幾夜の物語3
『彼とは戦争によって離れ離れになってしまったのです。彼は船に乗って戦場に行き、一度は戻ってきたのですが、負け戦のため村を追われてしまったんです。』
「ひどいです!」
「なんなのよ、せっかく帰ってきたのに!」
『もちろん私は反対しました。だというのにみんなで追い出してしまって・・・私は彼といると約束したのに。」
「悲しい話ね。でも前に行かなきゃ始まんないわ。」
「そういえば、お前名前は?」
『ヨミと言います。』
「よーし!頑張っていこー!」
その時視界に入ったものを私は黙っておくことにした。一応写真は撮った。
「そもそも宛ないんじゃ仕方ないんだけど?」
「宛なら一つあるわ。そっちに行きましょう。」
道中、面倒な盗賊に出くわした。
「オラオラ通りたきゃ金おいてけやぁ!」
「ずいぶん平凡な盗賊ね。」
「そうねぇ。」
「典型的ね。」
「う、うるせぇうるせぇ!」
「「「子供かよ!」」」
突っ込めば、少女や青年と被る。
「くそ、こうなったら殺ってやる!」
「ちょっ、刃が反対よ!?」
「いってぇ!」
「そりゃそうでしょうね!」
魔術師が本を開く。
「なら魔法で・・・」
「はいお決まりー。本反対だって!」
「あっ!!」
拳闘士が構える。
「ならば俺が!」
「うん。グローブ裏だから!」
ぜー、ぜーと突っ込みまくって疲れた私をポンポンと青年が叩き、「お疲れ」と言ってくる。
礼を言ってから、
「まぁとりあえず君らは盗賊しにきたのね?」
「おう!」
「ねぇ。」
くる、とヨミを振り返る。
「私、どう見える?」
『え、え!?えっと、か弱い女の子って感じです。』
「はい、ありがとう。それじゃあちょっと・・・」
よいっせ、とクローを両手にはめると、だらん、と下げる。これが私の構えである。
「返り討ちに会う覚悟はできてんでしょ?じゃ、しばらくぶりに駆けますかね!」
一瞬彼女の影がブレる。そして、先ほどと変わらずクローをつけた両手を下げ、立っていた。
次の瞬間。
けたたましい音を立てて周りのすべてが三つほどに分断され崩れ落ちる。
木は折れるわ岩は崩れるわで盗賊がわたわたしてるうちに行くことにした私は、みんなに声をかける。
「ほら、早く行きましょ。」
「お・・・おう。」
「強かったのねぇ。」
『か弱いだなんてすみません・・・』
という若干引き気味な声が聞こえたように思えたがまぁ気のせいだ。・・・と信じたい。
「わー!きれー!」
宝石箱を倒して宝石がこぼれ出したような明かりを見て少年が言う。
「さ、もうすぐよ。」