火焔鳥
霧がかった夜____
俺達は妲己を倒した。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
確かなのは___朝から夜までここにいたことだ。
しかし、不思議なことに誰も眠気も疲れもなかった。
始めから戦闘がなかったかのように____
「えーと、どうしたい?」
「ん?何が。。。」
「もう夜だしさ、一旦休憩したり」
「おりゃ〜大丈夫かな」
「私も」
「えと、、私も。。。」
見る感じ、みんな元気そうだった。
理由はよくわからない。
勿論、ステータス画面を開けばみんなHPは減ってるし、MPも減っている。
きっと、妲己の持つ幻が感覚に影響したからこうなっているんだと思う。多分。。。
疲れていないってことだしっ、
秋の木に向かうことにした。
あと、レベルが上がってた。
俺、たかし、カナ、アビス 4人ともレベル58になっていた。
_______
地面は干からび黒く朽ち果てており、辺りには閉じ込めるように囲う君臨する大きな岩々がある。
一縷の望みも与えないようなその島は更に夜に包まれることで絶望を与えた。
霧に乱反射した微かな月の光が、小さな見せかけの希望となり一層暗黒の恐怖を煽った。
それでも、4人なら怖くなかった____
騒がしく、喧しく、五月蝿くて____寂しさも恐怖も吹っ飛んだ。
特にカナの灯した炎があったお陰だが。。。それは一旦置いておこう。
「なんか、今日いい夜ですよね」
「そうだな、こんな夜なら星空とか。。。」
霧で周囲は曇っていた、星空が見えることはなかった。
「いや〜、黒森以上かもなこれ」
たかしは頭の後ろで手を組んで呑気に口を開けながら周囲の闇を見渡した。
「マジで暗いよな」
「それに寒気もして。。。。。。。
なあ、夜明けってこんなに早いんだな、それにめっちゃ暑いし」
「いや、違うみたいだぜ」
4人は秋の木に到着した。
そこには聳え立つ紅葉を纏う大木があり、
その周囲は落ち葉が広がり干からびた地面を包み隠していた。
大木の更に後ろには巨大な火山があり、ゴボゴボと沸騰したような音が放たれていた。
そして、大木の真下に赤い短髪の女性がこちらを見ながら立っていた。
女性は緑を基調した短い袖の服を着て、ダボダボしたズボンを履いていた。
中華要素を5割取り入れたようなイメージの服装だった。
そんなことよりも最も特徴があったのは、彼女から溢れ出す熱気と発光だった。
発光は全てを包む暗闇の夜が全てを照らす明るい朝と成り果ててしまう程で、
熱気は太陽を思わせるほどの日差しの暑さを放っていた。
「ようこそ、人間」
「こっちに来な」
俺達は言う通りに彼女の所に進んだ。
途中、設置されていた緑色の結晶に俺は手をかざした。
体が持ち上がるように軽くなり、フワっとする。
メッセージが下から飛んできた。
「回復しました」
「セーブしますか」
俺はセーブを選択した。
「話には聞いてるよ」
「白虎と玄武を倒したんだって?」
「うん、お前は朱雀であってるよな」
「あってるよ___」
「は?」
突如、朱雀は拳を構えだした。
「言っとくけど、これからするのは仇討ちだ」
「俺が君たちに挑戦する」
その言葉の意味は単純明快だった。
全員殺す____そんだけ。
「勝負。。。」
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
メッセージが下から飛んできた。
「朱雀が出現」
朱雀は瞬時に飛び出し、俺の腹部に手を押し出した。
「熱砲」
朱雀の手に込められた魔力はバチバチと轟きだした。
そして、強い衝撃音と爆発を発生させた。
5500ダメージ受けた。
爆発で体は吹っ飛び地面に叩きつけられた。
「おい、試し撃ちだぞ」
「本気でやらせてくれ。。。」
本気じゃないって。。。
今のでほぼ半分HP持ってかれたんだけど。
四獣には各々得意分野がある。
白虎は速度、玄武は防御___
そして朱雀の得意とするのは攻撃力である。
弱いな。。。
朱雀は拳を放ってきたたかしを逆に押し返し、
腕を弾いた隙に瞬時に腹部に打ち込んでたかしを吹き飛ばした。
俺が拳でここまで。。。。
6900ダメージ受けた。
「あいつら、本当に負けたんだよな。。。」
「弱すぎるぞ貴様ら」
朱雀は不機嫌になり悪態をついた。
「精霊レインアルテ」
アビスは全身に魔力を立ち込めて精霊を召喚した。
精霊。。。魔法か。
背後に精霊が現れると、魔力を水に変換して強い圧力で朱雀に向かって進行した。
7000ダメージ与えた。
水は朱雀を引き裂き体を押しつぶしダメージを与えた。
「水はてんでダメな、体が耐性じゃない」
朱雀は手を胸に当てて、目を瞑る。
その時、ボワッと大きな音が鳴り朱雀の発光が更に強くなった。
「ン____!」
ドズチッ____!!!
