6.赤い星の記憶
ー放課後ー
夕焼けが校舎を赤く染めていた。
教室にはまだ数人の生徒が残っている。
結人は伸びをしながら言った。
「やっと終わった。」
蓮が笑う。
「お前、今日ほとんど寝てただろ。」
「うるせえ。」
アリアは窓の外を見ていた。
夕焼けの空。
少しだけ、胸がざわつく。
理由はわからない。
結人が声をかけた。
「アリア、帰るか。」
「うん。」
四人は教室を出る。
階段を降りて廊下を歩く。
その時だった。
廊下の奥から怒鳴り声が聞こえた。
「いい加減にしろよ!」
結人が顔をしかめた。
「また大翔か。」
曲がり角を曲がると
そこには数人の男子生徒が集まっていた。
その中心にいるのは――
大翔だった。
制服の襟を掴んでいる。
相手の男子生徒は怯えていた。
「もう一回言ってみろ。」
低い声。
男子生徒は震える。
「ご、ごめん……!」
大翔は舌打ちした。
「最初からそう言え。」
その時だった。
大翔の視線が動いた。
アリア。
目が合う。
一瞬。
大翔の瞳が揺れた。
胸の奥で声が響く。
――守護者様。
しかし口には出さない。
それは星の決まりだった。
大翔は顔をそらす。
「……チッ。」
男子生徒を突き飛ばす。
「失せろ。」
男子生徒たちは慌てて逃げていった。
蓮が言う。
「最近マジでやばいなあいつ。」
澪が静かに言う。
「前はあんなじゃなかった。」
結人は大翔を見る。
「大丈夫か?」
その時だった。
大翔の体が揺れた。
「……っ!」
頭を押さえる。
呼吸が荒くなる。
「またかよ……」
小さくつぶやく。
結人が近づく。
「大翔?」
しかし大翔は答えない。
アリアを見ていた。
苦しそうな目。
「……なんでだ。」
小さくつぶやく。
「なんで今なんだよ……」
その時。
別の男子生徒が笑った。
「おい見ろよ。」
「転校生じゃん。」
アリアを指さす。
「弱そうだな。」
その言葉。
次の瞬間。
ドクン。
大翔の体が止まった。
拳が震える。
「……やめろ。」
低い声。
男子生徒は笑う。
「は?」
「関係ねえだろ。」
その瞬間。
赤い光がにじみ出た。
大翔の体から。
「……っ!」
本人も驚いていた。
「クソ……!」
必死に押さえる。
「出てくんな……!」
しかし光は止まらない。
結人が言った。
「今、光ったぞ……」
大翔の背後に
影が現れる。
角を持つ影。
荒々しい力。
アリアの胸が強く揺れた。
その瞬間。
記憶が走る。
宇宙。
赤く輝く星。
元気な声。
「守護者様!」
「今日はどこまで飛びます?」
笑いながら宇宙を飛んでいた。
その星と一緒に。
アリアの口から言葉がこぼれる。
「……牡羊座。」
世界が静かになった。
赤い光が止まる。
大翔の目が大きく開く。
そして、笑った。
苦しそうに。
でも嬉しそうに。
「……やっと。」
ゆっくり言う。
「思い出してくれた。」
赤い光が体から離れていく。
大翔はアリアを見る。
その目はもう荒れていなかった。
「遅いですよ。」
小さく笑う。
「守護者様。」
アリアは戸惑っていた。
「……あなた。」
大翔は空を見上げた。
夕焼けの空。
「ずっと待ってました。」
赤い光が強くなる。
「俺たち、先に言えないですから。」
小さく笑う。
「でも、ちゃんと見つけてくれた。」
赤い光が体を包む。
「嬉しかったです。」
アリアの胸が締め付けられた。
懐かしい感情。
楽しかった時間。
そして――
別れ。
「守護者様。」
大翔は静かに言った。
「また会いましょう。」
その瞬間。
光が空へ昇った。
星の形を描きながら。
夜空に一つの星が輝いた。
静寂。
結人が空を見ていた。
「……なんだよ今の。」
アリアは答えられなかった。
胸の奥に
一つの記憶と
一つの感情が戻っていた。




