第76話 今後の支店の話の後に起こった出来事
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しかし、獣人王はやはりグズリーの件が気になっているようで、獣人牧師夫妻はびくびくしておったわい。
獣人王にしてみれば、自分が選定した牧師たちの息子が、そうとは分からなかったのは致し方ないこと。
そもそも、外弁慶であったのなら尚の事じゃ。
「獣人王、ご飯は美味しくなかったですかのう?」
「いや、実に旨い! 牛丼と言うのは旨味があって美味ですぞ!」
「それは良かった。冒険者にも人気の食事を獣人王に出すのは気が引けたが、ワシの好物での。突き合わせてしもうて悪かったのう」
「ふむ……。この牛丼というもの。我が獣人王国でも出せませんかな?」
「獣人王国でもか?」
「是非に。我が王国では肉を沢山食らう種族。しかし、肉といえば焼くのが基本。それを覆す旨さでした!」
ふむ、確かに獣人王国に支店を置くのも良いかもしれんな。
そう思っておると更にこんな言葉が続いた。
「恐れながら申し上げます」
「なんだ?」
「ムギーラ王国の視察に行った際、〝燻製〟なるものを食べました。あれも是非、我が王国に……支店を出してもらえればと」
「燻製か……確かに燻製も旨かったな……。どうだろうかハヤト殿」
「出すのは構わんよ。魚が多くなるがの」
「魚の燻製がわたくしめ、大好物でして! あの燻製を食べてから夢に見るほどでして……」
そうじゃろうなぁ。
猫の獣人にとっては、魚の燻製はたまらんじゃろうなぁ……。
後はクマ獣人か? まぁ、猫科の獣人にはたまらんじゃろう。
「私は肉ですね。燻製肉は旨いの一言につきます」
「あらゆる肉で試しておるが、旨かったかの?」
「絶品です!」
「これこれ、お前たち……。すみませんハヤト殿」
「いや、食べてくれる者が〝旨い〟と言ってくれるのを聞くのは嬉しいもんじゃ。あれを最初に作り始めたのはワシじゃからの」
そう言えばエルフ王も含めて感嘆の声が上がったが、ワシは気にせず水を飲む。
「では、今後エルフ王とは〝豆腐ステーキエルフ支店〟を出す為の連絡をしていくのと、獣人王とは〝丼物屋獣人支部〟と、〝燻製店獣人支部〟を出すための話し合いを、今後詰めていくことで宜しいか?」
「「構いません」」
「出来るだけ早く支店を出したいからのう。調理師が集まり次第スタートとしようかの。是非、早めにお願いしますぞ」
「「かしこまりました」」
こうして一旦落ち着いたところで、その他の箱庭で行っている教育や保育園の話題等をしておったのじゃが、「教育理念」と言うのは、元いた世界では当たり前じゃったが、異世界では、大事にされておらぬものじゃったらしい。
「勉学を究めんとする若者もおるじゃろうに。もったいない事をするのう」
「確かにそれはそうですが、基本的に勉学は貴族がするものでして」
「それはムギーラ王国でもそうじゃな。中々進まぬのじゃとカズマが言っておった」
やはり得られる知識と言うのは財産じゃ。
それを他所に流すと言うのは、宜しいと言う考えなのじゃろう。
まぁ、民がある一定の知識を持つことで、一番困るのは国のトップかもしれん。
それを考慮すれば、確かに勉学を収めるのは一部にしたいと言う気持ちはわからんでもないがの。
「しかし、勉学を納め安定した職業に付けば、犯罪も抑制になるのではないか?」
「犯罪の、抑制ですか?」
「無論、こればかりは確実に……とは言いにくいがの。少なくとも、道徳は教えることは出来よう?」
「「道徳?」」
よもや、この世界には〝道徳〟も無いのか。
いや、前世でも確かにその辺りが曖昧になりつつあったようにも思えるが……。
ひとり唸りつつ「これは、本格的な改革が必要なんじゃろうなぁ……」と呟いておると、子供たちが帰宅する姿がちらほら見えてきた。
「子供たちにこそ、しっかりとした行動理念、そして教育理念は必要じゃ。そこに道徳と言う、誰かを思いやると言う考えが備われば、だいぶ違うんじゃがの」
「誰かを思いやると言う事は、教会の約目ですが……」
「どうやら、それが中々上手く言っておらんようでな……」
グズリーだけだと思いたいところじゃが、やはり全体的に学校で教える事が重要な気がするのう。
そう思っておると、真新しかったはずのランドセルをボロボロにして帰ってきたのは――グズリーじゃった。
いち早く彼の存在に気づいた母親が駆け寄っていったが、子供がこのエリアに来る事は本日禁止されておる。
多分それもあってのことじゃろう。
「まぁ、グズリーどうしたの⁉」
「人間は卑しい汚い奴らばかりだ! 獣人差別ばかりしやがって!」
「そんな事あるはず無いじゃない!」
「だって彼奴等、俺の言う事一切聞かないだぜ⁉」
そんな言い争いの声が聞こえてくる。
恐らく耳の良い獣人王とエルフ王にも聞こえておるじゃろうな。
「俺がまとめてやろうとしてやったのに、反発しやがってよ!」
「何をいっているの。貴方がまるで群れのボスのような真似をしてどうするの。貴方は今日入ったばかりの新参者でしょう?」
「だからだよ……。新しいリーダーが必要だと」
「グズリーいい加減にして頂戴? 貴方可笑しいわ」
「だって、だってハヤトだってこの箱庭のボスしてんじゃん!」
「それは、箱庭はハヤト様の箱庭なのよ⁉ 当たり前じゃないの!」
「納得いかねーよ! 俺と同じ年の癖に、なんで王様たちと会話できんだよ! 差別じゃんかよ!」
あ――……なんというか。
見えておらんのじゃな。
恐らく学校側から連絡が来るじゃろうが、グズリーは今後学校にも通えんじゃろうな。
「あの様子じゃと、学校側から来てくれるな……と、連絡がありそうじゃ」
「はぁ……誇り高き獣人が情けない……」
「ハヤト様に対してもあのような?」
「じゃのう」
それでもグズリーは叫び続ける。
情緒不安定なんじゃろうな。
そう思った時――。




