悪夢のデート
時刻は午後4時15分。
いつもの町並みが並ぶ駅前。
翔次は一人突っ立っていた。とにかく突っ立っていた。
この15分間携帯も手いじりもしないで、横に手を置き突っ立っていた。
通りかかる人は一瞬
―――ぅおっ!びっくりした…マネキンかぁ……あれ?人だった―――
などという感想を抱き、平然とした顔で通り過ぎていった。
『お待たせぇ―――♪』
あぁ待ってましたよ。午後4時20分。麻希は小走りでやってきた。
お前絶対急ぐ気ねェだろという笑顔で翔次に話しかける。
『あんねェ…準備してたら財布ないの気づいてェ…やばかったのォ!』
アンタはお金たくさん持ってるんだから財布くらい大事にしなさい。
『へぇ…見つかった?』
『ぅん!なんとか』
『いくら持ってんの?』
『え――――?聞きたい?』
『聞きたい』
『いくらだと思う?』
『いくら?』
『ご想像にお任せしまぁす♪』
質問したのに質問で返ってくる麻希に翔次は呆れていた。
『もぅんなコトどーでもいいから早く行こ!』
答えてください。
麻希は翔次の腕を掴むと走り出した。
まずはゲーセンへLet's go!そこには数々のUFOキャッチャーが並んでいた。
麻希はすぐさまキティちゃんが入居している機会に向かって歩き出した。
―――それはすべて俺の自腹?―――
『採れないかもよ?』
『え?稲葉君コレ採ってくれんの?』
―――ゲッ…しまった!―――
相手はただ目標を見つめてるだけであって攻撃の命令を出していない!
『ちょー嬉しい―――☆』
『ハハハ…じゃぁ一回だけ…』
『私、このリボンのか・な・り欲しい〜♪』
―――待ってくれよ。それは必ず採れと同じ意味じゃ…しかも位置的に難しいぞ…―――
百円を四回奈落の底へと突き落とし、機械の合図を待つ翔次。
『よっしゃぁ―――!来い!!!!!』
こーなりゃヤケだ。
『がんばれ!稲葉君!!』
【♪−−(1)のボタンを押してね−−♪】
『お安い御用!』
もう翔次はバカの壁を半分乗り越えている。
【ウィ―――ン】
当たり前のように外れた。
『あぁ〜もうちょっとだったのにィ…』
『残念!残念!おしかったね。さぁ帰ろう!』
翔次はその場を立ち去ろうとした。
―――失敗万歳!あきらめてくれ!―――
が、不意に後ろから誰かに掴まれた。
振り返ると麻希がいる。
『……何ですか?』
麻希がニヤっと笑う。
結局ゲーセンでUFOキャッチャー七回と、プリクラ三回、合計で3400円を使い果した翔次は、淡路と同じように、小銭たちを震え上がらせた。
『いや、君達は何も悪くない…ただ、英雄が…』
『何言ってんの?稲葉君。』
『いや?別に…』
『あぁ――私おなか空いてきちゃったなぁ…』
『へーそう、じゃ早く帰ろうよ』
『…………』
麻希が冷たい視線で翔次を見つめる。
『はい、どこがいいの?』
『え―――いいの?』
―――へっよく言うよ…―――
翔次たちはハンバーガーショップに寄り、休憩した。
時刻は午後7時45分。
やっと帰れると思った翔次に更なる試練が待ち望んでいた。
ずいぶんと遅くなりましたが、五話が完成!!
大して誰も待ってないけど…
そんなワケで次話はデート後編(?)です☆★☆