隕石村
「負けた。。。」
闘技場には田中はいない。田中は地面に仰向けに倒れていた。
勝った。。。のか。
たかしを起こさないと。
俺は復活液を開け、液体をたかしの口に注いだ。
すると___
動いた!!
たかしの目がゆっくり開く。
「俺は。。。」
HPが半分回復した。
メッセージが下から飛んできた。
「たかしは復活した」
たかしは復活したのだ。
「よかった。。。」
「よかったって何が。。。そうだ試合は!」
たかしは起き上がり闘技場を見た。闘技場に一人の姿が見えた。
「私。。。勝ったんだよね」
それはカナだった。たかしはカナを見て事の状況を理解した。
田中は起き上がり闘技場に上がった。
「お見事、3ポイントで三人の勝利だ」
「お、じゃあパスワードを」
「もう済んだ」
田中は腕輪を操作した。
「発行はもうできる、あとは戻るだけだ」
「そっか、あとは戻るだけ」
「戻る。。。」
戻るだけ。。。あの50kmをただ戻るだけ。
俺は頭を抱えた。
「心配するな、下を見ろ」
下を見ると穴が現れていた。
まさか。。。
「帰りの穴だ」
よっしゃー!!
「さぁ強きものよ、己の力を信じ突き通せ」
レベルが上った。
俺は32に上がった。たかしは32に上がった。カナは32に上がった。
俺達は本当に田中に勝ったんだ。
「魔王の下まであと少し」「早く貰って東の大陸に行こーぜ!」
俺達はワームホールに入った。
「言い忘れたが。。。行ってしまった」
___
俺達はついに隣海移動許可証を手に入れた。
俺達は船に乗り、一直線にバリケードに向かった。
ついに東の大陸に渡れる。
それが意味するのは魔王城まであと少し、ということだ。
「ほーう」
「持っているようだな」
「ではここを渡る目的を教えろ」
「魔王を倒すために渡るんだぜ」
「なら魔王討伐書を見せな」
あーっ、これはもしかして。
「渡る理由が不十分だ、立入禁止」
追い返された。
このバリケードの門は隣海移動許可証が必要だ。
同時に渡る目的、その目的を証明する物も必要だ。
今度は魔王討伐書のようだ。
しっかし今度はどこで手に入れるか。
prrrrrrr
なんだ?着信音か。たかしの体から鳴っていた。
「ん、その服に付いてるのは」
たかしの体に小さな機械が付着していた。
俺はたかしの体についた機械を取った。
その瞬間、機械から声が出た。
「私だ。。。」
声の主は田中だった。
「三人とも追い返されたりしなかったか」
「どうしてそれを」
「なんとなくだ」
なんとなく。。。
「三人の目的は魔王を倒すことだろ」
「なら当然、魔王討伐書が必要だ」
魔王討伐書:全ての魔族、モンスターに単独で勝てると認められた者にのみ与えられる国家レベル
で審査される唯一無二の討伐書。
だが魔王を倒せる者は未だ現れていないので称号のような扱いをされている。
「魔王討伐書は出身大陸の王から貰うものだが」
「出身大陸は」
「西の。。。」
「だめだな」
田中は一瞬で否定した。
だろうな。
「田中さん、何をやってくれるんですか」
「これに関しては私では何もできん」
「え?じゃあこの電話は」
「もちろん助けるためだ」
「でも今、何もできないって」
「助言くらいはできるさ、私は君たちの役に立ちたいんだよ」
なんか性格変わった?
「方法は一つ、紙を持っている者を見つける事だ」
「それって助言になってます?」
「ああ、場所に見当があるんだ」
「それって。。。」
「隕石村だ」
「あそこは冒険者が多く集まっている」
「そこに行けばもしかしたら持ってるやつがいるかもしれない」
隕石村、中間大陸にあったな。
「私ができるのはここまでだ」
「いや、ありがとうございます」
「あと、この機械は機密保持のため10秒で爆発する。。。では」
カチッ___
針の音が鳴った。
「10秒?、え、はっ?」
爆発のカウントダウンが始まった。
俺は海に機械を投げた。
瞬間___
機械が爆発した。
「おい。。。5秒じゃねぇか」
____
隕石村のある島が見えてきた。
島の上空に大きな雲が停滞してる。
広大な岩に囲まれたその島は未来シティとはまた別の迫力があった。
島を上がるとすぐ村があった。
村には小さな建物とテントがあった。
「あんたら観光か?真っ直ぐ行くと隕石跡地が見えるぞ」
「自分がいかにちっぽけかを理解できるぜ」
村の奥には大きな岩がたくさんあった。
隕石によって地形が変わった後らしい。
「奥には行きすぎるなよ、外にはモンスターが沢山いる」
「なんでも隕石の降る環境のせいでとんでもなく凶暴で強いんだ」
ここの敵は今までの敵より強そうだ。
どんな敵がいるのか。。。まぁ目的と関係ないから行かないけど。
「なぁ魔王討伐書持ってるか」
「いや持ってないな」
たかしは周りの人に聞き回っていた。
中にはとんでもなく強そうな装備を着た人や見るからに怖そうな人もいた。
よく話しかけれるな。
「ダメだ誰も持っていない」
聞き回った結果、外にいた者は魔王討伐書を持っていなかった。
___
「最初はただの無人島だった」
「だがある日、隕石が落ちた」
「隕石には沢山の金、銀、他にも知らない素材が見つかった」
