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老成転生~少年ボディで箱庭スローライフ~  作者: うどん五段
第一章 伝説の箱庭師の箱庭を受け継ぐ
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第7話 毒親に奪われた時間を取り戻して……!

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 ワシ等は大きな平屋建てのある場所へ入り、図書館を目指した。


 しかし、ここはなんとも……なんの家じゃったんじゃろうな?

 トイレの数は異様に多いし、窓の近くには柵もある。

 昔何かで見たが、ベビーガードとか言う奴だったかのう?



「ナースリスや、この平屋は何に使われておったのじゃ?」

『ここは、幼い孤児たちが過ごす家でした』

「孤児……戦争でもあったのか?」

『いいえ。リディアの生きていた時代、冒険者が子供を育てられぬと捨てたり、家庭の事情だったり、様々な理由で子供が捨てられていました。それだけではありません。老人もまた、路上に捨てられて最期を迎える者が多かったのです』

「……そうか」

『リディアはそう言う方々を保護し、この箱庭に住まわせ衣食住を約束しました。その上、仕事も与えて人生の喜びを再度呼び戻させていたのです』

「リディアと言う人は素敵な人ですにゃー」

「ふむ。確かに捨てられた老人、子供達を育てるには最適な場所じゃったろうな」

『それだけではなく、夫に暴力を振るわれ逃げられない女性達もまた保護されていました』



 この世界でもDVはあった様で、そう言う彼女たちを救っていたのもまた、リディアだったのじゃと言う。

 ワシに同じことが出来るかと言われると未知数じゃが、箱庭という限られた場所でしか生きていけぬ者が現れた場合は、手を差し伸べるしかないのじゃろうな。


 そんな事を思いつつ『図書室』と書かれた部屋に入ると、数多くの絵本が並んでいて、まずはワシがこの世界の言葉が読めるかどうかを確認するべく絵本を取った。


 日本語は不自由無く使えるワシでも、この異世界の文字はどうじゃろうか?

 そう思って中を読んでみると、意外とワシでも読むことが出来た。


 


『異世界転生する際、その世界の文字や数字の読み書きは出来るようになっていますよ?』

「それを聞いておらんかったからな。取り敢えず文字が読めて良かったわい」



 これなら専門書も読めそうじゃ。

 こうして本棚を移動していき、まずはルルティアの歴史の本を手に取り中を読んだ。


 ルルティアは大きな大陸が西と東で別れている様で、1つだけ四季の離れ小島があるらしい。

 日本の様じゃと思ったがそうではないらしく、そこは【神々の住まう島】と言われておったそうじゃ。


 ナースリスの追加の説明では『今では【神々の島】はルルティア世界唯一の発展した場所となっており、その大元を作ったと言われる現在の王【アツシ・ジュノリス国王】の手腕によって変わってきています。との事じゃった。



「アツシ……と言う事は、この者も転生者か?」

『いいえ。異世界転移の方です』

「異世界転移……ワシ以外にもこの世界には相当いそうじゃな」

『そうですね。それなりの人数の転移、転生者はいらっしゃいます』

「女神も物好きじゃのう」

『異世界人が現れれば、世界は更に発展して平和になると信じて疑わない者達が多いのです。今の所問題のある転移者、転生者はいませんが、何時野心に満ち溢れた者が現れるか……。人間とは少々愚かしい所があるようですね』



 ナースリスの言う通りではある。

 何時なん時、心がワシのように穢れた者達が訪れるとも限らん。


 人を助け導くと言ったリディアやアツシのような者達ばかりとは限らんのじゃ。

 人がいい人材だけを集めるなど、神であっても不可能に近い事じゃろうて。



「その人の性質まで見極めて女神が選んでおるのなら問題はないかもしれんがの」

『そこはご心配なく。女神様は数多いる人間の中から、光る存在を転移、転生させますので』

「ははは! ならばワシもか? ワシャ何か光るものでもあったか?」

『さて、そればかりは母なる女神様だけが知る事でしょう。ですが、貴方がリディアの伝説の箱庭を受け取るだけの器があったというのは確かな事実。もし本当に悪人の魂しか持っていなかった場合、箱庭はハヤトを拒絶して受け取る事は不可能だったでしょう』

「ふむ、そう言うものなのじゃな」

『きっと、貴方にしか出来ない使命があるのだと思います。その事をどうか忘れないで』



 そう言われても、まだ一年先の事。

 ワシはその間に自分の好きなように生きようと決めておるのじゃ。

 

 その為にはどれだけの知識を得ているかにもよる。

 そう思い、ある程度この世界の事を勉強してから、専門書を読み漁る日々がスタートした。


 この箱庭には本当に専門書が山のようにあり、それらを読破するのは大変貴重な時間であり、現実世界で買おうとしたらどれだけの金額が飛ぶか想像したくもないだけの専門書が眠っていたのじゃ。


 ――ありとあらゆる知識を得る為に、朝から晩まで半年勉強しまくった。

 お陰で【ロストテクノロジー】を使えば、ある程度作る事は可能となった。

 とはいえ、実際にしてみない事には分からんが。



「リディアは相当な知識人じゃったようじゃな」

『何せ、女神様が最初にお選びになったのが、リディアでしたからね』

「なるほどのう……後は劣化品が来たという訳か」

『劣化品だなんてとんでもない! 皆さま素晴らしい方々ばかりです!』

「ふむ」

『ご自分を卑下してはなりません。ハヤトもまた、選ばれし民なのです』



 選ばれし民のう……?

 毒親に育てられて、毒親の為に終わった人生のワシがか?


 ワシにどんな価値を見出しておるのか分からんが、ワシこそ他の者達とは違い、心根の腐った爺じゃろうよ。


 しかし、勉強するというのはとても楽しい事じゃった。

 この年で……と言うと、見た目年齢が邪魔してアレじゃが、享年70歳にして勉強に励むというのは、中々に楽しかった。

 体が若い分だけ脳に入る知識の量も多かったように思える。



「ん――。半年も籠って勉強しておったから、外の世界の事を知る時間が無かったのう。久々に外の世界の事でも覗いて、現状把握をしておくか」

「現状把握大事にゃーん♡」

「そうじゃの、大事じゃの!」

『半年も勉強し続けるとは思ってもいませんでした。しかもリディアさんの時よりスキルが上がったものもありますし……』

「リディアは若くしてこの世界に来たのじゃろう? ワシは享年70の老いぼれ爺じゃぞ。年齢イコール知識量なのかもしれんのう」



 本来するべき筈じゃった勉学を、今やっただけにすぎん。

 毒親に奪われた時間を取り戻したんじゃ。


 それだけで、当時の自分が報われるような気がしてならんのう……。

 勉学をする時間をも毒親に取られたというのは、人生で最大の不幸だったのかも知れんな。



「ナースリスと、リディアには感謝じゃな」

『感謝……ですか?』

「ワシは元々勉強が好きだったんじゃ。それを毒親に奪われた人生じゃった。その時間を取り戻せたのは……感謝と言う他あるまい」



 こんな形で勉強する事になろうとは思いもしなかったが。

 勉学した今、色々と試したい事もやりたいことも増えた。

 少しずつ、それらを形にしていくのも楽しいかもしれんのう。


 それに、リディアの作る物に関する改善点も見つかった。

 肌着はアレでは駄目じゃろうな。


 いや、あれでも悪くはない。

 じゃが、一年使うにはとてもじゃないが耐久性が足りん。

 やはり一番強いのは……綿じゃろうな。



「よし、ワシはワシの出来る事をするかのう! まずは温泉に浸かって疲れを取ってから、それから現状把握と行こうかのう!」

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