黒森
町を出て、俺はたかしと魔王討伐の旅に出た。
「なぁ、お前は何で魔王を倒しに行くんだよ」
「そんなもん単純だぜ!」
少しの間を置き、腕を前に突き出す。
「戦いたいからだ!!」
たかしの戦う理由は思った以上に単純だった。
俺はセレクト画面を開いた。
パーティの枠にはトンコロコロ、たかしと表示されていた。
役職は戦士、レベル1、ステータスの特徴は。。。
こいつ攻撃力が高いぞ。
俺のステータスはレベル3で30だが、こいつはレベル1で30だ。
MPはそんなに無いがなかなか攻撃力が高い。
レベル次第ではたかしは頼れるアタッカーになるかもしれない。
技はどうだ?
相変わらず俺の技は一つも。。。 あった。
3回攻撃 5回攻撃。他にはファイアという魔法が解放されていた。
ファイアはともかくこの回数攻撃の技、そこまで必要か?
このゲームはターン制じゃないのにどう変化するのか。
たかしはーっと。
3回攻撃 会心拳 反撃の構え 超集中。
いかにもパワー系の技だな。
ん?これは。俺はたかしの必殺技を見た。
乱打双拳?TPが高いな。
この必殺技、一体どういう効果なのか。
だがこのTPのコストじゃまだまだ使うことは無いだろうな。
TPは一般的に戦闘で攻撃したり受けたりすることで溜まるポイントのことだ。
回数攻撃はTPコストが少ないし戦闘が起きたら使ってみよう。
「おーい、何突っ立ってんだよ早く行こーぜ」
「あぁ」
たかしは数歩先で俺を待っていた。
俺はセレクト画面を閉じ、再び歩く。
町から出てまっすぐ歩いた俺達、目の前には大きな森があった。
これは。
目の前の森は俺達を誘うかのように大きな口を開けていた。
木々の隙間からは光が全く見えない。
森は深く暗く、モンスターの住処のような。
「よっしゃ!はいろうぜ」
俺はたかしと共に森へ入った。
不穏な音楽が流れ、音楽は不安を煽る
「黒森。。。」
「魔王城に向かうにはここを通る必要がある」
ここは黒森というのか。
「とはいえここは不気味だよな」
「確か〜名前も暗いから黒森とか」
黒森ってそういうこと。暗くて黒いってか?
外からだと暗かったが、中は明るく日の光が射す。とても黒森と名のつく森には見えない。
「小さい頃は大人に止められたっけ」
「カナ。。。」
カナ?誰のことだ。
メッセージが下から飛んできた。
「無視しますか」 「はい」「いいえ」
なんだ。。。これ。
メッセージは無機質に俺に問いかける。
「無視しますか」
「無視しますか」
「無視しますか」
「無視しますか」
「無視しますか」
「無視しますか」
「無視しますか」
____________
「無視しますか」
なんだ、バグか?
俺が画面に触れる手前、何回かメッセージが表示された。
この選択で何か変わるのか。
無視する必要もないな。
「たかし、カナって誰なん。。。」
!!
たかしの体は固まっていた。
それだけじゃない、風に揺れていた木々はピタリと動きを止めた。
これは一体どういうことだ。
ピコッ
メッセージが下から飛んできた。
「無視しますか」「はい」「いいえ」
押さないと進まないってことか。
俺は「いいえ」を押す。
ザザァァーー
木々のざわめきが聞こえてきた。
さっきまでの沈黙が嘘かのように音が響く。
「なぁ、カナって誰なんだ」
「あぁ、覚えてるか昔カナっつー同い年の女がいたこと」
「あいつ母親のために薬草を探しに行ったんだ」
「たった一人で。。。」
「もう5年も前の話だが未だに思い出すんだよな」
きっとモンスターに襲われたのだろう。
「もういいのか」
「。。。もう関係ないさ」
たかしは両手で顔を叩く。
「よっしゃ!!気を取り直して森を抜けようぜ」
ザザッ
「なんか音がしなかったか?」
「気のせいだろ、たかし進まないのか?」
俺達は森を進むことにした。
二人は森を進む。
メッセージが下から飛んできた。
「難易度が上がりました」