5.荒れる日
ー昼休みー
教室の空気はどこか落ち着かなかった。
「なあ、聞いた?」
蓮が小声で言った。
結人がパンをかじりながら聞き返す。
「何を?」
「大翔。」
その名前が出た瞬間、クラスの数人が顔をしかめた。
「また問題起こしたらしい。」
澪が静かに言う。
「朝、二年のやつとケンカした。」
結人がため息をついた。
「最近ほんとどうしたんだよあいつ。」
アリアはその会話を黙って聞いていた。
まだ学校に慣れていない。
でも一つだけ気になることがあった。
昨日の視線。
校舎の影から、自分を見ていた男子生徒。
その時だった。
ガンッ!!
大きな音が廊下に響いた。
クラスが一瞬で静かになる。
「……来た。」
蓮がつぶやく。
教室の扉が乱暴に開いた。
バンッ!!
入ってきたのは大翔だった。
教室の空気が一気に張りつめる。
大翔は誰も見ずに、自分の席へ歩く。
椅子を乱暴に引いた。
ガタン。
そのまま机に足を乗せる。
教師もまだ来ていない。
誰も何も言わない。
沈黙。
その時だった。
大翔の視線がゆっくり動いた。
そして――
アリアで止まる。
アリアと目が合う。
ほんの一瞬。
だが大翔の瞳がわずかに揺れた。
(守護者様..)
胸の奥で、声が響く。
だが口には出さない。
言えばいけない。
それは星の決まりだった。
大翔は舌打ちをした。
「……チッ。」
わざと苛立った顔をする。
アリアから視線を外した。
結人が小声で言う。
「なんかあったか?」
アリアは首を振る。
「……ううん。」
しかし胸の奥が少しだけざわついた。
理由はわからない。
ただ、あの男子生徒の目。
どこか怖かった。
――――――――
放課後。
校舎の裏。
怒鳴り声が響いていた。
「だから言ってんだろ!!」
ドンッ!!
誰かが壁に叩きつけられる。
結人が顔をしかめる。
「また大翔だ。」
蓮が言う。
「やばいって。」
四人は校舎の裏へ向かった。
そこには大翔がいた。
一人の男子を壁に押し付けている。
「もう一回言ってみろ。」
低い声。
男子生徒は震えていた。
「ご、ごめん……!」
その瞬間。
「やめろ。」
結人が言った。
大翔が振り向く。
空気が凍る。
数秒。
沈黙。
そして大翔はアリアを見る。
また目が合う。
胸の奥で、何かが暴れた。
大翔は眉をひそめる。
「……クソ。」
苛立った声。
そして突然――
壁を殴った。
ドォン!!
コンクリートがひび割れる。
全員が息をのむ。
蓮がつぶやく。
「……今の力、何?」
大翔自身も拳を見ていた。
「……なんだよ。」
だが次の瞬間。
大翔はまたアリアを見る。
数秒。
そして舌打ちした。
「気に入らねえ。」
そのまま背を向ける。
「今日は気分悪い。」
歩き去る。
静寂。
蓮が言った。
「……あいつ絶対おかしい。」
結人も黙っていた。
アリアは遠ざかる背中を見ていた。




