エピソード9:委員長もまた、『変態』
「ベントラーベントラー!」
部長が意味不明な呪文を呟きながらフラッシュを焚く。
「いやぁん!」
「あぁんだめぇ!」
もっと色気のある黄色い声は出せないのか。
そう思いつつ、部長と俺は風紀委員たちの垣根を超えてゆく。
風紀委員たちは部長に翻弄されて疲労困憊のご様子だ。
彼女たちの汗が体育館の床に飛び散り、ワックスによってピカピカに磨かれた床は照明灯の光を彼女たちの汗を通して乱反射する。
この調子だったら裏ミス鷺森までもう少し。
「もしかして、もう少しで裏ミス鷺森に届くと思ってないかい、米倉くん」
「えっ? だって、もうすぐですよ」
「ところがどっこい。そう簡単に通してくれるほど風紀委員は甘くないよ」
部長は裏ミス鷺森へ視線を向ける。
いや、正確にはその隣に佇む鉄の処女を見つめながら。
部長は問いかける。
「そうだろう? 委員長」
その呼びかけに返答はない。
しかし、それを合図と言わんばかりに委員長の周りに靄がかかる。
プレッシャー。
まるで恐怖という概念が具現化したかのように。
その靄は形作る。
聖マリア。
優しく温かい全ての母。
だがその内側は何もかもを貫くトゲがある。
「あれが……!」
思わず息を呑む。
外見は処女神を型取りながらも、その中は罪科を抱える者たちへ裁きを与える拷問器具にほかならない。
その姿。
あまりにも美しく。
あまりにも禍々しい。
「さぁ、あなたたちの罪を数えなさい」
委員長が冷たい声でささやいた。
そして。
アイアン・メイデンは。
具現化する。




