4.荒れる心
ー翌日ー
教室の空気は、どこか重かった。
「なあ、昨日のあれ見た?」
蓮が小声で言った。
「何?」
結人が聞き返す。
蓮は少し声を落とす。
「大翔だよ。」
その名前を聞いた瞬間、
教室の空気が少しだけ変わった。
アリアはその様子を見ていた。
「大翔?」
澪が説明する。
「同じ学年のやつ。」
「最近ちょっと荒れてる。」
その時だった。
ガンッ!
廊下から大きな音が響いた。
教室の中が静かになる。
結人が窓の外を見る。
「またか…」
アリアも外を見る。
廊下で、一人の男子生徒が壁を蹴っていた。
短い髪。
鋭い目。
昨日、校舎の影で見た少年だった。
「……」
その少年――大翔は、
誰かを睨みつけている。
「どけよ。」
低い声。
前に立っていた生徒が慌てて道を空けた。
大翔はそのまま歩き去る。
教室の中に小さなざわめきが起きた。
「最近ずっとあんな感じなんだ。」
蓮がため息をつく。
「誰にでもケンカ売る。」
アリアは黙って聞いていた。
――――――――
昼休み。
屋上。
結人たちはいつものように昼ご飯を食べていた。
「大翔、前はそんなやつじゃなかったんだけどな。」
澪が言う。
「去年までは普通だった。」
蓮が言う。
「最近急にキレやすくなった。」
アリアは黙って空を見ていた。
結人が聞く。
「どうした?」
「……ううん。」
その時。
屋上の扉が勢いよく開いた。
バンッ!
全員が振り向く。
そこに立っていたのは、大翔だった。
蓮が小声で言う。
「……うわ。」
大翔はゆっくり歩いてくる。
そして、アリアの前で止まった。
数秒。
沈黙。
大翔はじっとアリアを見ていた。
まるで、何かを確かめるように。
結人が口を開く。
「何だよ。」
大翔はゆっくり言った。
「……お前。」
その声は低かった。
「どこから来た?」
結人が眉をひそめる。
「は?」
大翔の目がアリアから離れない。
アリアは少し戸惑った。
「……?」
その瞬間だった。
大翔の瞳が、一瞬だけ赤く光った。
ほんの一瞬。
誰にも気づかれないほどの光。
大翔は舌打ちをした。
「……チッ。」
そして背を向ける。
「つまんねえ。」
そのまま屋上を出ていった。
沈黙。
蓮がつぶやく。
「……なんだあいつ?」
結人は少し考え込んでいた。
アリアは屋上の扉を見つめていた。
胸の奥が、少しだけざわつく。
理由はわからない。
でも――
何かが、始まろうとしていた。




