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歩き出す

さてと…

駅前の、森の中の一本道をそのまま道なりに行けばやがて修道院に着くんだが、昼過ぎの山の中ってのは、散歩をするには気持ちがいいよな。しかも美味しいコーヒーを沢山味わったってのもあり、俺はしばらく上機嫌なまま、あの思い出が隠れた木陰に、いや、修道院へと歩き続けた。時おり吹き過ぎる風が、気持ちよい冷たさを運んでくれた。鳥の声に、時折り振り向いてみると、深い森の中の木漏れ日がいい感じだ。だがもっと奥の方には、霧が立ち込めているみたいだ。空は青々としているが、森の中ってやつは意外にも陽射しが届きにくいモンなんだな。それに霧か…。

山の天気は変わりやすいって言うし、この季節なんか突然雷雨が襲って来やがる事も珍しくねぇから、あまり呑気な事も言ってらんねぇな。ボヤボヤしてると、あっという間に雨が降り夕闇が訪れちまう。まぁ実は闇に備えてカンテラなんかを荷物に入れてあったりするんだが、今までは俺の踏ん切りがつかないせいで文字通り「お荷物」だったんだが、万が一ボヤボヤして夕闇が来ちまっても、今日はコイツが役に立つかもしれねぇな。


そう言やあの日は…

鳥の声も殆ど聞こえなかったな…。風ももっと冷たかったな…。そうだった。夜中だったな…。

俺は15年以上も前のあの日の事を思い出しながら、馬車道を歩き続けていた。思い出せば出すほど、上機嫌じゃ無くなって来やがる。


木陰に隠れた…苦い思い出…か。


もう見つからねぇかもしれねぇな。あれから15年以上が経ってやがるから、見つかる確率も極めて少ねぇ。まぁ見つかれば儲けモノ…みたいなもんさ。そんなちっぽけな探し物に期待を掛けるなんて馬鹿げた話かもしれねぇが、諦めがつかないまま、もう何年も過ぎちまったな…。探すのを辞めた時に、見つかるなんてよくある話だが、諦めが悪過ぎるな。


ふっ…

いや、諦めちゃいけねぇのかもしれねぇ。

見つけてどうにでもなるって訳じゃないだろうが…

いや、変わるかもしれねぇ。

苦い思い出を、せめて自分の中では綺麗に清算しちまいたい…。


そうさ。苦過ぎる思い出さ…。


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