目覚めた先はRPG
俺は田中悠斗! ゲームが好きな高校生だ。
近年、フルダイブ型のゲームが流行している。まるで本物のような景色、感覚。もう一つの世界をゲームが作り出している。
ヘッドギアから送られる信号で五感が感じられるとか。。。俺にはわからん!
そう、分かる必要はない。 今は夏休みなのだから難しいのはあっち行けだ!
俺はそうしてゲームショップにたどり着いた。
残金は2000円、正直この値段で買えるソフトなんか存在しない。そりゃ、フルダイブだしこのクオリティなら1万は軽く飛ぶ。
「はぁ、プリペにするかぁ」
分かっていた。たかだか2000円ポッチじゃいいゲームは買えないことを。
だがゲーマー魂を持つ奴なら分かると思うが、それでも踏み出したいんだよ。言わば情熱かな。
俺は一様目ですべてのソフトの値段を見通した。
ん?何だこれ? 俺の目に入ったのは2000円の値札だった。
「珍しっ、フルダイブでこの値段とか実在するんだな」
「なになに?タイトルは。。。コロコロン伝説」
聞いたこともねぇな。正直アイス代も無くなっちゃうし、いらねーな。
しかしパッケージの内容を見て戻そうとしていた手は止まった。
「RPGだと」
フルダイブ型のゲームの多くはプレイヤーが同時に参加できるオンラインRPG(MMORPG)が主流である。
しかしこのゲームはそれと異なる。
内容は無いよーてか?説明が全くねぇ。
まぁこれも運命的な?いっちょ買ってみますか。
俺は2000円を取り出し、購入し、家に帰ってヘッドギアを装着した。
「さぁどんなゲームか見せてもらおうじゃねぇか!」
ゲームが起動、それと同時にヘッドギアに強い電流が走った。
「あ"っい"で!!」
プツ_____
視界も音も無い暗い、これ俺、死んだ?
あっ目が開く。俺はゆっくりと目を開けるとそこは城だった。
あーそうゆう演出。。。じゃあ。
と俺はセレクト画面を起動した。やっぱり演出だった。
てっきり死んだと思ったわー。
って。。。あれ? セレクト画面は確かに出た。アイテム、スキル、装備、セーブそして退出が無い。
ログアウトか?それもない、タイトル画面の選択は?それもない。
あー終わった、俺の人生。
俺はゲーム転生しました。
俺は頭を抱えた。
まぁ2000円クオリティとは言えどゲームに転生したんだ、割といいのかも。
俺はセレクト画面を見渡した。右上にトンコロロという名前を見つけた。
どうやら俺はトンコロコロらしい。終わったな。
所詮2000円クオリティだった。
こんな名前じゃ幸先が悪くて怖い。なんだよこの名前、何人の設定だ?
とりあえずセレクト画面からは得られるものは無さそうだ。
セレクトボタンを閉じると下からメッセージが飛んできた。
「王様に話しかけよう」うるせぇー!
俺はメッセージに叩いた。。。がどうやら割れたりせず、すり抜けてしまった。メッセージは瞬間に消えていった。
自由に探検してやる!俺は城から出ようとした。その時、体が反転して引き戻された。
そして。。。
「王様に話しかけよう」
そうだここはRPGの世界だ無理に逆らうことは出来ない。俺の運命はどうやら決まったのかもしれない。
俺はまっすぐ王様のところに向かった。白い壁と赤いカーペット、文字通りの城ってやつらしい。
カーペットの終わりにそびえる玉座に王様と女王が座っていた。
「はじめましてだね」
「私はトライアル王」
「急に悪いが魔王を退治してもらう」
よく聞く展開となった。そうだな、会話に対抗してみようか
「王様なぜ俺なんですか」
さあどうくる。。。
「なぜって?そりゃ魔王が邪悪で」
RPGと言えど転生は転生、会話はできるみたいだ。だが俺の求めた回答とは違うな
「違げぇーよなぜ俺を選んだんですか」
「違う?なぜ俺をと。。。」
「。。。」
王様は考え出した。
「。。。。。。」
王様はまだ考えた。
「あのー」
これまさかスタックしたとかじゃないよな?
「えーと」
お!喋りだした。
「勇者に相応しいからだ!」
「(ほんとーは金無くてテキトーに選んだとは言えない)」
口が空いてしまった。想定しない回答。テキトーすぎだろ。
どうやら俺は王様の心の声が聞こえるようだ。
「執事よあれを」
王様が執事を呼んだ。
。。。。。。。
沈黙は続いた。
「。。。。。。」
「執事なんて金なくていねいわ」
「あーそう」
「まぁ儂から」
メッセージが下から飛んできた。
「剣を授かった」
「さぁ魔王を退治するのじゃ」
王様の会話は終わった。
まぁいいか、それより剣がみたいな。俺はセレクト画面から装備を選び開く。
左にステータス、右に装備をつける部位が表示されている。
「剣はこれか」
俺は剣を選択し、装備した。
すると右手に剣が出てきた。見た目は西洋の剣。素材も鉄なんだろうか。
攻撃力が1上がった。
ステータスの攻撃力の数値が1増えた。
おい、あまりにもケチンボ臭いぞこのキングボンビー。
「ほらさっさと倒しにいったいった」
王様に剣を向けたが、王様は手で追い払うように振っただけだった。
こいつ!
