扉を開こう
「見て、あそこに人がいる」
カナの指した先に人がいた。
「お前らも入ったのか」
男は俺達に話しかける。
「どうゆうこと」
「お前らあの魔法石に触れたろ」
「今、俺らはその魔法石の中にいるんだよ」
「あれは魔法石を真似た魔族の罠だ」
本当に魔法石の中だったとは。
「閉じ込められたってことね」
「脱出方法はないの」
「う〜む」
男は少し悩んだあと口を開いた。
「あるにはある。。。が無いのと一緒だ」
「それって何」
「魔法石に住む悪魔を倒すことが脱出方法だからだ」
「だが、そいつはとんでもなく強い、村の人間なんか全員殺された」
全員、人がいないのはそーゆーことだったのか。
「そう、そんなに強いなら」
カナは俺の方を向く。
「倒しがいがあるわね」
「まっ、魔王を倒す俺にとっちゃなんてこたぁないね」
悪魔が強いって?
かかってこいよ俺の必殺技の餌食にしてやるぜ。
俺は剣を取り出す。剣は一層輝く。
あーそうだ。
俺は半目で剣を見る。
そーいやこれ、あのケチンボ王の剣だったな。こいつ割と丈夫だよな。
大事なとこで壊れないといいが。
俺は不安を抱えて剣を戻した。
《ほらさっさと倒しにいったいった》
ふと王様の言葉を思い出した。俺は少しムカついた。
「威勢は最初だけさ」
「あの姿を見れば諦めるさ」
「悪魔は最奥にいる」
「んじゃあ行ってくるわ」
「。。。。」「死ぬなよ」
俺達は洞窟の奥に進む。
の前に、俺は緑の水晶を探す。 あれ、どこにもない。
水晶ってのはステージに一個はありそうなもんだが、奥にあるのか。
____
空間が白い光に包まれる。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「氷結クラブが出現」
水色の大きなカニだ。右腕の鋏は大きくゴツゴツしている。
見た感じ、あの腕がヤツの武器だろう。
敵の武器は分かっているんだ俺ができることは。
俺は右腕に向かって斬りかかる。
バキィィン
剣が割れた、鋏に掴まれてしまった。
あっ終わった。
剣メインの俺が剣を持たないなんて。
カナごめん、俺はお荷物だ。
でもさ。
もとあと言えば、こんな剣で魔王を退治させようとする王が悪いだろ。
何がお荷物だ、誰が終わっただ。
つーか攻撃力は1しか変わらねぇよ!
俺は戦闘画面を開き3回攻撃を選択した。
「おら!食らいやがれ!」
50ダメージを与えた。
全然ダメージが入らねぇな。
敵の防御力は高い。
「ファイア」
カナの剣先に炎の球が収束した。
放たれた炎は氷結クラブに命中した。
500ダメージ与えた。
あいつ、魔法防御はそんなに高くないみたいだ。
俺は魔法画面を開く。
ファイアを選択。。。嘘だろ!
俺の目の前に大きな鋏があった。あの鋏、巨大化してやがる。
ガチンと鋏は閉じた。
あっぶねぇ。
選択で前が見えてなかった。カナがいなきゃ潰されていた。
カナは俺を抱え飛び上がる。
氷結クラブはこちらを見ている。
カタカタカタ___
うわ、きも。
氷結クラブは壁を登った。無駄に速いのが気持ち悪さを引き立てる。
氷結クラブは洞窟の真上で止まり落下する。
右腕の鋏が巨大化する。
今度は上からだ。
鋏は先程より大きくなり、かつ横に広く伸びた。
逃がす気はないようだ。
俺は選択していたファイアを唱えた。
すると鋏にヒビが入った。
あともう一押しだ。
カナはすかさずランスを鋏に突きつける。
氷結クラブの鋏は砕け、800ダメージを受けた。
カナの魔法で傷一つ無かった鋏が俺の魔法なんかでヒビが入った。
それに加え、ランスもしっかりダメージが入ってる。
こいつの鋏、形を自在に変える代わりに防御力が落ちてるんだ。
ひとまず、こいつの武器は無くなった。あとは倒すだけだ。
俺はファイアを唱える。カナも同時にファイアを唱える。
「「ファイア」」
放たれた二つの球は合体し、大きな炎を形成する。
強い爆発が起きた。
レベルが上った。
カナのレベルは20になった。
____
この洞窟は明らかに黒森のレベルを上回っている。
RPGとしてそりゃそうなのだが。
もし、あのカニの扱いが黒森でのスライムなら。。。
ミノタウロスレベルには勝てないだろうな。
洞窟は迷路のように入り組んでいる。
俺達の目の前には分かれ道がある。
こういう時、みんなはどうする?
