霧を越えて
アビスは魔法を唱える。
「精霊ウィンドレイブ」
背後から精霊が現れた。
精霊は持っている袋を玄武に向けて風を放出した。
削ぎ払う風は玄武に向かう。
「「天地の盾」」
玄武の体は凍てついた。
完全防御体勢だ。
560ダメージ与えた。
?????
馬鹿な。。。
玄武の頭は困惑した。
今までこんな事があったか?
私の天地の盾を超えてきた。。。!!
威力は小さいがそれでも私の防御を超えてきた。
馬鹿な。。。
ありえん。。。
「ダークハートワルツ」
また来る。。。
アビスの手から紫色の魔力が発生した。
魔力は広範囲に広がり玄武へと向かう。
魔力は玄武を包んだ。
56ダメージ与えた。
まただ。。。
超えてきている、私の力を圧倒している。。。
メッセージが下から飛んできた。
「玄武は獄炎状態になった」
1000ダメージ与えた。
ただし、メッセージは誰にも見えていなかった。
そして獄炎状態は解除された。
体が凍る。。。
「「天地の盾。。。解除」」
「「名は何という。。。」」
「ふぇ?」
「うぇ〜っと。。。アビスです」
「「アビス、お前の魔力は異常だ。。。」」
「「私の知る限りその魔力量を超える者は青龍と魔王しかいない」」
「「人間でその魔力量。。。」」
「「面白い。。。」」
「そんな。。。滅相もありません」
少し照れた。
「「破滅の甲羅」」
玄武の甲羅に赤黒い炎が発生した。
甲羅の六角形の数枚が飛び出し炎を纏ってミサイルのように襲ってきた。
「精霊レインアルテ」
アビスの背後に水生生物のような精霊が現れた。
精霊は体から溢れるアビスの魔力を水に変換され、勢い良く周囲に流れ出す。
飛び出した甲羅は水に包まれ、威力を失くして流された。
そして、迫る水は霧を押し出し玄武を攻撃する。
8500ダメージ与えた。
なんて火力。。。
面白い。。。
玄武は甲羅の穴から煙を噴出させた。
煙はとぐろを巻いて蛇を思わせた。
「「雲蛇」」
雲蛇は玄武の体に入り込み、姿を消す。
なにをやったんでしょう。。。
アビスは玄武に向けて手を伸ばし魔法を構えている。
瞬間、背後から雲蛇が襲う。
後ろ!
