。
私は歩いて、その男性を突き飛ばす。
倒れる男性。起き上がらない。白い帽子に赤い染みが広がっていく。
殺した。私が彼を殺した。
そこで記憶は終わる。
そして朝だ。
あれは夢だ。ただの夢。
だが、それで片付けられないのは、この夢がもう三日連続だからだ。
枕元にある木彫りの熊型の置き時計を見る。
七時二分前。
その横の金閣寺置き時計とスカイツリー置き時計は七時ジャスト。いつのまにか少しズレが有る。
なぜうちの職場の人間は皆、こんな訳のわからない置き時計を土産に買ってくるのだろうか。
気持ちを切り替え、着替えに入る。出勤の時間にはまだ余裕がある。
悪夢を見る割に睡眠時間が変わらないのは自分の美点だ。
しかし、あまりにも悪夢が続きすぎている。
もし今晩も見てしまうようだったら、さすがに誰かに相談しよう。
だが、大事にはしたくない。誰かいい相談相手はいないか……。
そうだ、以前喫茶店で知り合った奥さんが、探偵の知り合いがいると言っていた。
もしまだ悪夢が続くようなら、一度相談してみよう……。