第62話 エルフの食事問題と、まずはマニキュアを軌道にのせたいのじゃが……
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問題が起きたのは、食事の時じゃった。
エルフは肉を好まず、野菜中心の生活じゃったらしい。
ミアはそんなことが無かったので分からなかったが、10人の絵師たちは食事を拒否。
これには参った。
「つまり、ベジタリアンなんじゃな?」
「べじ……なんです? それ」
「肉を食わず野菜ばかりを中心に食べる者たちじゃな。まぁ、ワシからすれば珍しいことではない」
「でも、動物性タンパク質を取れない。動物性が駄目だと言うと……」
「なに、魚は辛うじて了承を得ておるから、なんとかなるぞ」
「そうなんですか⁉」
驚くマリアンに、ワシは直ぐに取り掛かる。
ロストテクノロジーで人数分の豆腐ステーキ用の豆腐を作り出し、レシピを調理師に教えると「これならすぐ用意できます」と言って調理を始めた。
言わば――『豆腐ステーキ定食』を作ってもらうわけじゃ。
エルフは同じ食事が続いても全く問題がないらしく、ここにいる間は常に三食『豆腐ステーキ』となるが、問題ないらしい。
無論、他にも和食ならばなんとかなるが、それも付け加えてレシピを渡しておいた。
「お肉……美味しいのに。郷に入っては郷に従えって言葉を理解しないから、頭カチカチエルフって言われるのよね」
「まぁまぁ、彼らは後日、エルフ王国に帰るわけだし……」
「それもそうね」
と、獣人族のダルメキアンに諭されたテトは、美味しそうに肉を食べておった。
エルフのミアは特に気にせず肉を食べておる。
「私、エルフ王国から箱庭に来てよかったわ。動物性タンパク質を取るとお肌の調子もいいし、何より美味しいもの」
「まぁ、ミア様野蛮ですわ」
「肉等……」
「野蛮で結構よ。私はもうエルフ王国には帰らないもの」
「またそのようなことを仰って」
「私はマリアン様を助けつつ、そしてあなた方にマニキュアを教える講師をしながら、箱庭と言う理想郷で一生を過ごすの。今更アレコレ厳しいエルフ王国になんて帰れないわよ」
ミアの言い分もわかる。
エルフ王国は何かと厳しい規律で出来ておるようで、今のミアでは息苦しかったようじゃ。
自由奔放に生きたいエルフもおるというし、それでも良いのじゃと思う。
それに、あの断罪された父親がいる手前、今のエルフ王国に戻るのは辛かろう。
良くて政略結婚か……普通に考えれば、箱庭が理想郷と言われるのも頷けると言うものじゃ。
「兎に角、時間はないの! エルフ族はテキパキと絵師ならば教えたことを覚えて頂戴! それと、ハヤト様に雇われていると言う事をお忘れなく」
「「「「「はい」」」」」
「それは樹人族にも言える事です。教えてもらうだけではなく、ハヤト様に雇われているという事は常々忘れないで」
「「「「かしこまりました」」」」
マニキュアを教える際、彼らは技術を教える手前、我が箱庭で雇うことが決まったのじゃ。
それは国王達も了承済みじゃし、かといって箱庭で生活するわけではない。
通い……と言う形になったのじゃ。
通いで技術を磨き、そして用意された【マニキュア店】でマニキュアを貸し出されて塗ることが出来ると言うことじゃ。
そのままマニキュアを渡すことは出来ぬと、少し揉めたのは内緒にしたい。
そもそも、錬金術で作れるのかと言うと、一応作れなくはないじゃろうが、爪がどんな状態になるのかも分からぬのじゃ。
それなら、安全性の高いワシが作ったマニキュアを塗るほうがええじゃろう。
「しかし、マニキュアとは素晴らしいものですね」
「人間のように野蛮に肌にタトゥーを入れる事は、我々はしませんからね」
「そもそも、獣人族では肌にタトゥーを入れるもののほうが少ない」
「毛が生えている者たちも多いからな」
「爪に呪いを描けると言うのは、まさに画期的よ」
「本当に」
こればかりは、エルフ及び獣人にとっては救いのアイテムだったのじゃろうな。
それまで爪に塗っていたものは、水に当たれば消えるものだったらしく、都度に冒険者ならば塗り直し、他の者達も同様に一日が終わり始まりと同時に塗っておったらしい。
この手間が減るのと、今まで使っていたものより発色も素晴らしいともなれば、やらない理由はないらしい。
では、水を使う職業の者たちはと言うと――泣く泣く爪に塗るのを諦めておったらしい。
その為、マニキュアはそういった者たちの救いにもなるじゃろうと教えてくれた。
「種族が違えば、マニキュアのあり方もまた、変わるのじゃな」
「その通りですわね」
マリアンと共に関心しつつ過ごしておると、豆腐ステーキが人数分出来上がり、エルフたちは動物の匂いがしないことに不思議に思いつつ口にした。
そして――。
「なんと言う旨さだ!」
「初めて食べましたわ!」
「本当に肉を使わずこれほどまでの……」
「ははは、エルフ王にはこのレシピは売れそうじゃな」
「ふふふ、商売上手ですこと」
「いや、いっそ【豆腐ハンバーグ店】でも出すか?」
「それもいいですわね!」
和食で肉を使わぬ料理はいくらでもある。
精進料理などがまさにその通りじゃ。
その為の人材を、エルフ王に提案しても良いかもしれんな。
新たな食の楽しみ方があっても、問題はないじゃろう。
それに、エルフの調理師たちを雇うことが出来れば、懸命に料理は覚えそうじゃしな。
すると――。
「我ら獣人族は肉を好む」
「肉を思い切りかっ食らいたいものよのう」
「ふむ、肉をかっ食らいたいか」
それならば……焼肉屋等もいいかもしれんな。
あれは肉を食うための店じゃ。
今後開拓していくか。
無論、マニキュアが落ち着いてからじゃが。
「色々出来ることは、まだまだありそうじゃわい」
「あら、新しい商売の種でも?」
「まぁの」
「ふふ、楽しみにしてますわ」
マリアンの嬉しげな顔にワシも微笑み、まずはマニキュアを起動に乗らせる。
スタートしたばかりの研修がどうなっていくのか見守るしかできんが、何事も問題なく進んでいければいいが――そう思っておったのじゃがのう……。




