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従者の記憶

私が生まれたのは、名もない辺境の小さな小さな村だった。

夜になると目が赤くなる体質を気味悪がる者はおらず、近所の子供達とたくさん遊んでいた。

好きな人もできた。

幸せで、結婚もして、子供もできた。

目が赤くなることはなかったようで、安心した。

そんなある日だった。

村に研究者を名乗る男たちが私の子供を含め子供達を人質に実験材料を要求してきた。

材料は人体そのもの。

みなの制止も聞かず、私が行くことになった。


薬を投与されたり、麻酔をかけられて手術されたり。

時には副作用でのたうちまわることもあった。

そして私は時を止める能力を手に入れた。

カチカチと過ぎ行く時を刻む時計は、夫からのプレゼントだった。

その時計もいつしか時を刻むことをやめた。

そして、研究者たちは気づいたのだ。

私の身の回りにある生体の時間まで止めてしまうことに。

研究者たちは私を殺そうとし、私も死ねるものなら、と抵抗しなかった。

全身を銃弾が貫き、少し遅れて焼けるような痛みに包まれる。

それでも私は、「ああ、やっと・・・」と朦朧とした意識の中で考え、冷たい床に倒れふした。

その時だった。

カチ。

(え・・・?)

空耳かと思った。

しかし、

カチ、カチ、カチ・・・

時計が秒針を刻む音・・・ありえない、あの時計は止まっている。

その音とともに体のキズが治る。

それで私は気づいた。

もう死ぬことすらできない化物になってしまったのだと・・・。

それと同時に気づいた時を止める能力を使い、そこを出た。


それからの私は、ただ街を放浪するだけだった。フラフラと、旅とも言えぬただ歩き、ナイフを投げ、なにかの時を奪う行為をただひたすらに続けた。

そんな時だった、彼女に出会ったのは。

貧困に陥った村。彼女にとっては敵国である場所に位置する村。ドレスに身を包み、さらりとした白髪をなびかせる少女に、村人はみんな怯えていた。貴族の娘が何を、というふうに。

歳は18程に見えた。

厳しかった役人ですらこの女には敵国という立場でありながらヘコヘコしている。

予想外に優しかった彼女は、食料をくれたり、衣服をくれたり信頼されていた。

私は素直にそれを受け取ることができず、まるで反抗期の子供のようなこともしてしまったが、それでも彼女は私のことを見捨てたこともなかった。

そんな折、やけに偉そうな娘が兵士を伴いやってきた。言われるままにもてなす村人を踏みつけ、愚弄した。この村に腰を落ち着けていた私は、その時久しぶりにナイフを抜いた。

しかし、集中も体力も無さ過ぎた。すぐに能力は切れてしまい、捕まり首にナイフを当てられた。

死ぬこともないのだから怖くはなかったが、あんな奴にやられるなんて屈辱的だった。

(頼みの綱であるあの親切な彼女は国に帰ってしまっていた。)

嫌な声を響かせながら私を殺そうとした女の手が止まった。

「Hello.How are you?」

聴き慣れた声が響き、村人たちが歓声を上げる。

「あら失礼。古代語は理解できなかったかしら?」

「へ、兵士!役立たずども、早く来なさい!」

金切り声で叫ぶ女を彼女は見下ろし、笑顔をやめ、囁いた。

「逃げたよ。レグニードに。ちゃんと文書を渡してあげたから亡命できたはずよ。わがままな奴のところにはいられないってさ。」

そう言って、首をはねた。


それから少し立ち、私は自分のことを彼女に明かした。

すると彼女は、聞くだけでも悲惨なことを教えてくれたのだ。彼女の主も知らない彼女の過去を。

彼女は私を連れ、私の故郷を訪れた。

両親も夫も死んでしまっていて、だけれど子供は生きて家庭を作っていた。

ここまでしてくれた例とともに、話したとおりあなたの時間まで止めてしまうと別れようとすれば、

「あなたの子供だっていつかは老いる。一人になった時、あなたはどうするの」

そして彼女は私と永遠を生きることを約束してくれたのだ。



英語はこちらの世界では古代語とされています。普通の英語のように簡単なものではなく、ドラゴンなどが使う古い言葉です。

間違えていたらすみません。

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