第50話 栄華を極めた、リディア・ダンノージュの死因とは?①
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ワシが今後やっていこうと言う商売はかなり多い。
箱庭師を雇ったことで、その幅は更に広がった。
ひとつは、氷に覆われた箱庭を持つ者を雇えたこと。
これにより「かき氷屋」という、この世界にはない甘味が作れるようになったことじゃ。
冷たくてキラキラしていて食べると溶けて旨い。
となると、この世界では新感覚の食べ物じゃろうな。
さらに言えば、魚を王国で売る際にも氷は重宝するじゃろう。
ひとつは、亜熱帯の箱庭を持つものを雇えたこと。
おかげで、ワシの持っている箱庭だけでは少々足りなかった〝カカオ〟などが手に入るようになり、尚且つマンゴーやバナナと言ったフルーツも手に入ることになる。
フルーツは、ムギーラ王国でも高級品じゃ。
それだけでかなりの儲けにはなるじゃろう。
ひとつは、米が手に入った事による〝丼物〟等の米料理が食えるようになったことじゃ。
これにより、新たな店の販路が広がった。
沢山の人に食べてもらうためには、マリアンが言うには「酒場」と提携するのも良いという考えじゃったが、それも視野に進めていこうと思う。
しかし、問題もある。
〝調理師〟を新たに商業ギルドで雇わねば、到底無理じゃということじゃ。
そちらは50人規模で現在集まっておるが、更にそこには複数の問題もあった。
――小さいお子さんを持つ母親が多かったんじゃ。
その為、ワシが考えたのは【保育園】を作るという事。
【保育園】を作り、そこで働き手も増やして安心安全に預かってもらい、母親たちは仕事に邁進するというのは、あちらの世界でもよく見かけた光景じゃ。
ムギーラ王国ではその辺はまだ進んでおらんようで、ワシは一足先にその制度を〝箱庭〟で、作り上げさせてもらおうと思う。
カズマには悪いが、これも商売のため。
それに、先立ってモデルケースがある方が、何かと便利じゃろうからな。
そして現在、ワシは商業ギルドで箱庭師を更に募り、屋敷や家を持つ者を二人ほど求人で来ていたのを捕まえたわけじゃが――。
「と、いう訳でじゃ。お主達箱庭師の庭には家があるという。出来ればそれなりに大きな屋敷、家があると助かるが、どうじゃろうか? また、家は自由自在に中を変えられたりするんじゃろうか?」
「三階建ての大きな屋敷があります。屋敷の中は自由に変更可能です。保育園……というのは、いわゆる託児所でしょうか? それなら庭も広いため、運動場としては使い勝手もいいと思います」
「私もです。屋敷は三階建てで、とても広いため、貴族様からは〝広すぎて使い勝手が悪い〟と言われまして……。庭も広いんですが、ただの空き地のように広いという事で契約がなかなか出来ずにいます」
「ほうほう……。そいつは、ワシにとってはじゃが、まさに理想の箱庭じゃな」
どうやら眼の前にいる二人は、ワシの欲しがっている箱庭を所持しておるようじゃ。
となると、雇う以外ないわけじゃが、問題は保育士となる者たちと、教師となる者たちを雇うということじゃ。
どちらも施設には必須と言って過言ではない。
マリアンはそれにいち早く気づいた様で、立ち上がると隣に立っていた商業ギルドマスターに「欲しい人材についてのご相談が」と言って席を立っていった。
まさにマリアンの手腕は、カズマの手腕と似ておる。
親子なのじゃから似ていて当然じゃが、とても頼りになる。
「ふむ、では二人はワシの箱庭で雇いたいと思う。そういう箱庭を探しておったんじゃよ」
「「――ありがとうございます‼」」
「しかし、保育士及び教師を雇ってからが本番と言えるが、先立って中身の改築……というのかのう? 改造というのかのう……。それをして貰いたい」
「そうですね。保育所……保育園……でしたっけ? その為には幼い子ども用のトイレや教員用のトイレも必要でしょうし。素案を出して頂けたら助かります」
「素案じゃな? すぐ出せるからちと待っておれ」
そう言うとアイテムボックスからワシが〝ロストテクノロジー〟で作り上げたボールペンと、普通紙を出すと目を見開かれた。
今の時代、そのような質の良い紙はないのじゃという。
ワシがロストテクノロジー持ちじゃというのは黙っててもらわねばならん。
そこで――。
「この紙とペンは、義母であるマリリンから貰ったものじゃ。ダンノージュ領に行った際に買ってきてくれたものじゃよ」
「流石何でも揃うダンノージュ領ですね……」
「ええ、ムギーラ王国にもダンノージュのような強さが欲しい所です」
「そうだな、ロストテクノロジー持ちはそうそういないし」
「いても、ダンノージュ家が欲してるんでしたっけ?」
「ああ、何でも栄華を極めた、リディア・ダンノージュ様がいらっしゃった頃と同じ状態にしたいとか言う願いがあるんだろう?」
「らしいですね。もう100年も前の話ですのに、未だに衰えませんよね」
ダンノージュ侯爵家。
ワシの持つ箱庭の元の持ち主、リディア・ダンノージュ。
よもや、ここでその話を聞くことになろうとはのう……。
「そこまでして探して出して、何をさせておるんじゃ?」
「ロストテクノロジーを使い、作れる物は何でも……という話は聞きましたね」
「お給料も、びっくりするくらい高いとか」
「ほう……。なかなかに、太っ腹な侯爵家じゃのう」
「何と言っても、国を変えるほどの功績を残した方ですから!」
「素晴らしい考えの女性だったそうですよ!」
「ただ、無理をしたのが祟って、40という若さでお亡くなりになったそうですが」
一体どんな無茶をしたんじゃ……。
その辺りは、首に巻き付いておるナースリスにあとで聞くことにするかのう?
あまり気にしておらんかったが、何故そのような若さで亡くなってしまったのか気にかかる。
ワシも無茶は出来んかもしれんからな。
「何か理由は聞いておらんか?」
「ナーカス王国でも、秘匿とされているので詳しい話はわかりません」
「ほう」
「もしかしたら、ロストテクノロジー持ちは長生き出来ないとか?」
その言葉にワシは目を見開き、白蛇となっているナースリスを見つめた……。