カキーン
王様には透明なバリアが張られた。どうやらNPCには攻撃できないらしい。
気を取り直して、俺は城を探索してみることにした。
「おはようざます」
「え?」
「魔王退治頑張るざます」
女王は王様よりNPC味が強かった。
「こらこらざますは一日一回まででしょ」
王様が割り込んできた。
なに言ってんだ王様。
俺は書斎を除いてみることにした。
このゲームのパッケージに説明が無かったおかげでこのゲームの世界観がまだ掴めていない。
「さてどの本を読もーかな」
書斎に並べられた本はどれも難しそうで、正直読む気になれない。
「なにか御用ですか」
声の先を見ると。執事らしき人が立っていた。
「ちょっと歴史を知りたくて、でもどれも難しそうで」
「そうですか、なら私がお教えしましょう」
「人類が文明を気づいてからここは5000年、大陸は4つで北の大陸、東の大陸、南の大陸、西の大陸で構成されています」
大陸名そのまんまなのか。しかしかなり細かく教えてくれそうだ。この世界はNPCのような無機質な要素と人間のようなNPCが混ざっていて不思議だ、もしくは人間かもしれないが。
執事の説明は続く。
「そしてここは西の大陸で最も魔王城から遠い大陸です。ご存知だと思いますがこの世界は魔族が存在しています。なのであなたのように勇者を担うものが必要なのです」
そうか俺は一応勇者なのか。
「今存在している勇者はあなたで二人目です」
そういや執事って。。。
「では一通りは言いましたが聞きたいことは」
「王様は執事なんていないって言ってたけどなんで居るの」
。。。。
執事は数秒沈黙し、メガネをクイっと上げる。
「チッバレたか、んじゃ死んでもらうわ」
え? 眩しッ!
白い光が空間を包む。軽快な音楽が流れる。
どうやらバトルが始まったようだ。
メッセージが下から飛んできた。
執事(偽)が出現!
バトルが始まった。俺はメッセージを飛ばし、戦う画面に切り替える。
画面には 俺のHP 技 魔法 必殺技 防御 アイテムが表示された。
さてと。。。どうやら技も魔法も持ってないようだ。
あーそうですか。通常攻撃で倒せと。
執事(偽)ナイフを投げてきた。あれ割と余裕そうだぞ。フルダイブは初めてじゃない、それに俺も高難易度クエストは何度かクリアしたことあるし、簡単だな。
俺は執事(偽)に攻撃した。24と数字が出た。
割とレベル1にしては威力あるじゃん。俺は攻撃を続けた。
17、25、35なかなか威力あるんじゃないか?
執事(偽)ナイフをまた投げた。当たらねーよ。
しかし
85ダメージを受けた。あれこいつ強くね?もしくは俺が弱い?
どうやら目で追えてようが俺の回避に限界があるみたいだ。レベル1の壁だろう。
俺のHPは300まだ耐えれるが猶予はないな。
俺はひたすらに攻撃を加える。執事(偽)の攻撃までに5回は叩ける。
35、24、22、18、20
まだ耐えるのか。執事(偽)の攻撃が始まった。
ナイフを投げてきた。
こいつどうやらナイフ以外攻撃がないようだな。
なら感覚で避けられ!!
俺は咄嗟に防御の姿勢に変えた。ナイフは5本投げられていた。
防御を選んでいないのにこの姿勢に意味があるかは分からない。
俺はすぐに姿勢を変えた。違うよな、これじゃ倒せない。だから、俺ができるのは。
剣を持つ腕に力を込めて、投げ出す。
技が無いなら作ればいい。剣は執事(偽)に突き刺さる。
一応異世界、ゲームと違って自由が効いた。
執事(偽)の腹部には黄色の数字で102と表示されていた。クリティカルヒットのようだ。
執事(偽)がホログラムのように消えていく。この世界は仮想現実の要素を持っているようだ。
どこまでもこの世界の仕組みが分からない。
レベルが2に上がった。なにか強くなった気がする。
「ん?」
ちょこちょここちらに近づいたのは白い犬だった。
「うわ〜かわいい」俺が近づいたとき。
「おいこっち見てんじゃねぇ」
白い光が空間を包む。目の前には犬と表示されたメッセージがある。いや嘘だろ。
戦闘に入った瞬間見た目がグロくなったぞ。
まぁいいか、俺は剣を持ち犬に攻撃した。
。。。。。
あれ目の前が真っ暗になった。
俺、死んだ?
だがゆっくりと光が目に差し込み。メッセージが下から飛んできた
「王様に話しかけよう」
あっ俺セーブしてねぇ。