俺はこうする。
「どれにしようかな天の神様の...」
「何やってんのよ」
「え?どれにしようかなだけd」
「必要ないわよ」
カナの言っていることが分からない、普通二択は。。。あーそういう。。。
カナは棒を落として決めたいのか。
「悪魔の魔力を追えばいいんだから」
「魔力を追う?」
「そう魔力を追うの、悪魔のオーラはダダ漏れだからね」
「もしかして、見えてないの?」
「もちろん!全然見えないね」
カナは少し考えた。
「おかしいわね、魔法が使えるなら見えるはずなんだけど」
。。。。うん。
俺は画面操作だし、熟練した目なんか持ってるわけない。
「ここは右よ、さっきのじゃ左に行くとこだったわ」
____
この道狭いな。
洞窟は広い道もあればギチギチに狭い道もある。
「ふぅ、出れた」
狭い道を出ることが出来た。潰れるかと思ったぜ。
正直あれは閉所恐怖症とか関係ない。
ここは広くていい。
洞窟なのに空気が美味い気がする。
みんなもやってみてほしい、数秒感だけでも出た時の開放感はたまらない。
やっぱ真似しないでくれ。
「ここ、やけに広いわね」
「そうだな、広くてここちいいぜ」
「ここが悪魔のいる場所だったり。。。いや、まだ奥か」
カナはなんか警戒しているが、ここはただ広いだけ。
俺は体を下ろし、休憩することにした。
「ちょっと、こんな所で」
「大丈夫だって、こんなに広いんだし敵が来れば分かるだ。。。ろ」
その時、俺の真横を斧が飛んできた。
「。。。。え?」
向こうから足音が聞こえてきた。
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「ミノタウロスマスターが出現」
黒森のとは明らかに別格だ。
青い角を生やし、銀色に輝く鋼のような肉体、血塗られたような赤黒い目。
右手に大きな斧を携えている。
ミノタウロスマスターが左腕を伸ばす。
俺の真横の斧はミノタウロスマスターの左手に帰ってくる。
ソーのスOームブレイカーかよ。
カナはスパークを唱える。
ランスを空にかざし剣先には黄色いエネルギーが収束する。
「魔力を蓄える時間を稼いでくれ」
「りょーかい!」
俺はミノタウロスマスターに向かって走り出した。
ミノタウロスマスターは左手の斧を投げ飛ばす。
斧は高速で回転し、俺に向かってきた。
投げて来やがったな!その斧奪ってやる。
俺はタイミングを見計らい柄に手を伸ばした。
「取ったー!あっ、うげぇ!」
斧を掴んだ瞬間、俺の体は斧と共に吹っ飛んだ。
俺は350ダメージを受けた。
だが、取ったぜこの斧。
俺はセレクト画面から斧を装備した。
攻撃力が20上がった。
ちゃんと強いじゃん、まともな武器はこれが初だ。
ミノタウロスマスターは伸ばそうとした左腕を下ろす。
なんだよ、もう俺のだぜ。
ミノタウロスマスターは無言で直立し、白い息を吐く。
。。。
何をしている。
ミノタウロスマスターは直立したまま動かない。
「もう溜まったぞ」
カナのスパークが溜まったようだ。
「ああ、やってくれ」
「最大火力だ!」
カナはミノタウロスマスターに剣先を向け、高エネルギーを放った。
「スパーク」
高密度のエネルギーはミノタウロスマスターに向かう。
。。。。。
ミノタウロスマスターは直立したまま動かない。
スパークは直撃した。
全く効いていない。
それにこいつ、なぜ動かない。
何かを待っているのか。
俺は辺りを見渡した後、ミノタウロスマスターに近づいた。
ミノタウロスマスターは白い息を吐いた。
俺は更に近づく。
また白い息を吐く。尻尾が跳ねた気がした。
まさか。
「おい、何して」
「いいんだよカナはそこで何もするな」
俺はミノタウロスマスターの数歩手前まで近づく。
ミノタウロスマスターは小さく笑い、斧の柄尻を地面に数回叩きつけた。
ミノタウロスマスターは構えた。
こいつは俺と一騎打ちで戦いたいんだ。
だから俺から斧を取るのをやめて、待っていてくれたんだ。
俺は戦闘画面を開き、構えた。
。。。。。
俺は5回攻撃を選択した。瞬間的に俺はミノタウロスマスターの速度を上回った。
1、2、3。。。!!
