出航
メッセージが下から飛んできた。
「レベルが上がりました」
俺は27に上がった。カナは24に上がった。
本当に倒せたんだ。
悪魔は塵となって消滅した。はじめからいなかったように。
瞬間、洞窟が揺れ出した。出れるのか。
ガタガタと洞窟は震えだし、洞窟に亀裂が走る。
ガタガタ____
「亀裂が!」
バキィン!!
。。。。。。。。
____
俺達は建物の中にいた。戻れたんだ。
「はぁ〜マジキツかった!!」
出だし最悪だ。俺の必殺技で決められなかったし、そんな必殺技も格好悪いし。
チート主人公とは本当に無縁だな。
俺は頭を抱えた。
「見て、割れてる」
カナの声の方に目をやると、割れた石があった。
以前の美しく黒い魔法石はそこには無い。あるのはひび割れた普通の石だけだ。
「あの人は出れたのかしら」
「無事だといいけど」
俺とカナは建物から出た。
「おーい!」
外に出ると男が近づいてきた。
「どこにいたんだよ、店には誰もいないし、お前らもいないし」
たかしだった。
「それによ、お金置きっぱなしだったから店に戻ってみるとよ」
「人間の死体があったんだよ、最初は無かったんだぜ」
「ねぇ、これって」
俺達は察した。
悪魔戦の時に見た人達で間違いない。村人達は悪魔から解放されたんだ。
戦って死んだもの、契約を交わし死ねず苦しんだもの、みんなあの石から解放されたんだ。
「ん?なんだ知ってんのか」
「それはまた後で」
「はぁ、飯屋はやってないしなぁー。。。」
たかしの腹の音がなる。
「もう、あの爺さんのとこしかないか」
「あの爺さん?」
「魔王を倒すために大陸を移動する必要があるだろ、その船を貸してくれる爺さんだよ」
どんな爺さんだよ。
「だけどよぉ、爺さんの屋敷までは砂漠を越える必要があんだよ」
たかしはため息を吐いた。
「まぁ、仕方ないし早く行こうぜ」
「いや、その前に見ときたいとこがあんだ」
「ぐぬぬ。。。じゃあ見に行こう」
そうとう腹減ってるんだな。
俺は村の建物に入る。
「違うか、じゃあこっち」
いた。
「よぉ」
「おかげで石から出ることができた」
「ありがとう」
男は何か液体を混ぜていた。
「それは」
「これか、これはなぁ」
男は最後の工程に液体をかき混ぜて俺に渡した。
「復活液だ」
復活液:HPを半分回復し蘇生させる。
復活液!ゲームじゃ普通だがここは現実、死んだものは帰ってこない現実の世界に復活液があるとは。
「感謝の礼だ」
「これから俺はそれを作って村の人を蘇生させるつもりだ」
「あの石は災いだ、絶対に起きちゃいけない」
「村の人は絶対救う、逃げれたのはみんなのおかげなんだから」
「そっか、頑張れよ」
「お前もな」
男の目は輝いている。石の中にいた諦めた目をした男はもういない。
「あ、言っとくがその復活液でも復活できないのが二つある」
「一つ目は寿命が尽きている場合 二つ目は魔力が全く無い場合だ まぁ死んでも魔力が0になることはないから二つ目は特例な」
_____
村を出て俺達は砂漠に入った。
インド風な音楽が流れる。砂漠は強い熱気を放つ。
「あっちーな」
「さ、砂漠をちゃっちゃと越えていこう」
たかしは服で風を仰いだ。
人生初めての砂漠だ。砂漠ってめちゃくちゃ暑いと思ってたけど、そんなに暑くない。
日本の夏の方がずっと暑い。
そうだ俺、夏休みだったんだ。転生するならもっとタイミングがあるだろって!
