これってボス戦?
「お?何だこれ」
俺とたかしの前には緑色の結晶が回っていた。
「回復兼セーブポイントだよ」
「セーブ?なんだそれ」
セーブの概念は知らないようだ。
「見てろ」
俺は結晶に手をかざす。
結晶は強く光り、体が持ち上がるように軽くなった。
たかしも一緒にフワっとする。
「すげぇーぞこれ!体が軽ぃ」
下からメッセージが飛んできた。
「HPが回復しました」
「セーブしますか」
「なぁたかし、お前はこれが見えるか」
俺はメッセージを指さし、たかしに聞く。
「なんだ?結晶は見えるぞ」
やはりメッセージは俺だけしか見えないみたいだ。
俺はセーブを行い、結晶から手を放す。
____
白い光が空間を包み、軽快な音楽が流れる
戦闘が始まった。
大きな影が見えたが敵は何だ。
下からメッセージが飛んできた。
「ミノタウロスが出現」
ミノタウロスか。
俺はオープンワールドでリアルのミノタウロスを見たことがあるが、
ここまでのは見たことがなかった。
黒く鋼のような肉体、そして片手には大きな斧。
鼻から白い息を吹かせる。
「へぇ〜強そうじゃん」
たかしは指をぽきぽきと鳴らす。
たかしとの戦闘は初めてだ。
「よし、どうする」
「簡単だぜ、こういうのは」
たかしはミノタウロスに飛びかかった。
たかしは拳をぶつける。
しかしミノタウロスは斧の柄で攻撃を防いだ。
どっちも動きが素早い。
俺も黙ってちゃいられねぇ!
俺も剣を取り出しミノタウロスに攻撃する。
剣を打ち上げたがミノタウロスはまた柄で防御する。
「あぶない!」
たかしが声を掛けた時、ミノタウロスは足で俺を蹴飛ばした。
いってぇな。
55ダメージを受けた。
蹴りでこの一撃。
斧の攻撃を食らったなら。。。
ミノタウロスは斧を振り回し、俺に向かって近づく。
やばい、倒れた状態じゃまともに食らう。
「踏ん張れ、俺!」
振り下ろされた斧はたかしの背中に食い込む。
205ダメージを受けた。
ありがとう、たかし。
俺はミノタウロスの後ろに回り込み、背中に向かって斬りつける。
しかし斧は剣を突き飛ばし、また俺は吹っ飛んだ。
こいつ強いぞ。
58ダメージを受けた。
「どうすりゃ勝てる」
たかしはミノタウロスと目を合わせる。
何かあるか。
俺は戦う画面を開く。TPが溜まってる。
5回攻撃。。。やってみるか。
俺は5回攻撃を選択する。
すると体が軽くなった。それだけじゃない周りの動きも遅い。
それに立てたぞ。
ゾーンに入って動きが遅く見えるアレだと思ったが、違うらしい。
今のうちに倒すぞ。
俺はミノタウロスに向かって走り出す。
すると遅く見えた景色が元に戻る。ミノタウロスがこちらを向く。
ミノタウロスは斧で振り払おうとする。
しかし、それよりも素早く俺の体が動いた。
腕が勝手に動きだす。1、2、3、4、5!!
