韋駄天の虎
俺は刀を抜き白虎に迫った。
刀は白虎の体に触れるその瞬間___
消えた?
白虎は目の前から消えた。
「後ろ。。。」
背中にツンと指が当たった。
振り返るとそこには誰もいなかった。
「今ので一回死んでたね」
白虎は笑って砂浜をうろうろしていた。
たかしは拳を放つ。
「今当たって。。。」
「ないよ」
白虎はたかしの背後に回っていた。
そしてたかしを蹴りで吹っ飛ばした。
790ダメージ与えた。
「スパーク」
剣先に黄色いエネルギーが収束し白虎に放たれた。
「ひら〜」
白虎はひらりとカナの放ったスパークを回避した。
「これじゃ本気で戦えないニャ〜」
期待外れかな。。。
「アークシャインボムズ」
幾つもの白いエネルギーの球が砂浜に現れた。
そしてアビスに応えてエネルギーは爆発した。
砂浜が荒れ、周囲に粉塵が舞う。
爆発は全体に広がった。
「いや〜、あんなの避けれないニャ〜」
2000ダメージ与えた。
「もう一回。。。う"ッ!」
白虎はアビスの視界から消えた。
視界に入る頃、アビスの腹に白虎の腕が深く押し込まれる。
アビスはお腹を抑え倒れた。
1000ダメージ受けた。
再び白虎は消えた。
白虎は一瞬で俺との距離を詰めて移動した。
「まだ本気になれないよ〜」
白虎は再び姿を消した。
消えては現れてを繰り返している。
全く見えない。。。
あいつにとって俺達は遊び相手に過ぎないんだ。
攻撃手段があるとすれば、さっきのアビスの広範囲攻撃、あるいはたかしの必中状態だ。
あとはこの砂浜、足跡が残る。
うまく読めば、攻撃を当てられるかもしれない。
俺は足跡を凝視した。
白虎は一秒の内に数十の足跡を砂浜に残している。
誰が当てれんだよ。
「ぴょん」
「とん」
「ニャン」
「ぴしっ!」
白虎は一瞬で4人を攻撃する。
白虎は適当に殴りダメージを与えた。
4人は1100ダメージ受けた。
アビスはまだ倒れている。
誰も攻撃を認識できなかった。
俺の頬に強い痛みがする。
まだあったぞ。
俺は戦闘画面を開き三回攻撃を選択した。
景色が遅くなる。
忘れてたよ、技を使用すると攻撃手前まで遅くなるんだった。
俺は刀を構えゆっくり動く白虎に近づく。
だが______
「あれ?そんなに速く動けるんだ」
遅い景色に似つかわしくない動きで俺の方を向いた。
「なら上げても構わないね」
白虎は俺に向かって走り出した。
この状態でもこんなに速いのか!
幸いにも目で追える速度、攻撃はできる。
忘れているかもしれないが
技を使用すると威力の底上げやオートで攻撃をサポートしてくれる。
RPG特有のターン制にする効果を持っており攻撃手前まで空間を遅くしてくれるのだ。
しかし、オートサポートが捉えられる速度には限界があり、
空間を遅くする効果にも同様に限界がある。
レベルを上げて限界値を上げろってことだが。。。
白虎は体を回転させ脇腹に向かって脚を飛ばした。
っぶな!
白虎の動きは滑らかで洗練されており、遅くなったはずの動作は目で追えなかった。
俺は反射的に刀で脚を防いだ。
蹴り出された脚は刀に当たる。
強い衝撃が腕に響き刀を落とした。
「イ"ニ"ャ!!」
白虎の脚が赤く腫れた。
400ダメージ与えた。
景色は元に戻る。
白虎は脚を抑えて片足でぴょんぴょん飛び跳ねた。
そして砂浜に転がった。
今だ、技は打てないが今ならなくとも当てられる。
俺は痺れた手で刀を取り、握り絞めた。
俺は白虎に刀を振るった。
687ダメージ与えた。
____ん?
その時、刀が当たった先には毛むくじゃらの大きな脚があった。
「「やっぱり人の姿じゃ戦いづらいな」」
目の前には白い耳を生やした獣人はいなかった。
代わりに、いたのは白い耳を生やした大きな虎だった。
白虎は真の姿になった。
天地に揺るがす轟く音楽が流れた。
「「本気で戦ってあげるよ」」
声が耳に直接届いている。
森の主と同様テレパシーで話しかけている。
先程の脚の怪我は消えていた。
姿を変えると回復するのか?