4発目以降は防がれた、ミノタウロスマスターに700ダメージ与えた。
ミノタウロスマスターは俺の攻撃の終わりに斬り込んだ。
880ダメージ食らった。
!!
目の前にはミノタウロスマスターの足が見えた。
俺は蹴り上げられ、壁にぶつかった。
衝撃は洞窟を揺らす。
500ダメージ受けた。
ミノタウロスマスターはさらに斧を投げつける。
「このっ!」
俺は斧でとっさに防いだ。
重い。。。化物すぎんだろ。
俺は端まで吹っ飛んだ。
ミノタウロスマスターが右腕を伸ばす。。。
その時を待っていた!
俺は5回攻撃を再び選択した。
ミノタウロスマスターは防御に移った。斧は途中で静止した。
ミノタウロスマスターに980ダメージを与えた。
このまま、いける!
俺は斧を振り下ろし、ミノタウロスマスターにトドメの攻撃を放った。
___!!
瞬間、俺の攻撃より速くミノタウロスマスターの拳が俺を襲った。
俺は端まで吹っ飛んだ。
俺は1000ダメージを受けた。
ダメージが高すぎる。このままじゃあと一回食らえばやられる。
俺はセレクト画面を開きスーパーポーションを選択した。
こいつは黒森のモンスターから手に入れた貴重なポーションだ。
数少ないアイテムの内のとびきりレアなポーションだ。
俺はスーパーポーションを飲み干した。
これ、めっちゃ美味っ!
HPが1500回復した。
HPに余裕はできた、だがこれもジリ貧。
やつの攻撃をどうにかして強力な一撃を放たないと。
ミノタウロスマスターは右腕を伸ばした。
斧は引き寄せられ、右手に戻る。
ミノタウロスマスターはずしりと俺に近づく。
後はない、俺は戦闘画面を開き5回攻撃を選択した。
「これで終わらせる」
俺はミノタウロスマスターに向かって駆け出した。
当たれ!!
俺の斧はミノタウロスマスターに向かう。
だが。。。
「___?」
右腕の感覚がない。
敵にダメージが表示されていない、バグか?
ミノタウロスマスターの右腕は上に伸びていた。
刃には真っ赤な血が滴っている。
俺は右腕を見た。
。。。。。。。。。
右腕は無い。血が垂れている。
俺の体から1000ダメージと表示された。
1000?これが?
痛い。。。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い____
今まで痛みなんて全く感じなかったのに。
「ウア"ア"ア"ア"ーーー」
くっそ。。。
痛い、立てない。
体に力が入らない、痛い怖い死ぬ。。。
ミノタウロスマスターは腕を下ろし無言で俺を直視し直立する。
「ファイア」「ファイア」
カナは魔法を唱え続ける。
ミノタウロスマスターに魔法は全て命中した。
変わらず倒れた俺を見たままで無言で直立している。
怖い、怖い、助けて、死にたくない。
ミノタウロスマスターは白い息を吐いた。その息は、ため息だった。
ミノタウロスマスターの腕が上がった。
大きな斧は血を滴らせ、俺の首を狙う。
死にたくない、痛い、怖い。
けど。。。
負けたくない!!!
絶対倒したい!
俺は戦闘画面を開いた。左手で右手が掴んでいた斧を取る。
その動きを見てミノタウロスマスターの腕は固まった。
しかし、固まったのは一瞬だけでミノタウロスマスターは腕を振り下ろした。
俺は舌で必殺技画面を開く。超大振りを選択した。
「おへはまへねぇ!! (俺は負けねぇ!!)」
空間の動きが遅くなる。技選択の仕様だ。
俺はゆっくり立ち上がる。
「はぁ、はぁ、絶対倒すぜ」
俺は斧を構えた。
空間の動きは徐々に元に戻る。
力が漲る、斧はミノタウロスマスターに向かう。
同時にミノタウロスマスターの斧は俺の体を斬り込んだ。
胴体が斬れ始める、血が大量に飛び出した。
めちゃくちゃ痛い。
俺の斧はミノタウロスマスターの腹に入った。
刃はその腹を斬ることはなかった。
だが、漲った力はミノタウロスマスターを吹き飛ばし、洞窟の壁に打ち付ける。
3500ダメージを与えた。
壁にめり込んだミノタウロスマスターは消滅した。
ミノタウロスマスターに勝利した。
レベルが上った。
俺はレベル25に上がった。
体が痛い。
もう。。。動か。。。。
「トンコロコロ!」
____
ここは。
辺りは真っ暗だ。体が軽い。
腕がある、俺。。。死んだのか。
ゆったりと体は闇に漂う。
セーブポイントに戻らないのか。
すると俺の目の前にメッセージが飛んできた。
「データの処理を行っています」
データの処理?