ミノタウロスは防御も攻撃もする暇も無く俺の攻撃を受ける。
100、108、110、102、106
レベル3とはいえ、こんなに強い威力が出るのか。
もしかしたら5回攻撃が威力を底上げしてくれたのかもしれない。
それにさっきの状態、まるで俺の行動を待っているかのようだった。
RPGのターン制のような。。。まさか。
もしかしたら、あれは強制的にターン制にする効果なのかもしれない。
ミノタウロスは消えた。ミノタウロスを倒した。
レベルが5に上がった、たかしはレベル3に上がった。
「くそっ」
たかしは背中を痛めている。
「たかし、飲め」
俺はたかしにポーションを投げた。
「さんきゅ」
たかしはポーションを一気に飲み干す。
全回復した。
「おい、これうまいぞ」
「すげぇー甘い、あの店のポーションか」
ポーションは甘いらしい、俺も飲みたかった。
そうだ、RPGではモンスターを倒すとお金を落とす。
俺はセレクト画面を開いた。
120Gだった。スライムとミノタウロスの分か。
後でポーションを買おう。
俺達は再び森を進む。
_____
「コウモリが出現した」
今度はコウモリだ。俺は剣でコウモリを攻撃する。
コウモリは一瞬で消えた。
ミノタウロスに比べコウモリは簡単に倒せた。
ミノタウロスは黒森でもかなり強かったに違いない。
「牙あり花 毒あり花が出現した」
今度は花だ、大したことはない。
「すぐにぶっ潰すぞ」
「おう」
たかしは牙あり花に向かって攻撃する。
「痛てー」
たかしの拳に花の牙が刺さる。
「こいつめ、触れると花びらから牙を出しやがる」
この花の周り、植物がしおれてないか。
毒あり花の周りの植物は毒で朽ちていた。
近づけば危ないかもな。
だが逆に言えば近づかなければ大丈夫。
だが、何か引っかかる。
メッセージは花に出現したと表示した。
俺達も急に花が現れて戦闘に入った。
仕様か?その可能性は高い。
そのとき。花がいない!どこに行った。
すると足元から音がした。
もぞもぞと土が盛り上がる。
まさか。
俺は足元から離れる。その時。
ジュワァァァ
周囲は紫がかり、植物は朽ちる。
なるほどな、この花は地面を潜り移動をしているんだ。
近づかず攻撃する方法はある。
俺は魔法を選択しファイアを放つ。手が温かい。
丸く赤い玉が手から放出される。
毒あり花はファイアによって燃えだし消滅する。
「たかし、この花は地面を潜って移動するぞ」
「何?地面だって」
たかしは俺の方に振り向く、再び花に目を向ける。
「しまった花が消えた」
たかしは周りを探る。
「下だ」
「あ?」
たかしの足元から大きな牙が飛び出す。
やばい、たかしが食われる。
「うおりゃ!」
たかしは牙に拳を放つ。剥き出しの牙は割れ、砕ける。
花は牙が砕けると同時に消滅した。
「ふぅ、花も危険だなこの森」
たかしは汗を拭った。
二人のレベルが上がった。
______
現在俺達のレベルはどちらとも15となった。
オークやスライムなど森にはまだたくさんの敵がいた。
だが、難なく森を進むことができ、レベルも上がった。
「俺達、強くなってきたよな」
「あぁそうだな」
「それに森まであとちょいだ早く抜けよーぜ」
俺達は森を進む。
ザザッ
何の音だ。
「おい」
森の茂みから女が現れた。
「見ない顔だな」
「森のものではないな」
「あんたこそなんだ」
「お前だろあの足音の正体は」
あれは足音だったのか。
たかしのやつとんでもない耳してんな。
「足音が漏れてしまったか」
「まぁいい」
「なぜこんな所にいる」
「なぜ?」
「なぜってなぁ」
たかしは俺の方を向いた。
俺に振るのかよ。まぁ嘘つく必要もないし。
「魔王を倒すためだよ」
「そう魔王を倒すからだ」
「お前らが」
女は鼻で笑い飛ばす。
「そうか、なら現実を教えてやる」
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
「人間 女が出現」
戦闘が始まった。
こいつの実力は一体どの程度だ。
女性だから正直、気が引ける。
だが倒すしかない。
俺は剣を持ち女に向かって走る。だが攻撃はあっさり避けられた。
こいつ速いぞ。
女性は華麗に動く。
「なにー?」
たかしの攻撃も綺麗に避けられる。
「ファイア」
女は魔法を唱える。女の持つランスから炎が放たれる。
俺のより強力な炎だ。
それに___!
弾速も速い。
避けた玉の方向を見る。とんでもない焼け跡だ。
木々は広範囲に焼け焦げている。
「リーフ」
次はリーフか、風でもでるのか。
俺は女の剣先を見る。しかし何も出ない。
ならどこから。。。ん?
渦が巻かれている。これがリーフか。
渦は強く激しく巻き上がる。こっちに向かってくる。
渦は俺に向かって走る。間に合わない!
俺は画面を開き、防御を選択した。
俺の腕は渦に当たる。なんて切れ味だ。
200ダメージを受けた。
渦は消えた。腕だけでこんなに食らうなんて。
森の中でも一際強い。
まさか、これってボス戦?
