エピソード6:ドドメ色の青春
変態―――そう、それが俺たちを繋ぐ糸。
かくいう俺も変態でね。
俺は写真に映る女性にしか興奮できないという、壊れた本能の呪い。
山田は同性にだけ欲情するという、倒錯的フェティシズム。
部長は間接的にしか女性にアプローチできないという、狂ったツンデレ。
変態、変態、ド変態。
俺たちは変態だ。
そんな変態どもが寄り集まってしまった。
変態は通常、群れて生活しない。
それはなぜか?
変態の性癖は普通の人に比べてねじ曲がっている。
そしてあるとき気がつく。この性癖をわかってはもらえないのだと。
で、それは正しい。
人はどう頑張っても分かり合えない。
他人の痛みが自分にはわからないように、自分の性癖は他人に理解されない。
だから、変態は孤独に生きようとする。
しかし偶然にも、自らの性的趣向を満足させるために同じ手段を用いた変態たちがいた。
女性を写真に捉えるために。
同性を籠絡するために。
異性を恋人にするために。
シャッターを切る者たちが。
手段の一致。
それだけで、俺たちは手をつないだ。
でもそれだけで充分だった。
変態という名の糸はカメラによって紡がれる。
そして変態は今まで孤独に生きてきた。
だからその分、群れて生活する人に比べて力をつけた。
一人で生きるだけの力を。
そんな力をもった俺たちが、協力しあう。
友情のためでもなく、お金のためでもなく、下半身のために。
だからこそ、俺たちは誰にも負けない。
負けるわけがない。
だって、変態に勝るアホはいないのだから。
「ェへへヘ、ほんっとアホらしいですね」
「アホみたいだから頑張れるのだろう」
「そうでありますね」
変態―――その称号は、どう考えたって不名誉だ。
でも今それは、俺にとってドドメ色に光り輝いて見える。
汚い。
けど、それがいい。
部長と山田がドドメ色に輝くのならば、俺も汚らしく輝こう。