悪魔の石
黒森に入り、俺は緑色の水晶に手をかざす。
「回復しました」
「セーブしますか」
俺はセーブを選択する。
ふぅ、ちょっと休憩。俺もたかしも。。。カナも戦い疲れている。
三人は地面に座り込んだ。
「たかし、トンコロコロ。。。私は二人を知っている」
「町だってそうだ、建物がどんなだったのか覚えてる」
「ただ。。。」
カナの調子はとても良くなっている。忘れた記憶も次々と思い出しているみたいだ。
「私は自分を思い出せないのだ」
「どういうことだ」
「長い間、私は騎士として操られていた」「記憶の中の性格と今の私は全く一致していない」
「たかし、私は昔のままか?」
「そ、そりゃあ昔より男っ気はあるが。。。。。」
「まぁ、そうだな」
たかしは下を向いた。表情が見えない。
「結構変わっちまったよ」
たかしの表情を見たカナは空を見上げる。
「私は。。。もう死んだも同然か」
空からは明るい陽の光が射す。
「なぁ、私の家族は元気か」
「おう、元気にしてると思うぜ」
「そうか。。。」
森は静かに風を伝う。
爽やかで温かい空の下。
カナは小さく微笑む。
「二人は魔王を倒しに行くんだろ」
「そうだが、それがどうした」
「それじゃ、私も行こうかな」
高まるような音楽が聞こえた気がした。
「はぁ?何言ってやがるんだ」
「お前は町で。。。」
「あの町にとって、私はもう無いはずの命」
「ならば魔王を倒しに行って失っても構わない」
「いや、家族は。。。」
「必要ない、だって元気にやってるんだろ」
たかしはポカーンと固まってしまった。
「いいんじゃね着いてきても」
俺は軽くたかしに言ってやった。
気にすることはないと思うぜ、それに楽しそうだし!
「でもよぉ」
「町には戻るさ」
「おお、そうだよn」
「魔王を倒した後でな」
たかしよ、期待なんてするな。
それに強い味方になってくれるんだ、ありがたい。
「カナがいればこの先すげー助かるしな」
「。。。はぁ、分かったよ」
「そう落ち込むな、二人ともこれからはよろしくな」
愉快な音楽が流れ出す。
「メッセージが下から飛んできた」
「カナが仲間になった」
_____
カナが旅に同行することで町に戻ることはなく、黒森を抜け出すために歩き出す。
俺は歩きながらセレクト画面を開いた。
カナのレベルは19か。。。あれ?
「カナってさ、役職何」
「急だな、うーん役職かぁ」
「俺は戦士だぜ!!」
お前には聞いてない。
「一概には言えないが、私は魔法も武器も使えるしー」
「魔法剣士。。。とか?」
俺もそう思った、カナは魔法も武器戦闘もできる両刀型の魔法剣士だと。
しかし違った、カナさえも分かっていない。
カナの役職は僧侶だった。確かにステータスには回復魔法はしっかりあった。
蘇生魔法は? まだレベルが足りないだけなのか。
「カナってもしかして僧侶だったりするのか」
。。。。
二人は沈黙した。
「ないない」
同時に二人は手を振って否定した。
「どーやってカナが僧侶に見えんだよぉ」
「あっ」
「そういやお前の母さん僧侶だったな」
「そうだっけ?」
「なーんで、俺がオメェより詳しんだよ」
そうなのか。
ならカナは内に僧侶の力を秘めているってことで間違いないようだ。
セレクト画面の不具合と思ったが、そうじゃなくてホッとした。
それにしても。
そんな回復要因の役職に俺達は苦戦していたとはな、情けないぜ。
カナの魔法力と魔法防御の数値は高い、それに技も魔法も豊富だ。
ヒール ファイア スパーク リーフ 魔力剣。
必殺技はトリプルエレメント、第二戦力としてすごい優秀だ。
俺もみんなみたいに必殺技が欲しいなぁ。
俺は自分の画面を開いた。
決めての必殺、俺にもくれよー。
。。。。。。。
あっっっっっった!
俺は思わずジャンプしてしまった。
俺も異世界主人公らしい、かっこよくて最強で最高な必殺技をとうとう。
超大振り:______
いいね、いいね!使うまで分からないこの機能も悪くない。
どんな技か早く試してみたい。俺の必殺技は乞うご期待。
そうだ、たかしの乱打双拳、あれはどんな効果だったんだ。
俺はたかしの必殺技画面を開いた。
乱打双拳:10発殴る、思い切り!!
何だこれ。。。。まぁ、たかしらしいな。
_____はっ!
まさか、俺もこんな脳筋必殺とかないよな。
不思議な力とかそこら辺だよな。。。きっと。
乞うご期待。。。していいよな?