ここはゲームだったのか、まさか俺は、はじめから異世界になんか飛んでいなかったのか。
メッセージが続けて飛んできた。
「ダメージ補正の限界値を検出しました」
「脳の覚醒に追いつきませんでした」
なるほど、そうだったのか。
管理機能は今まで俺の痛みを抑えていてくれていたのだ。
今回の腕が無くなった時の痛みは、その許容を越えていたから発生したようだ。
それにあの1000ダメージ。
あれは別におかしくはなく、今までのダメージも相当強いものだった可能性が高い。
ただ、腕が許容の限界値を達しただけだろう。
そりゃ、そうだよな端まで飛ばされて傷一つ付かない方がおかしい。
だが、よくそんな傷で戦えたよな。。。いや違うな。
あの時の痛みは腕だけだった。
多分、HPを減らす代わりに傷を治してくれたんだと思う。
腕は処理落ちでもしたんだろう。
それにしてもここはどこなんだよ。
メッセージが飛んできた。
「ダメージ補正の限界値を引き伸ばしました」
「データの処理が完了しました」
「意識は戻ります」
すると俺の体は奥深くに沈む。
____
「ヒール!」「ヒール!」
「ヒ。。。起きた!!」
目を開けると俺は洞窟にいた。
カナは俺の体を回復してくれていた。
腕が付いている、回復のおかげみたいだ。
「良かった、死んだと思った」
カナは俺に抱きついてきた。カナは泣いていた。
「ありがとう、本当に死ぬかと思ったよ」
「でも、本当に良かった」
「あんた、ミノタウロスマスターを倒すなんて大したやつだな」
声のする方向に目をやると、最初に会った男がいた。
「お前、いつから」
「あんたらが心配でよ、ついさっき来たところだ」
「そしたら、その斧」
「まさかミノタウロスマスターを倒すとはな、もしかしたら悪魔にも勝てんじゃないか」
「勝てたって言い切れないな、あのミノタウロス、俺のとどめに躊躇していた」
「そりゃお前が認められたからだぜ、あいつモンスターのくせして騎士道を持ってやがんだ」
「お前が立ち上がることを信じて、待ってたんじゃないか」
男は俺の体に触れた。
「回復は済んでんのか、なら」
男は小さな袋から液体を取り出した。
「ほらよマジックウォーターとついでにポーションだ」
「これ、いいのか」
「いいぜ、こんな物」「悪魔倒して貰えればまた手に入る」
「俺は二日前この村に旅の途中で住まわせてもらっていたんだ」
「だが俺が来たその日、あの魔法石が突如現れたんだ」
「その魔法石は村人達を魅了させ石の中に閉じ込めた、俺もその中の一人な」
「魔族たちは魔法石に似せた石の中に入り、魅了された人間を閉じ込めて食う、賢いよな」
「その石の核となっているのが悪魔だ、石がいきなり現れたのも悪魔のせいだろう」
「そんでこの少し先にその悪魔がいる」
「お前はよく戻れたな」
「村人が戦っている間を逃げたからな、おいクズとか言うなよ俺だって助けたかったんだぜ」
心配してここまで来るやつがクズなんて誰も思わねぇよ。
「いいのか」
カナは俺の体調に気を使ってくれている。
「。。。。へっ!大丈夫だぜ!」
本当は怖いのかもしれない、けど俺は戦いたいんだ。
「俺はここでまってるぞ」
「おうよ、絶対倒すからよ」
俺達は奥へと進んだ。
____
大きな扉がある。
扉には冷気が漂っている。
この氷の洞窟も終わりを迎える、この先の悪魔を倒すことで。
やっと見つけた
扉の手前に緑色の水晶があった。
俺は緑色の水晶に手をかざす。
体が持ち上がるように軽くなり、フワっとする。
「回復しました」
「セーブしますか」
俺はセーブを選択した。
「でっけー扉だな」
「二人で押せば開くんじゃない」
「よし、開けるぞ」
扉は開いた。
悪魔と対面する。