振り向いて雲蛇に向かって手を伸ばす。
だが間に合わず攻撃を食らった。
1800ダメージ受けた。
「うぅぅ。。。」
「アークシャインボムズ」
雲蛇に噛まれながらもアビスは魔法を放つ。
雲蛇の体の中に複数の大きな魔力の球が発生する。
魔力の球は爆発を起こし雲蛇を破裂させた。
玄武の体が紅く光りだす。
「「爆熱甲羅塵」」
アビスが雲蛇を攻撃している間に技を放つ。
そして光が強くなるとともに爆発を起こした。
アビスは爆発に巻き込まれた。
3200ダメージ受けた。
まだだ、もっとだ。。。
より出力を、そのためには。。。
「ミナヒール」
アビスは自身に手を当てた。
体が癒され暖かくなる。
HPが5000回復した。
「「旧約聖海」」
一瞬だけ天地の盾を発生させた直後、煙を噴き出した。
冷気を吸収した煙は蛇を形成しアビスに向かって放たれた。
2000ダメージ受けた。
アビスの体は凍りつき動けなくなった。
「動けな。。。い」
アビスの火力を打ち破る最高最強の攻撃。。。
玄武は煙を噴出させる。
蛇は形成され膨らみ続ける。
そして___
「「グゥ〜」」
玄武から魔力が放たれる。
玄武は魔力操作を得意としていない。
が、それでも四獣__その魔力量は十分高く、操作も魔法使い以上である。
玄武の魔力は蛇と絡み合い、一つとなる。
アビスは氷を魔力で溶かしている。
う〜ん、全然溶けないぃぃ___
魔力を全身に纏った蛇は紅く染まりだし、禍々しいオーラを放つ。
「「熾天蛇」」
「溶けた!」
「ふぇ!この魔力。。。」
私もなんとかしないと。。。
アビスは魔法書を手にかざし魔力を放つ。
____!!
感じる、魔神さんの気配___
この魔力ならば。。。
「「さあ全てを終わらせろ熾天蛇。。。」」
周りの霧さえも紅く染まっている、熾天蛇はアビスを睨み飛びかかる。
「応えて!」
「魔神炎帝」
アビスの声が響く。
紅く染まる霧に続き灼熱の赤い光が周囲を照らし始める。
背後から、巨大な炎が轟音とともに渦を巻いて立ち上がった。
渦の中から赤い精霊が現れた。
「「なっ。。。」」
熾天蛇はアビスを襲う、しかしそれを掴み魔神炎帝は抑え込む。
抑え込んだ腕は熾天蛇の頭を強く押し込んだ。
_____ッ!!
熾天蛇は悲鳴を上げた。
声にもならない潰れた喉からでた悲鳴が。
魔神炎帝の手は業炎で熾天蛇の頭をゆっくり溶かす。
「「馬鹿な、いいや、殺るんだ熾天蛇。。。」」
。。。。。。
玄武の望みは叶わなかった。
魔神炎帝はその拳を熾天蛇の体に何度も打ち付けた。
熾天蛇はもう間に合わない、体は溶けて崩れ落ちる。
____熾天蛇は消滅した。
そして魔神炎帝は次に玄武に向かって手を伸ばした。
「「アビスよ、見事だ。。。」」
手からは灼熱の炎が溢れ玄武を包む。
玄武は消滅した。
。。。。。
アビスは玄武の一片を倒した。
少し霧が晴れだした。
_______
ハァ、、、ハァ、、、
「「いつまで逃げる。。。」」
霧をかき分けながら、たかしは必死に逃げ続けていた。
傷口からは血が滴り落ち、地面に赤い跡を残していく。
それをゆっくりと辿って近づく玄武___
霧は一層濃くなる。。。
「「たかし、お前の技はもう把握している。。。」」
「ハァ、、へへ、何を把握したって!」
「俺はなぁ、、ハァ、、遠くからでも、」
「攻撃できるんだぜ!」
「「ふん、嘘は好かんな。。。」」
玄武は甲羅の穴から煙を吹かす。
煙から大きな蛇が形成される。
「「雲蛇」」
玄武の体から蒸気が発生する。
「「修蛇」」
蒸気を吸収し更に大きくなる蛇。
蛇は高温を纏いたかしに向かって飛び出した。
「こいつ!」
「会心拳」
たかしは修蛇の頭に拳を放つ。
拳はオーラを纏い強化される、クリティカル確定状態だ。
「「ほう、まだ戦れるではないか。。。」」
玄武の近づく足は速くなる。
「食らえ!空拳」
玄武に向けてたかしは脚を蹴り上げる。
そして飛び込む___
1700ダメージ与えた。
なっ!遠距離の攻撃を。。。
たかしの攻撃は見えなかった。
一瞬にして放たれた攻撃___
それは。。。
玄武は下を見る。
靴。。。
たかしは蹴り上げる時、靴を飛ばしたのだ。
その靴は会心の一撃を玄武に与えたのだ。
「ッ!!」
たかしは蹴り上げと同時に体を崩し、倒れた。
体が痛ぇ、、、這いつくばることしかできねぇ。。。
たかしは体を引きずって霧の中へと進む。
「「今度こそ、成す術無し。。。」」
玄武の甲羅に炎が発生する___
負けたくない____
勝ちたい_____
誰のために____
皆のために____
違う____
俺だ_____
俺のために____
一度で良い___だから!
体よ、動いてくれ!!