_____
「見えてきたぞ」
俺達の目の前には光り輝く大きな口があった。黒森はもうすぐ終わりを迎える。
そして、俺達は黒森を出る。
この森はきっと、はじめの一歩に過ぎない。
しかしこの一歩は俺を成長させてくれた。そんな気がする。
「なぁ、俺達」
「なんか強くなってないか」
俺と同意見の奴が一人いた。
名前はたかし。
異世界でもたかしという名前は威厳を保つ。
頼りになる俺の仲間だ。
俺も前世はトンコロコロじゃなかったんだぜ。
たかしの名前で思い出し、前世の記憶を振り返る。
俺は田中悠斗!RPGのフルダイブゲームを始めたらどうやら死んじまって
コロコロン伝説の主人公に転生したらしい。
ギャグなのかシリアスなのか、このゲームの展開に振り回されてばっかだな。
「魔王城に進むには砂漠を越えないとならない」
「準備はしっかりするべきだな、ほらあそこの村で」
たかしの指した方向には小さな村があった。
グゥゥゥ〜。。。
本命は飯目的だろ。
「そうね、回復アイテムくらいは用意しないと」
俺達は小さな村に入ることにした。
_____
村に入った。村の建物は5軒程しかない、とても小さな村だ。
「あれ?誰もいねぇ」
村人は見当たらない。もぬけの殻だ。
「なぁ、Gもってるか」
「ちょっと飯と交換してくる」
「あぁ、そうしてくれ」
俺はセレクト画面を開いた。
1050Gと表示されていた。こんなに溜まっていたのか。
俺は画面のGを押した。
すると画面からGが出てきた。
「おおっと、ちょっと多くねぇか」
Gの入った袋をたかしに渡した。
「あ、別にお前も来るなら袋は」
「気にすんなよ、Gは使うためにあんだ」
俺は村の探索でもしようかな。
____
建物の中には誰一人いない。
。。。。
なんか、俺空き巣みたいじゃないか。
RPGでは壺を割ったり、部屋を漁ったりするのは普通だが、少なくともここはゲームじゃない。
罪悪感ってのがあるぜ。
と思いつつも俺は建物を漁る。こんな俺は地獄行き。
ガチャ。
扉が開く音がした。
「別に俺は、盗んだりして。。。カナか」
扉を開けたのはカナだった。クソ、今の超情けねぇ。
「何よ今の」
「えーと」
俺は一瞬目を逸らしてしまった。
「カナこそ、この部屋になんで」
「別に、暇だし」
カナも部屋を漁りだした。俺たちゃ空き巣集団か?
「へぇ、珍しいわね」
「なんかあったのか」
カナが手にしたのは魔法石だった。
「魔法石?」
「それがどうした」
「驚かないの、これかなり珍しいのよ」
「魔法石ってのはね魔力を吸った鉱物の事で、生命に宿る魔力が相反する鉱物に付着することはそうないのよ」
「魔力が多ければ多いほど魔法石は黒く染まる、この魔法石は光だって通してない、ほら」
魔法石は漆黒だった。その黒は目が錯覚したと思うほどに黒い。
「豆粒程の大きさだって出来上がるのに100年は掛かるのよ、こんな魔法石一生拝めないわよ」
魔法石ってそんなにすごいのか。
「それ売ったらいくらになりそうだ」
やめろ俺、まじで泥棒みたいじゃんか。
「あんまり分からないけど、こんなの1000年経ったって出来ないし百億Gくらいするんじゃないかな」
うへーすげぇ、百億Gだって、だれが買えんだよそんなの。
「ちょっと持たせてくれよ」
「割ると価値は一気に無くなるから気をつけなよ」
俺は魔法石を持った。
すげぇ、宝石みたいに光っている。 光っている?
さっきまで黒かったのに。。。なんで?
「魔法石がいきなり光るなんて聞いたこともない」
「これ、本当に魔法石?」
ンフハハハ
誰かの笑い声が聞こえた。どこからだ。
「何、今の声」
「分からない、けどやばいことは分かるぜ」
ピシッ
空間が揺らぐ。建物は強い地震が襲ったかのように揺れる。
早くでないと____
_______
ここは。。。
俺とカナは確かに建物の中にいた。
だがここは。
あたりは冷え切っている。
俺は一面氷に覆われた洞窟にいた。
「あれ。。。」
「私達、建物の中にいたよね」
「ここはいったい」
そうだな、状況を整理すると、魔法石を触る→光る→笑い声→揺れる→洞窟。
「魔法石。。。」
カナは少し黙り込む。
「魔法石の中。。。」
「その可能性が高そうね」
魔法石の中?とりあえずはそうゆう事にしておこう。
「とりあえず奥に進んでみよ」
俺とカナは氷の洞窟を進むことにした。
____
一方その頃たかしは。
「これ、食っていいいよな?」
たかしは無人の飯屋にGを差し出す。
たかしは保管された肉を持ち出した。
。。。。。
「やっぱり。。。勝手に食えねぇよ」
「おーい、誰かいねぇかーー!!」
飯を求む、お腹が空いたようだ。