2日目(3)
夜。
ようやく、誰にも見られずに息ができる時間だ。
部屋に戻って、灯りを落とす。
ワゴンも、制服も、きちんと所定の位置。
身体は疲れているはずなのに、
頭だけが、まったく休む気配を見せない。
――今日の昼は、危なかった。
私は寝台に腰を下ろして、
昼間の感触を、もう一度なぞる。
魔法省。
あの歩幅。
あの視線。
この国は、ややこしい。
王族がいて、
王室省があって、
その下に、たくさんの役所がぶら下がっている。
中央官僚。
地方官僚。
騎士団。
魔法省。
採用の入り口は王室省。
でも、
実際の運用は、それぞれが勝手にやる。
横の連携も、縦の命令も、正直あいまいだ。
その中で、
魔法省だけが、少し浮いている。
魔法に関することだけは、
所属も立場も、ほとんど関係ない。
「魔法が動いたかもしれない」
それだけで、顔を出してくる。
しかも、
彼らは決めない。
その場で裁かない。
ただ、拾って、残して、回す。
だからこそ、厄介だ。
王宮内で、
申請していない魔法式を使うのは、
基本的に禁止されている。
――基本的に、だ。
つまり、
即アウトではない。
でも、
「念のため」の確認が入る。
長くて。
細かくて。
何度も同じことを聞かれて。
最後に、
「今回は問題なしでした」
とだけ言われて解放される。
それが、基本。
……誰が好き好んで、
そんな目に遭いたいんだ。
私は思わず、布団に顔をうずめた。
(だから、隠蔽)
昼に使った一回分。
八十字。
あれは、完全に授業料だ。
魔法式そのものは、悪くない。
記憶保持の精度も、反応も、想定どおり。
問題は、見えること。
魔力が流れる。
空気が揺れる。
それを、
「誰にも拾われない形」にしなきゃいけない。
私はごそごそと身を起こして、
紙とペンを引っ張り出す。
隠す。
消す。
散らす。
重ねる。
身体強化より、ずっと難しい。
でも――
やりがいは、ある。
昼間の冷えた背中を思い出して、
私は小さく笑った。
(……絶対に、完成させてやる)
下級侍女の二日目、夜。
私はまた一つ、
この国で生き残るための条件を、
ちゃんと理解した。
見たいと思ったばかりに、
気づいたら制度と魔法の話ばかりになってました(笑)
素直に見れるところ見て、
さくっと恋愛入れてくれ…と、
作者が一番思ってます。




