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庭園の平和
ふらりと街に出れば、マリーゴールドの香りが乗った風が柔らかく顔に当たる。
乱れた髪を両手でぐいっと押さえ、耳にかける。
また髪が舞って、かけて・・・。
そんな繰り返しも、あの方あってこそ。
あの方がここに来るまで、私『たち』は家畜同然の生活をしていた。
『たち』と言うのは、みんながそうだからだ。
私の治める『南の庭園』だってそうだ。
みんな同じだから分かり合える。
だが、ずっと平和というわけにもいかないらしい。
そうあの方が言っていたが、庭園の主たる私でも、というより12の子供になにがわかるというのか、そんなことはわからない。
でもあの方が言うのだ、間違いはないのだろう。
あの方は言っていた。「お前はまだ皆と共に幸せに暮らせ。」と。
ならいつも通りにしておけばいいのだ。
なにより庭園のみんなを不安させてはいけない。
あの方の大事な民だから。
私はあの方のために、例えあの方の駒とされても、(あの方に限ってないとは思うが)あの方のために生きていけばいいのだ。