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死神少女の図書館  作者: 黒いもふもふ
ゲーム=提示⇔手札
5/15

ゲームは恋の駆け引き

鬱蒼と木々の茂った森の中、それはポツンと立っていた。

少し汚れたレンガの壁に掃除をしていないのか、落ち葉の溜まった灰色の屋根。普段から開かない大きな門が今日は珍しく開いている。

そこから出る雰囲気が不気味で、普通の人間ならばここで入るのに躊躇しているだろう。

けれども好奇心を抱き、ホラー映画などを見るのもまた人間だ。

そしてそんな人間は好奇心に負けて中へ入ってしまうのだ。

さて、それでは一体ここは何なのか……。

そんな疑問にお答えしよう。

今、その扉を今日も誰かが開けた。




館内のご案内


本日は図書館にようこそおいで下さいました。

館内には多数の物語がございます。

どうぞ、心行くまでお楽しみ下さい。


注意事項

・館内ではお静かにお願い致します。

・多種多様な住民達がおりますので、どうか心をお広くお持ち下さいますよう、お願い申し上げます。

・館内の物語の持ち出し、暴行行為は禁止となっております。違反されたお客様は見つけ次第スタッフが処分致しますのでご了承下さい。

・随時住民を募集しておりますので、ご希望されるお客様はお手数をおかけしますが、館長もしくは住民達へお申し付け下さい。

・以上、何かございましたら館長へお申し付け下さい。


館長含む、住民一同より




そう、ここは図書館。

門を開け一歩扉を潜ると、そこに広がるのはガラリと開いた大部屋に一つの白い机と二つの白い椅子。机の上に置かれた飲みかけの紅茶は温かく、今まで人が居たことを表していた。

暖かみのある色の壁紙や絨毯で部屋の中は暖かそうに見える。しかし実際には冷気が立ち込めており、ダウンジャケットを着ていても身震いしそうな寒さだ。

外は暖かかったのに、ここはこんなにも寒い。

そんな温度差はとても異常で、本能から危険だと感じられる程だ。


こんな時、あなたならどうするか?

寒さに耐えきれず、温かい紅茶を飲む?

部屋の奥まで進んでみる?

本能の言うままに踵を返して逃げる?


沢山の思考と選択肢があるだろう。

けれどそれはすべてNOだ。

温かい紅茶を飲む。そんな甘い誘惑にまんまと誘われてしまえば最後、その身を毒に侵されて苦しみながら死んでゆくだろう。

部屋の奥まで進んでみる。そんな一見勇敢そうに見える行動をすれば、もう元の場所へは戻れない。行き過ぎた好奇心は身を滅ぼすのだ。

本能の言うままに踵を返して逃げる。それは一見賢そうな選択肢だが、今からではもう遅い。踵を返しても、そこに存在するのは壁のみ。扉など、そこには存在しないのだ。


ならばどうすらればいいのか?

もしかしたら、もうここで息絶えるしかないのか。

しかし、そうではない。ここでは賢い人間が生き残る。


何処かから現れたブロンドの髪の少女は、おもむろに椅子に座る。そして飲みかけの紅茶を飲んだ。

そんな一連の動きが、まるで貴族であるかのように優美である少女の名前を知って生きて帰れる人間は少ない。


ここの住民はゲームが大好き。それは知る人ぞ知る住民達の特徴。

そのゲームとはボードゲームやカードゲームとは違った、まるで恋の駆け引きのように行われる、交渉と言う名のゲームだ。

もしここで生き残りたい、帰りたいと思うのであれば、あなたは住民達に対してゲームをしなければいけない。


少女の真っ正面の椅子に腰掛け、提示されたものと同等の手札を彼女に差し出す。それが主なルールであり、ゲームの遊び方なのだが、手札とは一体何なのか。

それは時に自身の記憶の一部であり、他人の記憶の一部である。

そして彼女から提示されるもの、それは知識であり物語だ。

つまりあなたが手札として差し出すものは自身の人生の上での思い出、エピソードなのだ。しかしそれを差し出してしまえば、それに関しての記憶まで取られ無くなってしまう。

逆に彼女が提示してくるものとは、彼女自身が知っている他人の思い出だ。

きっとゲーム等で他人から記憶を抜き取っているのだろう物語は多種多様にあり、底を尽きない。

きっとゲーム等で他人から記憶を抜き取っているのだろう。


そして何を提示して来るのかも彼女次第。

そこは運に任せるしかないのだが、それでもあなたがもし勝利出来たら。

その時は生きたままここから帰る事が出来るのだ。

しかし、提示された物語に釣り合わない手札を差し出し呆気なく負けてしまえば、もうあなたは帰る事が出来なく、ここの住民達になってしまう。

まさにハイリスクハイリターン。


それでも目の前にいる彼女も、見えていない浮遊している幽霊達も、今この場にいない少年も皆、あなたを新しい住民として温かく迎え入れてくれるだろう。


だから、彼女達は望んでいる。

時には人間の死に際を待ち、時には人間を死に誘いこみ、時には人間の中に紛れ込み森へと誘う。

少女は、幽霊達は、少年はそうやって今日も誰かを待っている。


「 ねぇ。私普段はしないのだけど、ゲームをしましょう?」


さぁ、手札を持って。

あなたもゲームを始めよう。

いざ、生死を掛けたデスゲームへ。




前回の話でのゲームは

少女の提示→本自体の物語、つまりは本の一部の記憶

青年の手札→自身の物語、つまりは一部の記憶

となります。

つまり青年はゲームに勝って、無事に帰れたと言う訳ですね。

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