第75話 問題はあるが、エルフ王国がそういうのならば――
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グズリーの一件で一悶着はあったのの、学校に本日から入ることになり、散々もまれてくるじゃろうと予想して――本日朝から、エルフ王と獣人王が、箱庭にお越しになっておる。
彼らは初めて入る箱庭。
それこそ、ナースリスを信仰するふたつの国からすれば、彼女の住まう箱庭は驚くほど空気が清らかで澄んでいると大絶賛じゃった。
ましてや、光の玉でふわふわとワシの周りにいるナースリスがおるのじゃから、まさに恐縮しきっておったが――。
「しかし、ナースリス様から憂いを感じます」
「確かに。何かこの箱庭で困っている事が起きておるのですかな?」
「困っておることか……。まぁ、無くなないのう」
教会の牧師夫婦がおるまで言うべきか言わざるべきか。
ふたりは獣人王の傍で恭しく膝をついて最大限の礼をしておるし、彼らが悪い訳では無いのじゃが……そう思ったときじゃった。
『憂いならありますよ……。最近獣人牧師のひとり息子が、ハヤトに対して暴言を吐いたりと好き勝手しているのです。神獣アンジュですらキレる程に』
「「⁉」」
「牧師夫妻よ……どういうことか説明してもらうか」
「待て待て、牧師夫妻が悪いのではない。ワシと同年代の子供で、ワシに負けたくないと言う強い思いからの反抗じゃ。可愛いものではないか」
「でも、アレは行き過ぎた言動ニャン」
「アンジュまで……」
「ハヤト様の広い御心で、この箱庭にまだ、いられますが……。何時追い出されても文句は言えませんわね」
「マリアンまでどうしたんじゃ?」
『それだけ、腹に据えているものが皆さんあるくらいには酷い有様ですよ』
ナースリスの一言に、牧師夫妻は平服し「申し訳ございません‼」と謝罪した。
しかし、彼らが謝罪したところでグズリーの行動が治るわけではないと伝えると、ふたりは顔面蒼白しておった。
「持って生まれた性格もあるじゃろう。しかし、あの性格では牧師は務まらんの」
「そ、そんな……」
この様子じゃと、親もやっと今、自分の子どもの現状を知ったような感じじゃのう。
恐らく、子どもと全く向き合ってこなかったのじゃろう。
もしくは――。
「私達の前では礼儀正しい子供なのです!」
「じゃとしたら、外弁慶じゃな」
「そとべん……なんですか?」
「家の中では良い子供。外では横暴の限りを尽くす子供のことじゃ」
「‼」
「子の事をよく見てこなかったんじゃろうな。人に預けることで、ようやく子の本質を知ったんじゃろう」
「「そんな……」」
「この様子じゃと、学校の先生は大変じゃろうな……」
「ええ、受け持ちたくない生徒ですわね」
そこまで現実を突きつけたが、後は彼ら次第じゃろう。
「もう少し様子は見るが、治らなかったら出ていってもらう」
「「‼」」
「自分の子供の責任はあの年齢なら親が取れ」
「「かしこまりました……」」
これでラストチャンスはだしたぞ。
なおらんだったら、出ていってもらう。
これは決まりじゃ。
「それで他の者達もよいかの?」
「主は優しすぎますニャン」
「そういうでない。ラストチャンスじゃ」
「そういうことでしたら……」
『ラストチャンスの意味も知らない子供と言う年齢でもないでしょうからね』
と、ナースリスからも厳しい意見が出たところで、ワシ等は〝マニキュア〟の話に移行する。
エルフと獣人族にとって、今や欠かせない存在となったマニキュア。
指に祈りの絵を簡略化して描く事で、色々と都合がいいことが多いらしい。
しかも、一度つければ何らかの問題が起きない限りは一週間に一度書き換えればよいのじゃから、とても便利なのじゃとか。
そう言われると、教えた甲斐もあるし、今後もマニキュアは必要に応じて作り、終わったら戻してもらう日々が続きそうじゃ。
「しかし、我らが姪っ子達がその担当になるとは思いませんでしたね」
「そうだな。この箱庭に保護されていたことで、彼女たちも良い変化があったようだ」
「悪い変化もありましたがね……。エルフが肉を食うなど……」
「それは個々個人の好き好きもあるじゃろうから、何とも言えんのう」
「そう言えば、エルフ達から聞いたのですが……〝豆腐ステーキ〟なるものがあるとか」
「うむ、昼にエルフ族には出す予定じゃ」
「大変美味と聞いております! もし私が食べて〝これは〟と思ったら、是非、エルフの国にその〝豆腐ステーキ〟の店を作っていただきたい!」
思わぬ要望に、暫し考え込んだが……。
これ以上仕事は増やさぬと誓ったばかりで、増やすのはのう……。
「エルフは食文化が特殊なのです。どうか、お力添えを! 国を上げてバックアップ致します!」
「ふむ……。では、その時は手伝おうかの」
「ありがとうございます!」
エルフの難しい食文化は分かっておる。
魚は大丈夫じゃが、肉が駄目と言う奴じゃな。
――その後も掻い摘んだ今後の話でお互いの意思疎通を行い、あっという間に昼の時間担った為、〝豆腐ステーキ〟を出すことになった。
結果は、言うまでもなく良好。
寧ろおかわりを所望する食べっぷり。
着きてきていたエルフの従者達も目を見開いて食べておった
「ハヤト様」
「分かった。国を上げてしてくれるのなら、作り方を教えるし、豆腐も用意する。しかかし、金は支払ってもらうぞい」
「ありがとうございます‼」
――こうして、今後エルフ王国に〝豆腐ステーキ専門店〟が出来るのは、もう少し後のことじゃな。




