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自己中な彼女  作者: 由衣
4/5

淡路の恋物語

帰り道―――。

翔次は淡路と話していた。

『―――で、聞きたかったのは中居のことだろ?』

『そうそう…ぁ、あとさ、お前一ヶ月くらい付きまとわれた?』

『ああ、そうだな』

―――何で俺だけ…。―――

『確か二年の初めくらいか?』


―――――これは過去にあった淡路と麻希の話。

淡路は理科室に向かうため、一人廊下を歩いていた。

荷物が多かったせいですぐに筆箱が落ちそうになる。

階段を降りて行く途中とうとう筆箱が手元から落ちた。筆箱は階段を歩くようにスムーズに落ちていく。

それを追い、急いで階段を降りた淡路は持っていた教科書・ノートなどをすべてばらまいてしまった。

―――やばい…―――

淡路が必死に散乱した荷物を集めていると、横から細い綺麗な手がノートを持って現れた。

『あ…』

顔を上げると短い三つ編をした女子生徒が可愛らしい顔でノートを差し出していた。麻希だ。

『はい』

『ぁありがとう』

麻希は片手で家庭科の教科書などを持ちながら散乱した淡路の荷物を一緒に拾っていた。

そのとき、予鈴のチャイムが鳴る。

『遅れちゃうよ…』

『ぅん!今度から気をつけてね』

『あ…わかった』

淡路は少しにやけながら理科室へ向かった。…がノートに挟んであったレポートがないことに気づく。

淡路は慌てたが突然後から声がかかった。

『淡路君!』

振り返ると麻希が立っていた。

『レポート、忘れてるよ』

麻希の手にはレポートが握られていた。

『ごめん(笑)』

淡路はレポートが見つかったことよりも麻希に名前で呼ばれた方が嬉しかったのだ。

馬鹿だコイツ。

それからというものの麻希は休み時間になってからクラスの違う淡路のところへやってきてた。

『淡路君。この前貸してもらったCD忘れちゃったの!今度でいい?』

『いいよ!いつでも』

『ありがとォ〜☆あとさ、メルアド教えて♪』

『うん』

『じゃいつでもメールしちゃうね☆』

淡路は夢を見ているようだった。

こんな優しくて可愛い娘とメール交換できるなんて…

だがそれも夢で終わるのだ。

麻希から送られてくるメールは決まって


ウチ今欲しいモσカヾあノレσ〜

モゥ誰カゝ買⊃τ〜!!

す=”レゝカゝワレゝレゝ||”⊃<”+σ‘w+=”♪

(※ウチ今欲しい物があるの〜もう誰か買って〜!!すごい可愛いバッグなんだ♪)


というギャル文字満載。

淡路はギャル文字が理解できず、【そうだね】という答えしか返せない。

その度、【答えになってな――――い】と顰蹙を買うのだ。

それが重要なことだった場合はもっと困る。

淡路が物理のレポートが終わっておらず、焦っている最中麻希から


牛勿王里σνポーL⊂糸冬ゎ⊃+=?

(※物理のレポート終わった?)


などというメールが届いた。

もちろん淡路にとっては嬉しいことだが(麻希は頭が良い)このギャル文字が分からない。

とりあえず【?】がついているから質問しているのだと分かり、【そうだよ】と訳の分からないメールを送り返した。

メールだけではない。学校にいたって

『きのォクロちゃんが脱走しちゃってェ…やばいのォ―――』

とギャル文字ならず麻希語が繰り広げられる。

自分の私生活を喋っているのかテレビのことなのかまったく分からない。

だいいちクロちゃんて何なんだ。

淡路はそんなこんなでとりあえず恋人気分で付き合っていた。

そんな五月のある日

『渋谷行こ――』

と麻希が言い寄ってきた。

―――もしや…デート?―――

と変な妄想をはたらかせた淡路は二つ返事でOKした。

………悲劇の始まりだ。

休日に二人は駅で合流し、そのまま電車で渋谷に向かった。

車内でも麻希はメールに没頭している。脇からは【〒〒くσ】という文字が見える。

例のギャル文字だ。

『あ、あのさ』

『え?』

『その暗号みたいな文字は何?』

『え――!淡路くん知らないの?』

『ごめん』

『クク…いいよ知らなくて(笑)』

その方が面白いというように麻希はメールを続けた。

アナウンスが入り、電車から下りると麻希の悲鳴が聞こえた。

『きゃぁ!』

見ると麻希のブーツのヒールが折れていた。

『ぁぁあ!大丈夫?』

『どうしよ―――!靴なきゃ歩けなぁ―――い!』

『あ、じゃあどっかで靴買ってあげるよ』

『本当?ありがとう☆』

この女狙ってる。

7000円のブーツを買わされた淡路は次に

『ねェ見てみて!コレ可愛いよ―――!』

と洋服店に連れてかれた。

そのピンクのTシャツをしばらく見ると麻希は

『だめだ高っかい…』

とため息を吐いた。

そのあまりにも残念そうな顔を見ると淡路は財布を覗き込み

『いいよ!買ってあげる』

と笑顔で言った。

『3200円です』

どうやらブランドものだったらしい。

もう淡路の財布は小銭たちが身を寄せ合って震えている。淡路の手も震えている。

『あ――…このブローチ欲しい☆』

淡路はドキッとした。もう金はない。

すると麻希はその店に入り、財布から万札を取り出した。

―――金あんじゃん!!!!!―――

その財布の中にはまだ綺麗な夏目漱石たちが精悍な顔つきで並んでいる。

唖然とする淡路の前で麻希は

『お待たせ♪』

と財布を振り回しながら店から出てきた。

すべてが終わった。今この瞬間。

夕方になり我が町に着いた淡路は麻希に向かってこう言った。

『…ごめん………別れよう。…いや、君は何も悪くない。ただ…』

『…は?』

麻希は顔をしかめた。

『元々アンタと付き合った覚えないし』

そう言うと『じゃね♪』と手を振り家へと帰っていった。

―――――短すぎた恋。あの『はい』とノートを差し出す麻希はいなくなっていた。


『まぁ…こんな感じだな』

『どんな感じだよ!すごい初恋じゃん』

『ぅん!まったく今日は夢の早帰りだっつーのに災難だなお前』

『…あ!あと一時間ぐらいしかねェ!!』

翔次は走り出した。そんな翔次に淡路は

『金だけは払うんじゃね―――ぞ――!!!夏目漱石と野口英雄は大事にしまっとけ―――!!』

と叫んだ。

ギャル文字が疲れました。

ってかあってないと思う。

というわけでギャルのみなさん確認ヨロシクお願いします。

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