第6話 保護された場所でナニカをする前に、情報と知識は必要じゃて!
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この箱庭の持ち主であった【リディア・ダンノージュ】は、ダンノージュ侯爵領にて店を切り盛りしていたという。
その店が観たくて泉に宝石の欠片を投げ入れ見てみると、それはもう大繁盛しておった。
色々商品は出ておるようじゃが、確かに今の元の世界では当たり前にある商品が、当たり前に売っている……と言う感じじゃった。
これでは、ワシの持つ知識とそう差が出ない。
いや、差など出さなくともいいかもしれんが、冒険者に売れる商品と言うのは大事じゃろう。
何せママ上となるマリリンたちは冒険者。
ワシが保護されるのは冒険者ギルド、レディー・マッスル。
となると――冒険者に、いや、あの筋肉の集まりである【レディー・マッスル】の面々が欲しがる商品を作らねばならぬという訳じゃな?
『とは言っても、世界一位のギルドですから、そこに錬金術師もいれば付与士もいますし、大体の人はいるんですよ』
「ワシ、必要なくないか?」
『だからこそのロストテクノロジーでしょう?』
「むう」
『それに、リディアさんの残した店で買うより、貴方が作った方が安く買えるというのは利点が大きいと思いますよ? 何せ特注のようなのでお高いみたいなんです』
「なるほどのう」
その為に市場調査とは大事じゃな。
冒険者にとって嬉しい物は色々あるからのう。
キャンプ用品は無論の事、汗を良く吸って乾燥しやすい肌着、普段着もそうじゃ。
レディー・マッスルの拠点が何処の地域にあるのかにもよるが、気候のいい場所じゃとええんじゃがのう。
「のう、レディー・マッスルの拠点はどこにあるんじゃ?」
『ムギーラ王国と言う一年中気候が安定した土地にあります。周辺国とも仲良くしていて戦争が起こる心配はないでしょう』
「ほう」
『隣国のキンムギーラ王国とも友好関係を築き、そこに前はハヤトが2回目に目撃してしまった筋肉女性達、ミセス・マッチョスと呼ばれるギルドの面々が最近まで住んでいました。今はレディー・マッスルのマリリンとカズマの家に住んでいます』
「その屋敷は筋肉が濃いエリアじゃのう。筋肉99%じゃ」
『その分安全ですよ?』
「安全なのは一番ですにゃー♡ 主は狙われるスキルをお持ちなので、安全第一がいいですにゃー♡」
「ありがとうアンジュ。お主も優しいのう」
確かに狙われやすいスキルを持っておるのは間違いない。
恐らくじゃが、ダンノージュの者達が、ワシがリディアの箱庭を引き継いだ事を知れば黙ってはおらんじゃろう。
この事は秘密にするしかあるまい。
もし話すにしても、限られた人に話すかが一番じゃろうな。
「しかし、ワシも店を持つ……と言うのは考えておらんのじゃよなぁ」
『店には興味がありませんか?』
「ワシが生きていく分のなにかがあれば、今はそれでええ」
『私はハヤトに、困っている人を助けて頂きたいですが……』
「ワシは困っている人は確かに放ってはおけんかもしれんが、困っている人が果たしておるのかどうか……と言う問題もある。色々法整備が進んでいるという話はカズマを見ていて聞いておるからのう」
そうなのじゃ。
あのカズマ、日本の法整備から何からやっておるようで、ムギーラ王国で困っているという者達が少ないような気がするのじゃ。
キンムギーラ王国に行けば分からんが、少なくともムギーラ王国は安泰……と言えるじゃろう。
よって、ワシの持つ箱庭を使ってどうこうする……と言う事は限りなくないに等しい。
寧ろ、ダンノージュ侯爵家に目を付けられぬようにするのが先決じゃろうな。
「――と言うのがワシの見解じゃ」
「なるほどですにゃー。ダンノージュ家に目を着けられたら、それはそれで不味いですにゃー」
「じゃろう?」
『ダンノージュ侯爵家は他の国にありますし、ムギーラ王国とは随分と離れている地域にあります。余りそこは気に為さらなず商売をしても良いと思いますが』
「ふむ」
『冒険者の街にロストテクノロジー持ちが現れたというだけでも大きな違いが出るのは確かなのです。輸入箇所が1つ減ったくらいでは、ダンノージュ家は何も問題はないでしょうね。寧ろ厄介な注文場所が減った……くらいの認識でしょう』
「なるほどのう」
それなら、店を持ったとしても、冒険者に必要な物は取り揃えても問題は無さそうじゃ。
取り敢えず、もしそうであったとしてもカズマと相談しながら……と言う事にはなるじゃろうな。
何を優先して、何を後回しにするか等は……やはりカズマパパ上との相談の末に決めた方が、事を荒立てずに済むじゃろうな。
「つまり、一年後の保護までの間はワシは此処でのんびり生活と言うのは変わらん。と言う訳じゃ。一人で生活していくには十分すぎる素材は揃っておるし、コツコツ生活用品を揃えていくかのう」
となると、食器洗剤も必要になってくるし、穏やかなこの気候の箱庭を、もう少し過ごしやすい箱庭にしたいとも思う。
勉学が出来なかったワシにとって、勉学をする時間も欲しい。
「そう言えば、図書館があったのう? リディアが残した図書館に行ってみるか」
「色々本があるといいですにゃんー♡」
「そうじゃの。知識は財産。ワシはその機会を何時も毒親に奪われてきた。今こそ、あらゆる知識を溜め込む時間に丁度良いかもしれんな!」
――毒親によって奪われた青春時代。
勉学もまともにできず、大学も行けず、就職しても搾取され、何1つ幸せではなかった前回とは、今は違うんじゃ。
ならば、知識を蓄え武器にする事も十分この世界で通用する剣とも盾ともなろう。
「そうと決まれば、ジュースを片手に贅沢に勉強じゃ!」
「アンジュも応援するにゃんー♡」
『僭越ながら私もお付き合いしましょう。こちらの世界で分からない事があれば聞いてください』
「うむ、よろしく頼むぞナースリス!」
『はい!』
こうしてワシ等は大きな平屋建てのある場所へ入り、図書館を目指したのであった――。
しかし、ここはなんとも……なんの家じゃったんじゃろうな?