四獣。それは、精霊に次ぐ存在。
神にも等しい力を持ちながら、なお生物としての理からは逃れられない。
たとえ姿を変えようと、受けた傷は消えはしない。
白虎の真の姿に痕がなくとも、人間の姿で受けた損傷は確かに残っている。
その傷は分散されたのか、あるいは、深く静かに体の内に沈んでいる。
トンコロコロには知るすべはない。
ドンッ___
「グっ!」
白虎の前足が俺の体に飛んできた。
俺は宙に吹っ飛び、砂浜に転がった。
1200ダメージ受けた。
「リーフストーム」
カナの剣先に無数の渦が発生し、白虎に向かって放たれた。
今度は!!
無数の渦は一つ一つ不規則に白虎に向かっている。
避ける先を予測し放った攻撃、
素早い動きでさえ線で捉えれば当てられない理由はない。
白虎の中心から強い衝撃波が放たれた。
「「神攻脚」」
渦は衝撃波に飲まれ消滅した。
白虎の脚に高温の蒸気が発生した。
同時に白虎の体が震え、口から温かい息を漏らした。
白虎はカナに向き___消えた。
「消え。。。」
白虎は一瞬での目の前に現れ、カナに腕を振り下ろした。
白虎が通ったであろう軌跡に砂の嵐が舞った。
4000ダメージ受けた。
ブオンッと、舞った砂の嵐の中に不可解な音が発生した。
白虎の脚に発生した蒸気はゆっくりと消えた。
神攻脚:自身の周囲に衝撃波を放ち粉砕する技、
そして自身の脚力を強化させ音速に昇華させる。
「「音速を超える速さは疲れるんだよね」」
白虎は倒れたカナを見下ろし腕を上げた。
爪に黒い炎を纏わせる。
「魔力剣」
白虎の腕が振り下ろされるより速くカナは魔力を硬質化し白虎を攻撃した。
魔力はカナの思いに呼応して爆発した。
その衝撃は白虎の体を押し出し宙に上げた。
4500ダメージ与えた。
「会心拳」
たかしは浮いた白虎に飛びかかり拳を放った。
810ダメージ与えた。
クリティカル確定状態になった。
「こっから俺の番だぜ!」
たかしは拳を再び白虎に放った。
「「無駄だよ」」
白虎は空を蹴り、一瞬でその場から消えた。
砂浜に無数の跡が現れた。
グングンと風を切り、音を出す。
「「なっ、その速度!」」
白虎の前にたかしが現れた。
白虎の速度に合わせたかしは移動していたのだ。
たかしは超集中を行い必中状態になっていた。
そしてその拳を白虎にぶつけた。
たかしは三回攻撃を放った。
4860ダメージ与えた。
白虎は後ろに流された。
「「やるな」」
白虎は爪に黒い炎を纏わせた。
「「破滅の爪」」
そして高速でたかしに迫り振り下ろした。
対抗し、たかしも拳を放った。
10000という数字が表示された。
白虎の前足に鈍い痛みが走る。
同時にたかしの拳に亀裂が入り炎が滾った。
炎は一瞬にしてたかしの体を包む、
かと思いきや炎は焦げすら残らず即座に消えた。
そしてたかしから数字が表示された。
たかしは後ろに倒れた。
白虎に1430ダメージ与えた。
白虎は高速で移動し姿を消した。
なんとかたかしを。。。
カナは蘇生させるためにたかしの元へ向かっている。
「「天地の牙」」
瞬間、白虎は口を開け異常に伸びた牙でカナを襲った。
カナは認知することも出来ずダメージを食らった。
「「あ?」」
そう思えたが実際はカナを攻撃することは出来ず、
トンコロコロの片腕を吹っ飛ばした。
間に合った。
たかしが注意を向けたおかげで白虎の所まで行けた。
白虎の素早さはとてつもなくそれに合わせた動体視力は接近も許されない。
しかし、そのあまりにも常人離れの素早さが逆に砂を巻き上げ、
俺の姿を隠し接近を許した。
俺は3000ダメージ受けた。
右腕は吹き飛び、それと共に握っていた刀も失われた。
白虎は動揺している。
白虎はその速度に自信がある故、同様に動体視力にも自信があった。
そのため俺がそこに現れたことが不可解であった。
動揺してるな。
その隙に俺は必殺技画面を開いた。
そして超大振りの表示に俺は左腕を伸ばし選択した。
景色が遅くなる。
吹っ飛んだ腕はゆっくりと浮いている。
俺は力漲る左腕で取れた右手を掴み白虎に刀を振るった。
「「!!」」
「「破滅の。。。」」
白虎の攻撃は間に合わない。
俺の必殺技は白虎の体に命中した。
その攻撃は白虎を斬らず強く打ち付けた。
超大振りは武器の鋭さに関係なく斬れることなく強く打ち付ける攻撃である。
つまり刀の長所である切れ味が活かせないのだ。
