7日目(0.5)中間報告
7日目(セレナ視点)
皆さん、ごきげんよう。
ミレア・フルレンティア=リヴァーン殿下の下級侍女になって、一週間が経ちました。
セレナ・アウレリア=フィオルネです。
この一週間、最初の二日はひやりとする場面もあったけれど、
全体としては、とても順調だった。
ミレア殿下のことも少しずつわかってきたし、
仕事にも、空気にも、慣れてきた。
もちろん、油断はしていない。
むしろ逆だ。
この一週間で、
私はだいぶ学んだ。
まず――
やった。
隠蔽魔法式、完成。
これで、
魔法が使いたいほ……
……コホン。
正確には、
「魔法が動いた“あと”を、なかったことにする」式。
魔力は動く。
それ自体は、どうしようもない。
だから、
流れたあとの空気を戻す。
認識阻害と、
流れの逆撫で。
何が起きているのか、わからない。
だからこそ、
魔法省が一番嫌がるものに仕上がった。
昼の一件は、
完全に授業料として、元が取れた。
まぁ、五回に一回は失敗するのは仕方ない、と諦めているからこそ、
まだ人目はかなり気にしている。
ついでに、
下半身だけの身体強化も成功。
これは魔法式じゃない。
魔力を纏わせて、
動きを体に覚えさせただけ。
ひたすら反復して、
廊下が、ちょっと歩きやすくなった。
決して、走ってはいない。
……決して。
それから最近、
中級侍女の方のお手伝いに呼んでいただけることが、少し増えた。
理由はたぶん、私が暇そうに見えるから。
その理由が、
洗濯魔法を浄化魔法に変えて、
掃除の魔導具に浄化作用の魔法式を付与したから
(もちろん隠蔽済み)
だとは、まったく気づいていなさそうだ。
その実験中に、姫様のお洋服を破きかけて、
慌てて再現魔法を使ったことも――
たぶん、まだバレていない。
お手伝いをするようになって、
ミレア様の、いろんなことを知れるようになった。
好きな匂い。
甘すぎない果実。
最後に、柑橘が残る感じ。
好きな食べ物も、味の傾向もわかった。
(少し食べられたあとのものを、味見したりもした)
色。
お風呂のお湯の温度。
高すぎると肩が上がること。
少し下げると、呼吸が深くなること。
気温の許容範囲。
これらをすべて把握して、
その時々に合わせて適切に回す。
それが上級侍女の役目なのだと、
やっと理解した。
そして、ぞっとした。
すごすぎて。
なぜ、 そこまで気を遣うのか。
心が休まる瞬間が、
ミレア殿下にとって、どれほど必要なのか。
ただ、
好きで観察していい対象ではない。
消費していいわけがない。
それだけは、はっきりわかった。
だからこそ、
服のサイズも、目視でわかるように練習中だ。
数字だけじゃない。
落ち方。
肩線。
布の余り。
歩いたときの揺れ。
触らずに測る方法を、
今、本気で考えている。
視覚で認識する瞬間に、
阻害魔法の応用ができないか、実験中だ。
まだ、呼び方は――
ミレア殿下。
中級なら、ミレア様。
上級なら、姫様。
私は、ミレア殿下。
私は今日も、
誰にも提出しない報告を、
静かに更新している。
――いつか
「姫様」と呼ぶ日が来ても、
声が揺れないように。
そのための、準備として。
※更新について
最初の二ヶ月ほどは月一更新、その後は毎週更新を予定しています。
無理のないペースで続けていきますので、気長にお付き合いください。
次回は、少し重めの話になります。