前世を思い俺は頭を抱えた。
向こうに緑の結晶があった。HPもMPも俺とカナは全く無い。
早く回復しないとな。
緑の結晶に向かい砂漠を進む。
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「レッドスライムa レッドスライムbが出現」
あぶねぇ。スライムで良かった。
強い敵だったら絶対に負けてた。
「たかし、あんたがやりなさい」
「俺が?まぁいいけど」
たかしの体力は全快だ。たかしはスライムに走り出した。
たかしはレッドスライムaに殴りつけた。
たかしは120ダメージを与えた。
スライムだってステージが進めば強くなるんだな。
「ぷぅぅに!」
スライムa スライムbはたかしに向かって突進した。
59、57とたかしに数字が出る。
たかしは116ダメージ受けた。
たかしはレッドスライムa、レッドスライムbに殴りつけた。
120、110、115ダメージ与えた。
スライムはまだ倒れない。
「しぶてぇな、そんなら」
たかしは指を鳴らし、技を出した。
___技!?
「会心拳」
たかしはレッドスライムaに突進した。拳はレッドスライムaを突き破りレッドスライムbに拳が当たった。
レッドスライムbも突き破った。
レベルが上った。
たかしは22に上がった。ポーションを2つ落とした。
技が使えた。俺のセレクト画面を用いずに技を使えるなんて。
「おい、今のなんで使えたんだ」
「ん?勝手に体が動いた時に使えるようになったんだ」
「だけどよ、毎回使えるってわけじゃなくて、使える!!って感じた時使えるんだ」
一度使用した技はたかし本人でも使えるようになるのか。
TPを知らないみたいだし、たかしも勘で使っているようだ。
「まっ、お前の指示の方が的確だし、勝手に使うことはしないかな」
緑の結晶にたどり着いた。
緑の結晶に手をかざした。
体が持ち上がるように軽くなり、フワっとする。
メッセージが下から飛んできた。
「回復しました」
「セーブしますか」
俺はセーブを選択した。
これでカナも俺も戦える。
_____
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「スナヘビが出現」
緑色の大きな蛇だ。俺は戦闘画面を開いた。
最初はTPが無いから開く必要はないけど。。。おっやっぱり。
カナの魔法が追加されていた、それだけじゃない。
スーパーヒールがある、ヒールの上位種と書かれている。
名前で分かるわ!
俺はアイスを見てみたい。
俺はカナのアイスを選択した。するとカナの剣先に青い球が現れる。
「アイス」
スナヘビに球が命中した。
スナヘビに900ダメージ与えた。
「こんな魔法があったのか?」
スナヘビはシュルシュルと動き、砂に潜った。
あのヘビどこに行った。。。
後ろから声がした。
「おい、離せ!」
スナヘビは飛び出し、たかしに巻き付いた。
たかしは300ダメージ受けた。
スナヘビは強くたかしを締め付ける。
「んげっ、誰か」
たかしは300ダメージ受けた。
「しょうがねぇな」
俺は斧を。。。。。あ。
そうだ。 俺、投げたんだ。
悪魔に投げつけてそのまま無くなったんだ。また武器無しかよ、クソぉ!
俺はスナヘビに攻撃した。
スナヘビに130ダメージ与えた。
「お"い。。。ぞれじゃ。。。はな"れ"」
たかしの首が締まる。スナヘビはたかしを強く締め付けた。
俺は巻き付いたスナヘビを引っ張った。
固い、どんだけ強く巻き付いてんだよこの!
