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龍の子
そこにいるのは、俺の知る突っ込み気質の少女ではなくて。
相変わらず襲ってくる痛みも遠いように思えた。
しかし「棺桶に片足半分突っ込んでる癖に」は良かった。
はは、と思わず笑ってしまったくらいだった。
そして、今目の前にいる少女に龍は怯えていた。
足元から立ち上る黒い闇に白い髪がはためいて。
赤い目はさらに血の色に近くなり、瞳孔も細くなる。
頬には、鱗。
龍に近い、とでも言うべきなのだろうか。
そして、クラウリアは、龍に言った。
「お前の主人を殺しなさい」
その言葉に龍は素直に従った。
解放されて地面に落ちたが、一応着地ができた。
クラウリアの方を見ると、龍は地面に頭をつけ、服従を表していた。
俺を見ると、クラウリアが龍を一撫でし、駆け寄ってくる。
「無事みたいでよかったわ。」
「おう、お前のおかげでな。あんがとさん。」
別に、と言って他の仲間と無事を喜ぶ彼女。
「なにがなんでこうなったのか、説明してよねー。おじさんたちわかんないよー。」
レイガの声にクラウリアが、
「まぁ色々省くけどね、話すわよ。一応ね。」
「結局省くのかよ。」
思わず突っ込んだ俺は間違いだろうか。