しかし引き換えにその攻撃はどんなに大きな物でも吹っ飛ばし動かすことができる。
もちろん超大振りの逆方向から拮抗した力が放たれた場合吹っ飛ばすことは出来ない。
7020ダメージ与えた。
いいねこの力。。。青龍くんでもきついんじゃないかな。
白虎は後ろに吹っ飛び転がった。
「ハイリターン」
「スーパーヒール」
カナは手から光を発生させてたかしを蘇生させた。
俺は取れた右腕の断面と断面同士をくっつけた、
カナの魔法が注がれると徐々にくっついて再生した。
「ダークハートワルツ」
アビスはゆっくりと立ち上がり魔法を唱えた。
どうやら意識が飛んでいて、今立ち上がったようだ。
カナの手から放たれた魔力は広範囲に広がり白虎に向かった。
「「あの女、またデカいのを」
白虎はアビスに向かって走り出した。
白虎は魔力に包まれ体が熱くなった。
5000ダメージ与えた。
メッセージが下から飛んできた。
「白虎は獄炎状態になった」
獄炎によって1000ダメージ受けた。
そして獄炎は解除された。
「「天地の牙」」
白虎はダメージ覚悟でアビスに向かい天地の牙を放った。
5000ダメージ受けた。
「「噛み切るつもりだったんだけどな」」
アビスは無意識的に魔力を体に纏っている。
それは体を繋げる役割を持つため、
白虎が四肢や関節を噛み切ることは難しいのだ。
それができたのはアビスの圧倒的な魔力量によるもので基本ありえないことである。
「乱打双拳」
アビスに再び襲おうとする白虎にたかしは必殺技を放った。
10の拳が白虎に命中した。
8100ダメージ与えた。
「ミナヒール」
アビスは皆に魔力を放ちHPを5000回復させた。
「精霊ウィンドレイブ」
アビスの背後から精霊が現れた。
「「精霊、珍しいな」」
白虎は精霊に向かって飛びかかり攻撃した。
精霊は持っている袋から強烈な風を放出した。
その風は向かってくる白虎を包み込み劈いた。
6500ダメージ与えた。
「「精霊如きが。。。」」
白虎はくるっと地に着き、後ろへ下がった。
精霊は技を出し終えるとゆっくりと消えた。
。。。。!!
応えてくれるの。。。
その時アビスは感じた、魔神炎帝の気配を。
俺はカナと共にたかしとアビスの所に集まった。
「「強いよ」」
「「400年前よりも楽しい」」
「俺もこんな速い相手、人生で会ったことないぜ」
「「自信あるからね、ありがと」」
尻尾の揺れが増した気がする。
「「でもね、まだだよ」」
「「まだ足りない」」
「「もっと強さを見せてくれ」」
「いいぜ、絶対負かしてやる」
白虎は体に力を込める。
「「神攻脚」」
白虎の周囲にゆっくりと衝撃波が発生した。
衝撃波は最初の神攻脚以上に大きく広がっている。
もう時期俺達に届く。
「あの、」
「ん?」
「私に任せてくれますか」
「精霊が私に応えてくれる気がします」
アビスの閉じた本の隙間から強い光が漏れていた。
これは、必殺技か!!
俺はアビスの必殺技画面を開いた。
魔神炎帝、TPは十分に溜まっている。
俺は魔神炎帝に指を伸ばす。
だが待て、俺が選択した場合、
もともと無詠唱だったアビスが詠唱することになってしまう。
衝撃波が遅いとは言え、詠唱じゃ間に合わない。
だが必殺技が解放されていないのに使えるのか。
本当に押さなくて良いのか。。。
違う、そうじゃない。
俺はアビスを信じるんだ。
「任せるぞ」
「はい!」
衝撃波は段々と近づく。
アビスは本を開き、目を閉じてページに手を当てる。
お願い。。。応えて!
心の中でアビスは言い、
目を開けて衝撃波に向かって唱えた。
「来て!!魔神炎帝」
そして____
背後から巨大な炎が渦を巻いて発生した。
渦の中から赤い精霊が現れた。
「「魔神?」」
精霊の中でも最も上位の存在、魔神。
同じ属性にも精霊は幾つか存在し、その中で最も強い精霊または概念を作った精霊が魔神の名を冠する。
魔神は世界創生の時代を除いて基本関わることはない。
関わった場合、そのあまりにも強大な力が均衡を崩しかねないからだ。
魔神は衝撃波に向かって強大な炎を放った。
「「抑えつけられた!?」」
「「私の全力が」」
魔神の魔力は強大なためアビスの魔力でさえ完全に力を引き出すことは出来ない。
しかし全快でない白虎には十分だった。
炎は衝撃波を殺し、白虎を燃やした。
30000ダメージ与えた。
そして____
白虎は人間の姿へと戻った。




