堕ちる→末路2
今私は隣の国にいる。
こんな国名前を呼ぶ必要もないからだ。
現在の私は周りから見ても冷たい空気を放つ少女だろう。
これが素である。
いつもは相手が話しやすいようにこにこしたりツッコミ入れたり表情豊かだが、仕事の際や敵に向けてはこの素をそのまま出す。
前者のほうが多いのでみんなはこの素をモード2と呼ぶ。仕事モードと呼ぶ人もいる。
これまでにナンパ男にいろいろ誘われたりしたが正に氷の棘を性格に丸出しで威嚇。
ほら、また来た。
「ねぇねぇ、君綺麗だねぇ。どっか一緒に・・・」
「却下。」
「カフェでもさ」
「却下。」
ギロリと睨むと男は怯えて去って行った。
私が認めるのはこちらの意思を汲んでくれる強いやつだけだ。
あんなやつ願い下げである。
それにそもそも私はお留守番なのだ。
正確にはお留守番ってことになっている。
なんで、というと、後ろからぐっさりやれとのことだった。
自分でも卑怯だなぁと思った。
(・・・?)
変な音が聞こえた。
そこを覗いて、
(っ!!)
死ね死ね死ね!と叫ぶ心を突き刺して、それを見る。
私と同じくらいの少女が男に縛られ、そのロープの先を持たれていた。
その目の前で何度も刺されているのは・・・
「やぁぁぁぁ!やめてよぉ!おかーさん!おとーさぁぁぁぁん!」
理性が吹っ飛びかける。
陛下の任務を遂行せねば・・・
(なにを言ってるの?)
心の中で嫌な声がする。
(夜まで仕事はないのよ?なら今ならいいわよ。)
(いい・・・?そうかもしれない)
(いいの?あの子は陛下に拾われる前のあなたみたいよ。)
ゆるぅっと視界が揺れる。
そのまま私は視界を赤に染め上げた。
消す者がいなくなったところで理性を取り戻し、少女を見る。
「うぅ・・・えぐっ・・・」
親の死体に寄り添い、しゃくり上げる少女の目の前に金貨の入った袋を置く。
「間に合わなかった。」
モード2の時は口数もいつもより少なくなる。
これも素だ。
この金貨の袋が謝罪だと気づいた少女は、それを力強く突き返してくる。
「私は・・・お父さんやお母さんを助けることすらできなかった・・・!」
「仕方ない」
「仕方なくない!あなたはそんなに強いのに・・・私とほとんど変わらないのに!」
「それは、特別な境遇にあったから・・・」
「教えて。」
「え」
「教えてください!私に、力を!こんな子達がいなくなるように!この国の悪政を消すために!」
へぇ。自分の親が死んですぐ他人のことを考えられるとは。
神経が図太いのか、そんなフリをしているのか。
どちらにしても私にとっては好都合だ。
「じゃ、今回の仕事に加えてあげる。死んでも知らないわ。」
「はいっ!!」
ポロポロと泣きながらもついてくる少女に、私は少しだけ自分を重ねていた。