「こいつ魔法ばっかだな」「近接は苦手と見た」
たかしは女に向かって走り出す。
「まて、たかし」「近接が苦手なら普通、魔法書とかを持っているはずだ」
「あったしかに」
女はたかしの攻撃をランスで受け流し、たかしの腹部を突き刺した。
400ダメージを受けた。
だめだ、近接も遠距離も強い。
とんでもない強さ、ボス戦で間違いないな。
さてどうするか。
「近づかないのならこっちから攻めるぞ」
女は俺に攻撃を仕掛ける。
俺は戦闘の画面を開き、5回攻撃を選択する
周囲の動きは遅くなる、女も例外ではない。
腕は吸い付くように女に向かう。
1、2、3、4、5
周囲の空間は元に戻る。
女は俺の攻撃に反応しきれずに攻撃を受ける。
だが、初撃を避けたぞ、どんだけ速いんだ。
女は685ダメージを受けた。
女は俺から距離をとる、警戒したな。
しかし、あの様子じゃまだまだ攻撃は足りない。
もっとダメージを与えないと。
「(あいつの攻撃、見えなかった)」
「(実力を隠していたのか?)」
たかしの技は使えるのか。俺はたかしの技を開く。
この会心拳、使えそうだ。俺は画面の会心拳を押した。
「てりゃ」
たかしは女に攻撃する。
「おっ当たった」
女は300ダメージを受けた。
そうか、たかも技を使用したことで速度が上がったのか。
「(こいつもだ)」
「(やつら、いきなり早くなった)」
「全力を出すべきとみた」
女はランスを空にかざし、魔法を唱える。
「スパーク」
剣先に黄色いエネルギーが収束する。
「喰らえ」
剣先を俺達に向ける。黄色いエネルギーは膨張し炸裂した。
体はエネルギーに包まれる。
見えない、剣先を向けた途端には攻撃を食らっていた。
二人は800ダメージを受けた。
これを数発打たれれば、確実に死ぬ!
女はランスを空にかざし、魔法を唱える。
俺は戦闘の画面を開き、残りTPを消費した。
3回攻撃を選択。たかしにも同様3回攻撃を選択。
「(詠唱が間に合わない)」
女は魔法を唱えるのをやめた。
「(予測すれば避けられる)」
女は俺の攻撃を素早く回避する。
女は212ダメージを受けた。
「(クソ、やはり速い)」
1発は当てられた。
怯んだ隙にたかしの攻撃が炸裂する。
600、610、580
「グワーッ」
なんだ今の威力。
俺は戦闘画面からたかしの技を見る。
説明の無かった会心拳に文章が表示される。
会心拳:攻撃時、数秒間クリティカル発動率が100%になる。
とんでもないスキルだ。
これがあれば大抵の敵は圧倒できる。
するとメッセージが下から飛んできた。
レベルが上った。トンコロコロは17に上がった。たかしは17に上がった。
俺達は勝ったようだ。
この戦いのMVPはたかしだな。
女は起き上がった。
戦闘は終了している、もう敵意は無いのだろう。
「見事」
「ここまで強いとは」
「そりゃ、どうも」
「そんじゃ、聞かせてもらうけどよ〜」
「お前はここで何してる」
「ま、まず名前から」
女にたかしは問答を始める。
「私の名前はカナ」
。。。。。
「カナ?」「!」
たかしは一瞬言葉を詰まらせた。
「カナだって。。。」
「5年前、私は森の主様に助けられ」
「。。。といっても、その前の記憶はあんまりないが」
「それから私は森の見回りをしている」
「カナ!」「俺だ、たかしだ覚えてないか」
「さぁ、たかしなんぞ。。。!」
カナは目を見開き、頭を抱えだす。
「あっ、頭がぁ」
「「カナよそれ以上考えるな」」
「。。。。」
「誰だ!!」
どこから声がしたんだ。まるで森が話したかのように声は周囲に響く。
カナはその声を聞いた途端、固まった。
「私は主様の配下」
「「そうだ、カナよ私の元へ」
カナは森の奥へ歩き出した。
「カナ!!」
「追いかけるぞ」
俺達はカナが進んだ方向に向かう。
一体、主とは。