スナヘビを思い切り引っ張るがなかなか解けない。
たかしは300ダメージ受けた。
「アイス」
カナはスナヘビまたはたかしに向かって放った。
スナヘビに命中し、900ダメージ与えた。
メッセージが下から飛んできた。
「スナヘビは凍結状態になった」
スナヘビは凍りついた。
アイスの効果か、動きを止めるのに使えるかもしれない。
「冷たっ」
スネヘビの締め付けは弱まった。
凍ったスナヘビはたかしに張り付いている。
「冷てぇん。。。だよ!」
たかしはスナヘビを掴んで投げ飛ばした。
投げ飛ばされたスナヘビは500ダメージ受けた。
飛んでったスナヘビは消滅した。マジックウォーターを落とした。
____
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「サンドワームが現れた」
どんだけ出んだよ。砂漠は広大でモンスターも多かった。
カナは魔法を唱える、剣先を空に上げ黄色いエネルギーは収束する。
俺はたかしの戦闘画面を開き、3回攻撃を選択。
俺は魔法画面を開きファイアを唱えた。
たかしはサンドワームに飛び出し攻撃した。
1180ダメージを与えた。
更にファイアが命中した。450ダメージ与えた。
まだ終わらない。
カナのスパークが炸裂した。1100ダメージを与えた。
サンドワームは消滅した。
どうやら最強コンボが完成したようだ。
メッセージが下から飛んできた。
「レベルが上がりました」
たかしは23に上がった。カナは25に上がった。
____
芝生が見えてきた。
「見ろ!」
「やっと見えてきたな」
「違うぜあそこに宝箱だ」
たかしの指した方を見ると宝箱があった。
そういや今までステージに無かったな。
俺は宝箱の蓋を持ち上げた。
____?
宝箱の中に口が付いていた。俺は蓋をゆっくり閉じた。
うん、宝箱は無かったようだ。
「中身は?」
「あれ、空だったよ___あ。。。」
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「ミミックが出現」
宝箱に化けるモンスターミミック、こいつは倒したっていいことが無いモンスターだ。
見た目はいいのに、やってることは最悪なモンスター。
俺はこいつに何回騙せれたことか。
剣があればお前なんか。。。
「リーフ」
「あぎゃ!!」
カナがリーフを放った。
ミミックは箱ごとバラバラに砕け散った。
「あれ、すぐ倒せちゃった」
ミミックは何も落とさなかった。
そりゃそうだよな。
____
砂漠を越え芝生を踏みしめる。
俺の目の前には大きな屋敷が見えた。
屋敷の中に緑色の結晶があった。
緑の結晶に手をかざした。
体が持ち上がるように軽くなり、フワっとする。
メッセージが下から飛んできた。
「回復しました」
「セーブしますか」
俺はセーブを選択した。
部屋の中央に爺さんがいた。爺さんは椅子に腰掛けていた。
たかしは爺さんに話しかけた。
たかしが船の話をしてくれるようだ。
「爺さん飯は、飯!!」
「飯?んじゃちょっと手伝ってもらおうかのぉ」
「やっと食えるぜ」
その前に飯休憩だ。
食後。。。
「爺さん船に乗らせてくれ」
「え?船に乗りたい」
「そうだ」
「ええじゃろ」
「じゃあ。。。」
「準備に時間がかかるから用意できるのは明日じゃ」
「今日は泊まってきなさい」
「あっ、おう」
そうして俺達は爺さんの屋敷で泊まることとなった。
____
夜の屋敷。
みんな就寝している。部屋の灯りは消えている。
一人を除いて。。。
「ふぁぁ。。。」
たかしはあくびをかいていた。
「トイレってどこだっけ」
部屋の真ん中でトイレを探している。
ガタガタ____
足音がする。
「なんだ?」
足音が近づいてきている。
ガタガタ____
「やっぱ音するよな」
足音はより大きくなる。
そして。
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「???が出現」
たかしにはメッセージは見えない。
「こいつ敵だよな」
大きな魔物が見えた。暗闇でもはっきり見える。
「まっ、敵ならやるか」
たかしは飛び出して攻撃を放つ。
???に200ダメージ与えた。
魔物の体から触手が生えた。そして触手は刃を出し、たかしに飛びついた。
たかしは1000ダメージ受けた。
「負けられねぇ!」
たかしの拳に力が入る。
「会心拳」
たかしの攻撃は高速で魔物に繰り出される。
???に800ダメージ与えた。
たかしの体にオーラが纏った。
全ての攻撃がクリティカルになる。
まだまだ行くぜ。
たかしは3回攻撃を行った。
800、830、908ダメージ与えた。
魔物は触手を縮め、たかしを狙う。
縮んだ触手は大きく膨らみ飛び出した。
触手はたかしを突き刺す。
たかしは2000ダメージ受けた。
「ふぅ〜強ぇ」
こりゃ、何発も食らえねぇな。
だがさっきので技がまた打てそうな気がする。
たかしは攻撃を放った。
???に600ダメージ与えた。
止まらずたかしは殴り続ける。
600、620、650。。。
魔物は体を変形させ触手を増やす。こいつも決めに来ているな。
だがさせねぇ!
魔物は無数の触手を生やしたかしを包む。
同時に。。。
「乱打双拳」
拳が魔物を襲う、触手は粉々になった。
「オラオラぁ!」
拳が5発目に入る時、魔物は消滅した。
???に5000ダメージ与えた。
レベルが上った。
たかしは24に上がった。
____
「結局何だったんだあいつ」
それにしてもみんな起きてこなかったよな。聞こえねぇのか?
!!
たかしに衝撃が走った。
「やべっ!漏れる」
____
屋敷に朝がやってきた。
「船を用意したぞぉ」
爺さんの声が聞こえた、船の用意が出来たようだ。
「ふぁ〜。。。」
「眠れなかったの」
「昨日、魔物に襲われる夢見たんだよ」
「だからよぉ、眠れなくて」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ」
爺さんは笑いだした。
「もしかしたら、座敷わらしかものぉ」
「いたずら好きな座敷わらしが魔物に化けたんだろうのぉ」
そんなのがいるなら、座敷わらしも趣味が悪い。
「船見に行こうぜ!」
たかしはウズウズしている。分かるぜ、俺も早く乗りたい。
「ふぉ、ふぉ、仲間との船旅はきっと楽しいものになるじゃろぉ」
俺達は裏庭へ向かった。
___
裏庭には大きな船があった。
「船だぜ、デっけぇ」
「。。。。。」
たかしは唾を飲み込み沈黙した。
「どうしたんだ、たかし」
「。。。。いよいよだなって」「俺達の大陸は魔王城から最も遠いから」
たかしは拳を合わせて、ニカっと笑った。
「やっと始まるって感じだぜ」
「そうだな」
そして俺達は船に乗った。冒険はまだまだ終わらない。
楽しいことも嬉しいこともいっぱいある。
それは逆に。
辛いことも、苦しいこともきっとあるってことだ。
でも俺は後悔はしない。
ここは異世界でRPGで俺の居場所だから。
魔王を倒す意思が強くなった気がした。
。。。。。。。
ところで____
誰が運転すんだよ____?