「それを狙って採掘者や冒険者はやってきた」
「いつしか隕石は3年に1回は必ず落ちるようになった」
「採掘者たちは一層増え、いつしかここを拠点に村が出来たのさ」
「で、なんだっけ?魔王討伐書?」
「あれね、冒険者やハンターがよく持っているやつね」
「魔王討伐書を持ってるやつは王が認める位には強いってことは知ってるよな?」
「確かにいるよ、現に今日見たし」
「だけど近づかねぇ方が良いぜぇ、ここに来るやつはロクでもねぇやつばっかだからな」
「強い上にイかれてるやつ、そんなのに近づいたら。。。おっかねぇぞ」
村の酒場で男は酒を飲みながら話してくれた。
それでもいるなら会うしかない。
それに___
俺は田中という会うのにすら命がけのイカれたやつを知っている。
もう慣れているさ。
「おい、あんたら」
酒場の奥から男が出てきた。
「未成年だろ、早く出てけ」
俺達は酒場を追い出された。
____
酒屋の男が言っていた持ってるやつはどこにいるのか。
外にいた者で持っていたやつはいない。
あとは、建物の中か。
村の建物やテントは民家ではなく休憩スペースに近いものであった。
採掘者たちは採取するとすぐ街で金に変えるのだが、一部例外が存在する。
採掘した石を武器に変え、それでモンスターと戦い楽しむ者。
そんな戦闘狂達は日を跨ぐため建物に住み着くそうだ。
そのため、建物の中の人は強者が多い。
建物は基本そいつらに占領されているので普通の観光客や採掘者は近寄らないようにしている。
一応な。
建物に入る前に俺は村の奥にあった緑の結晶に手をかざした。
体が持ち上がるように軽くなり、フワっとする。
メッセージが下から飛んできた。
「回復しました」
「セーブしますか」
俺はセーブを選択した。
___
「師匠ーーー!!」
「?」
建物の中に入ると叫び声が聞こえた。
「じじょおぉぉ」
「おいでがないでぇぇ」
帽子を被った女は奥の女に向かって泣き叫んでいた。
「あんたを弟子と見た覚えはないわ」
「う"ぅぅ、そんなごと。。。」
「うるさい!」
女は帽子の女を叩いた。
「おい!」
たかしが声を出した。女は反応してこちらに近づいた。
「なによ」
「暴力はよくないだろ」
舌打ちをした。苛ついているようだ。
「チッ。。。。うるさいわね」
瞬間___
女の杖から大きな球体が現れた。
球体は強力な魔力を放ち俺達を襲った。
____
「ここは。。。」
目を覚ますと知らない天井が見えた。たかしは起き上がり布団から出た。
まだ二人は眠っているようだ。
「目が覚めましたか」
帽子の女はたかしに声を掛けた。
「ここは医務室です」
「まぁ何もないですが」
医務室にしては物が全く無い。というか何も無い。
あるのは人数分の布団と部屋を照らすランタンだけだった。
「俺らに一体何があった」
「ごめんなさい」
帽子の女は深々とお辞儀をした。
「私の師匠が皆さんに魔法を」
「うぅぅ、うちこんでぇ〜」
帽子の女は涙を流していた。
どうやら魔法で俺らはやられてしまったようだ。
「本当に生きててよかった〜」
「師匠は魔王直属の護衛二人を同時に相手する実力を持っています」
「本気じゃないとはいえ、ぐすっ。。。あれは殺す威力でした」
「なぁ、なんでそんなに泣いてんだ」
「だ、だって〜」
「ところで、さっき叩かれていたけど。。。」
「師匠とはどんな関係なんだ」
「ししょーとは。。。えーと」
「魔王直属の護衛二人に狙われた所を助けてもらって。。。」
まず、こんな女の子がなんで狙われるんだよ。
たかしは腕を組み、疑問を抱いた。
「私が強くなりたいって言ったら」
「ついてこいって」
「で、ついてきて〜今」
今?ちょっと展開が早くない?
「建物の中にいた理由は」
「師匠が魔力測定をしてくれました」
「ここの石はなんでも測定できる石があるらしいので」
「でも。。。」
顔の表情が暗くなった。
「私が弱すぎて呆れたんです」
「だからそのとばっちりで皆さんが。。。」
「それは聞かないと分からないだろ」
「師匠にあって聞いてみよーぜ」
「うぇ、でもそれは」
「医務室のお礼だよ」
「この体、君が治したんでしょ」
「いやいや、そんなの」
「いいから」
「じ。。。じゃあお願いします」
俺は笑顔で答えた。あっち困っていたが。
「師匠は修行で隕石跡地に向かっていると思います」
「おう!モンスターが襲ってくるかもしれないし、行くときは俺達の後を追ってくれ」
「わかりました、ではちょっと荷物の準備をしてきます」
帽子の女は全速力で出口に向かった。
あっ、転んだ。
帽子を被った女は起き上がり建物を出た。
「さて」
俺は二人の前に立ち、深く息を吸い込んだ。
たかしの大声が建物に響いた。
____
「なるほど、俺達は死にかけてたってわけね」
「そんでお礼に聞きに行くって」
「なぁ、待つのはダメなのか」
「さっきも言ったけど師匠ってやつは相当強いらしいんだ」
「癇癪で魔法を出されたら村が壊れるかもしれないだろ」
「そうか。。。目的とズレてるが助けられたしなぁ」
これがゲームのイベントだとすればもしかしたら。。。
「じゃあ行くか」
俺達は村を出て隕石跡地に向かうことにした。