「「烈火煉獄甲」」
玄武の甲羅の六角形が複数に分裂する。
そして幾つもの甲羅は空に放たれた。
終わりだ。。。
放たれた数百の甲羅の破片は炎を纏い落下した。
そして___
炎はたかしに向かう。
3000ダメージ受けた。
爆発が周囲を隠す。
「「なかなか楽しめたぞ。。。」」
「「たかし。。。」」
そして玄武はその場を離れた。。。
_______
「ふぅ〜倒した倒した!」
俺は玄武の一片を倒した。
正直ギリギリの戦いだった。
俺は投げた剣と刀を持ち上げ画面にしまった。
「お?」
霧は徐々に晴れ始めた。
それと同時に、周囲の空間そのものが中央へと吸い寄せられていく。
そして____
「戻った?」
「カナ、アビス」
「ふぇ、ここは。。。」
いつの間にか霧は消え元の大木の所にいた。
「玄武は?」
大木の周りに玄武は見当たらない。
どこにいった。
「「私はここだ。。。」」
霧の散り散りは中心に集まり玄武が姿を表す。
玄武は元の巨体に戻っていた。
「「よくぞ私の一片たちを倒した。。。」」
玄武は分裂すると意識も分裂する。
それ故、玄武は倒されたことを初めて知った。
「たかしは負けたのか」
「「最後まで良くやったぞ。。。」」
「そうか、んじゃ、たかしの分まで」
俺は刀を抜き玄武に構えた。
カナもアビスも戦闘態勢だ。
「「全く、私をどこまでも楽しませてくれる。。。」」
玄武は甲羅を光らせる。
「「残る力を全て一つに。。。」」
「「神攻甲」」
光は一本の巨大な束となり、玄武の巨体に呼応するように膨れ上がる。
そして、圧倒的な輝きが一気に解き放たれた。
その輝きは三人を圧倒した。
戦意喪失_____
それが見事に当てはまった。
その輝きは莫大で強大で膨大で広大で巨大で圧巻で壮大で盛大で____
輝きに全てを奪われた。
そして、輝くその光は三人を襲う
9999ダメージ受けた。
。。。。?
光を庇った男がいた。
その男は___
「「なぜだ。。。」」
「「おかしい。。。」」
「「確かに私は。。。」」
男の後ろ姿が見えた。
知っている、俺はその背中を。。。
____たかしだ。
その光は、たかしが身を挺して庇ったおかげで、誰一人ダメージを受けずに終わった。
そして、たかしを焦がした後、光は静かに収束した。
「たかし、お前」
「へっ、流石に今のはきちぃが。。。」
「なんとかなったぜ!」
そうじゃない。
「その、お前ッ斬られた傷は」
「ん?そういやねぇな」
俺はふとセレクト画面を開いた。
そして見覚えのない技を見た。
不屈の心:一度きり不屈の心でHPが全回復する
不屈の心?レベルが上がって、いやそんな気配は無かった。
俺が知らないだけか。
画面で不屈の心は暗くなっている。
使えない証だ。
TPもMPも表示されていない。
説明通り戦闘で一回ってことなのだろう。
俺はセレクト画面を閉じた。
「「たかし、私は確かにお前を。。。」」
「うーん、気絶してたんじゃねぇ〜か?」
気絶。。。
生半可な攻撃じゃなかったはずだ。。。
「さっ、こっからは会心撃と行こうか」
たかしは拳を合わせ、力を込める。
________
「乱打双拳」
たかしは走り出し玄武に飛ぶ。
会心拳の効果は残っている。
「「無駄だ!!」」
「「天地の盾」」
玄武の体は凍りつく。
完全防御形態だ。
拳が向かう。
「オラオラオラ。。。」
無駄だ。。。
この状態の私には全て。。。
バキッ
。。。。。?
表面にヒビが入る。
バキッ、バキッ!!
ヒビは拳の数だけ広がり、止まることを知らない。
バコッ!
拳は体を貫いた。
貫いた。。。
天地の盾を。。。
体に拳の後がくっきりと残った。
その火力はアビスの与えたダメージを有に超える。
それは天地の盾で防いだ攻撃を蘇らせるに至るほどであった。
防いだ部分に拳が発生する。
ドドドッと大きな音が鳴る。
ああ。。。。。神よ。。。
神よ。。。世界は広いのですね。。。
そして_____
21000ダメージ与えた。
玄武は崩れだし、
人間の姿に戻った____