強い衝撃音と鈍い音が重なってできた、歪な音が広がった。
11000ダメージ受けた。
音の先にはアビスの脇腹を蹴り出した朱雀がいた。
認識した矢先、横にアビスは飛び出し岩に打ち付けられた。
「アビス!」
反応は無い_____体がくたびれて全く動いていなかった。
「死んだよ。。。」
朱雀は無表情でアビスの方を向いた。
「確実に____グッ」
その時、朱雀は胸を抑え前かがみで苦しみだした。
それと同時に朱雀から放たれた発光が急激に小さく弱くなった。
一同はアビスによる焦りといきなり苦しんだ朱雀の姿に動けなくなっていた。
なんだ____
攻撃した朱雀がなんで苦しんでんだよ。
「フーーッ、スゥーーー〜〜〜」
乱れた呼吸を深呼吸で上書きし、歯を食いしばりながら体を上げて目を瞑った。
ボボボッ_____!!!
急激に大きな発光が発生した。
ゆっくりと目を開いて、苦しんでた様子がまるで無かったかのように落ち着いて冷静になった。
光?反動か。。。
俺は、今の動きの意味を読み解こうと考えた。
だが、一向に答えは出なかった。
剣に刀に拳____
朱雀は静かに呟いて、小さくため息を吐いた。
「もう貴様らで俺は倒せん」
「はあ?だとぉ」
たかしは顔を力ませて、食い気味に言葉を吐いた。
「いやな、分かるだろ?お前も戦って。。。」
「____。。。。」
言われずとも分かっていた。
たかしの実力はたしかに朱雀には届かない。
「諦めて死ねよ____」
朱雀は軽蔑の表情で一笑に付した。
特にその感情は食い気味で来たたかしに向けられていた。
「。。。。。」
開始早々、みんな圧倒されてる。
俺がなんとかしなきゃな。。。
「なに言葉詰まってんだよたかし」
俺はたかしの肩を叩き笑った。
「あーっと、その脅し俺らに意味ねぇんだわ」
「脅しじゃないが。。。」
「俺達は勝つんだよ」
朱雀は呆れを顔に出して再びため息を吐いた。
人間は傲慢、それでいて臆病____
くだらない。。。。。
嘗て、この大陸は魔族を除いて生物が生きれる環境を持たなかった。
なぜなら、神聖なる四獣のためだけの聖域で神は生物の侵入を許さなかったからだ。
それでも尚、人間は土地を求め侵略、開拓をしようとした。
ある時代では何万の人間が争う戦国の時代が。
ある時代では何万の人間が四獣の力を狙って襲う時代が。
その度に俺達は人間を殲滅した。
傲慢なクセに手前、ひとり残らず臆病に命を惜した。
愚かで脆く弱い生き物
__________
「これで5千匹目かな」
血で汚れた白虎は尻尾を揺らしながら死体の山を歩いた。
「とりあえず一番は____」
「競っているのではないぞ、白虎。。。」
大きな甲羅から煙を放つ玄武が現れた。
「堅くなってもいい事ないよ玄武」
「朱雀なんて人間の姿になって戦ってるよほら、笑えるー」
やはり分からなかった_____
この姿になれば、同じ景色になれば、人間の心が分かると思ったが。
「そうだ、青龍はどこ行った?」
「私が知ってるわけないだろう。。。」
「え〜、勝負したかったのにな」
「場所は知らぬが、私の2万は越えたと思うぞ。。。」
「うげぇ、注意したクセに玄武も数えてんじゃん」
_______
そして400年前____
俺達は負け、この大地に力を与えた。
争いは止み、平和な国が出来上がったそうだが。。。
俺は知っている、人間は内に欲望を飼っている。
愚かで傲慢で邪悪で強欲で____
だから俺は人間が嫌いだ。
そして今、俺の目の前で傲慢を吐いた。
あの時、負けた時どんな気分だったか。
覚えていないがきっと、虫唾が走ったろう。
朱雀はドロドロとした炎を掌に纏った。
「勝つ。。。?」
嘯くな。。。
「傲慢がすぎるぞ人間」
「あの息切れで期待したなら諦めろ」
「関係ねーよ、だから勝つっての」
今までもそうだが、勝つ根拠がなくとも確信はあるんだぜ。
この異世界は元はゲームなんだ____
敵はストーリーの進行に合わせて強くなる。
すなわち、俺達に合わせて敵は強くなっているってこと。
なら、強く見えても俺達とあいつの強さはほぼ互角。きっと倒す方法があるんだ。
もし仮に対象レベル70とかにしてみろ、魔王に会う前にレベルマックスだぜ?
さすがにレベル調整はしてるだろ、そこまでクソゲーじゃないよな?
ゲームって知ってるからこそ、どんな状況も挫折せず楽観できる。
圧倒されているみんなをどうにかできるのは俺しかいない。
俺が見せてやるんだ。
みんなに勝てるって確信を。
「んじゃ、攻略といこうか」




