第66話(閑話)マリリンとカズマの、親として静かに守っていること
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――マリリンSide――
ハヤトが【化粧崩れしない付与】を作り上げて数日後、それは起こるべくして起きた問題と言えるだろうな!
以前から「ハヤトを養子に欲しい」と言う貴族はかなり多かった。
その度に断ってきたし、我が子となったハヤトを他所にやる等考えてもいなかった。
中には、ドンッと金を眼の前において「ハヤト君を売ってくれませんかな?」と言う屑もいた。
前者はまだいい。
問題は後者だ。
今目の前に、大量の金貨を置いてふんぞり返っている貴族を、今すぐぶっ飛ばしたいとさえ思うが……今は様子をみようか。
「ハヤト……とか言う金の卵を生む少年がいると聞いてね。是非うちの息子にと考えているんだが?」
「それで? 申し訳ないが、我が世界第一位の冒険者ギルド、レディー・マッスルで保護したハヤトの話は聞いたことがあると思うんだが?」
「ああ、あるとも。君たちレディー・マッスルがハヤトと言う少年を囲っていると」
「囲っているとは失礼だな。危険だったところを助けて養子にしたのは事実。そして、国王陛下の許可を得て、養子にしたのは聞いているか?」
「国王陛下の許可を……得てですか?」
「そうだ。無論、知らないとは言わせないが?」
金をここまで、あからさまに出してふんぞり返っていたんだ。
ハヤトを金で買おうと言う魂胆は、今更覆されないぞ。
「その、国王陛下からの許可を貰って、特殊な箱庭を持つハヤトを保護し、養子としている。それで? お宅はこの目の前の金貨で何がしたいのかな?」
「そ、それは」
「ハヤトを金で買う……と言うことか? 国王陛下の許可も得ず?」
「それは……その……」
「どういうおつもりで、金を置いたのかな?」
笑顔での圧。
いや、気迫でも負けているだろう。
とは言え、このままタダで帰すつもりは毛頭ない。
しっかりと、ガマガエルのようなこの男を締め上げなくては気がすまない。
「愛する夫よ、どう思う?」
「そうですね。そう言えば、ハヤトが私達の可愛い娘の婚約者……と言うのも、知っていての言葉でしょうか?」
「むむむ、無論それは存じて……」
「知っていて、更に養子縁組をしたいと……思っていたと言うことですか? それとも……我がレディー・マッスルを敵に回して良いと……お考えですか?」
「ひ、ひいいい‼」
おお。愛しいカズマが流石にマリアンのことが絡むと怒っているな。
マリアンとハヤトの純愛は、最早レディー・マッスルの皆が知る、純愛ストーリー。
私の先輩冒険者であり、Sランク冒険者であるミセス・マッチョスたちですら、その純愛に目をつけ始めているのだ。
新たなる「カズマリ」とは違う、「ハヤマリ」を流行らせようとしているのだと、小耳に挟んでいる。
「良いかな? レディー・マッスルを敵に回すだけではなく、ミセス・マッチョスたちもを敵に回すことになる。そのような真似を……今、為さっておいでだったのだぞ」
「もももも、申し訳なく! 本当に、本当に申し訳なく思いまして御座います!」
「ははは! 貴殿とて我がギルドとミセス・マッチョスを、敵には回したくはないだろう?」
「無論です!」
「では、この金は?」
「め、め、め……迷惑をお掛けしたとして……お収めください」
「ふむ」
「そして、何もかも無かったことにして頂けると助かります!」
「ふふ……ふはははははははは‼」
思わず豪快に笑ってしまったが、男は悲鳴を上げて鞄だけ持って走って去って言ってしまった。
一緒に来ていた男も脂汗と冷や汗を流しつつ「お待ち下さい旦那様!」と追いかけて出ていった。
その様子を見て、ドスッと背もたれにより掛かると、フ――ッと息を吐く。
全く持って、頭の痛い問題でもあり、ハヤトが有能すぎるのも問題だが。
可愛い娘であるマリアンが愛し通している男と思えば、鼻も高い。
「この手の馬鹿は中々減らんな」
「そうだね。マリリンがその度に牽制してくれてるけど」
「ハヤトの有能さが表に出れば出るほど、我が子に、養子にと名乗りを上げる貴族の多さには溜息が出るが……」
「ハヤトは有能だからね。そもそも、あの箱庭をナースリス様から承った時点で、有能なのは間違いないだろうね」
「その有能さにいち早く気付いたのかどうかは別として、マリアンがハヤトの相手に選ばれたのは、母としても鼻が高い」
「ははは、ハヤトはマリアンに一途のようだしね。お互いに一途で、年齢相応の恋愛をしているよ」
「年齢相応か、確かにハヤトは、ああみえて6歳だからな」
思わず忘れそうになるが、ハヤトはまだ6歳。
老成しているのは、前世で亡くなった年が随分と行ってからだと聞いている。
だからこそ、マリアンを大事にしてくれるだろうと言うのは分かっているし、マリアンも支えながらも支えてもらっている所があるのだろう。
「しかし、先程の男性もだけれど、あの手の馬鹿は中々減らないね」
「ああ、だからといってハヤトやマリアンに言うべきことでもないだろう。親がしっかり守っていればそれでいい」
「ははは、そうだね。僕達がハヤトの良き理解者であり、義理の親であるのならば、守るのは当然だ」
「うむ! 伝えずコッソリ守るというのも、また親の役目だろう! 静かなる親の愛……と言う奴だ!」
「ふふふ」
こうして件の男が置いていった金貨は、後でハヤトの金庫に入れてもらって……。
全く、この手の輩が多くて月に4回は来る。
その度にハヤトの金庫が膨らんでいく。
良いことなのか、悪いことなのか、ハヤトの魅力なのだろうな。
「あの子に対して、親として出来ることは限られている。何せ老成している分、親として接するというのは、並大抵のことではない。だが、愛情を持って守り通し、将来はマリアンと共に幸せになってほしいと願うのは、ちゃんとした親心だろう?」
「そうだね。ちゃんとした、二人へ対する親心だと思うよ」
「カズマ……」
「愛しいマリリン……。君は立派な母親であり、俺の愛する女性だよ」
「ウホッ!」
変わらず愛しい夫、カズマに褒められたら、息が荒くなってしまう。
気をつけねば!
「私とて……カズマのことが……」
「し――……。言わなくとも、君の目を見ればわかる」
「カ、カズマッ!」
「僕も愛しているよ……」
途端、体から熱気が放出されてカズマが飛び退いたが、嗚呼、萌が、燃えが、燃える‼
「全く! 私をどうするつもりなのだ!」
「愛し通すつもりだよ!」
「うおおおおお‼ あの世に行っても離さんからなぁあああ‼」
「来世でもご一緒したいね!」
そのやり取りは数十分続き、最早我ら夫婦の日常の愛の叫びとして記録されている。
実に、親として頑張りつつも、夫婦としても幸せな日常を送っている、そんな日のことだった。
無論、ハヤトやマリアンには知られていないがな!




