第48話 亜熱帯箱庭ゲット! 新たなる甘味が火を吹くぞ!
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亜熱帯の果物の宝庫じゃった‼
パイナップルにマンゴーにドラゴンフルーツ!
それにバナナにココナッツ。
さらに分岐点のようなところには、カカオの木が植わっておるではないか!
「ほほ――‼ こりゃ、宝の宝庫じゃな!」
「たか……え? なんて?」
「ワシから見れば全てが全て、宝物庫じゃよ! いや、ここにいる全員の箱庭師の箱庭が宝物庫じゃ!」
ワシの言葉に、今まで誰にも相手されず、溝掃除などをしておった四人が目を見開いた。それもそうじゃろう。〝使い道を知っているものにしてみれば宝の宝庫〟じゃが、使い道を知らぬ者にとっては不用品じゃからのう。
「うむうむ、これは是非、四人にはワシのもとで働いてほしいのう!」
「お、俺もその、良いのか? こんな……亜熱帯の……」
「よいよい。この箱庭は誇るべき箱庭じゃぞ! 無論皆の箱庭とて、誇りを持っていい箱庭じゃ!」
「「「「――っ‼」」」」
「この箱庭の使い方を知らぬ者にとっては、分からぬ世界じゃったろうな。じゃが、ワシは皆の箱庭の使い道を知っておる。金を稼ぐ手段も知っておる。どうじゃ? ワシに箱庭、そして何より己自身を賭けてみらんか?」
そう笑顔で告げると、四人は顔を合わせて強く頷き「是非お願いします!」と手を差し伸べてくれた。
皆と握手を交わし、マリアンが持ってきた書類にてワシの箱庭にて衣食住を約束する契約と、就職したという書類を書き、こちらは商業ギルドに提出じゃ。
その仕事はマリアンがしてくれる為、「頼んだぞ」と告げるとマリアンは嬉しそうに微笑んでおった。
しかしバナナにココナッツにマンゴーにカカオ。
まさに最高の箱庭でもあったのう。
無論、氷も米も最高じゃ!
「氷の箱庭の主は――」
「ファリンです」
「そうそう、ファリンの氷はも新たな甘味として人気がでるじゃろうな。後は食べ物に関しては、そのまま食べても旨い亜熱帯のジャガルーのものじゃ」
「あれ、食えるのか?」
「食える。それも大変美味なものしかない。まぁ、手を加えなくてはならないものもあるが、是非それはワシに売って欲しい。どうじゃ、ジャガルーや。ワシ等で最高級の甘味を作ろうではないか?」
「さ、最高級の甘味⁉」
「なに、ワシの箱庭にもあるカカオがお主の箱庭にも沢山あってのう……。こういう食べ物じゃ。最高じゃと思わんか?」
そう言って〝ロストテクノロジー〟を使ってチョコレートを人数分、板チョコ出だしった。
初めて食べるものじゃからのう。
皆恐る恐る口にしてからの表情は、見事なものじゃったな!
「甘い‼」
「なんですこれ⁉」
「ワシの経営する高級店の中でも、一番人気のものでな。チョコレートという」
「「「「おおおお……」」」」
「これがジャガルー。お主がおればもっと作り放題な訳じゃ。手間暇を考えればワシが大本を作って調理師たちに頼む形になるが、どうじゃ?」
「す、す、す……凄いです……」
「じゃろう⁉ これとは違うが、果物でも最高のものがワンサカとある!」
「じゃあ、じゃあ、俺の箱庭は……駄目な箱庭じゃ無かったんだな⁉」
「当たり前じゃ! お主等全員最高じゃ!」
そう声を上げて笑うと、皆は安心したのか涙を流し始めた。
今まで、どれだけ理不尽な事を言われても、箱庭を馬鹿にされても、歯を食いしばって生きてきたのだ。その箱庭に光を見出したワシに感謝してくれた……。
それは、どれほどの悔しさと辛さじゃっただろうか?
その気持を簡単に「わかる」というのは、些かワシには重すぎるほどじゃ。
「ワシは皆の箱庭は宝の宝庫に見える。どうか、ワシに力を貸してくれ」
「当たり前です! どうか、どうか俺達の箱庭を、必要としてください!」
「無駄じゃないんだって、わからせたいんです!」
「氷ばかりでお前の心のようだと婚約者に捨てられたんです……。助けてください……」
「ハヤト様! 俺はアンタに着いていくぜぇ!」
「うむ! 全員ワシが面倒を見よう!」
こうして四人はワシの箱庭にて生活することが決まった。
新たなる商売のスタートじゃ。
取り敢えず、調理師が集まるまでまだ時間がかかる為、米に関してはワシが土鍋を用意して作ってみせた。
まずは米の旨さを知ってもらわねば困る。
調理師達も興味津々で様子を伺っておったが、出来立てのご飯を用意し、まずは米箱庭の二人に食べさせると、目を見開いておったわい。
続けて調理師達やマリアンたちにも食べてもらうと、マリアンは初めてのご飯ではなかったが、全員驚いておった。
「これが……お米⁉」
「なんて美味しい……‼」
「これこそが米の真髄じゃよ。これじゃ、これが食べたかったんじゃ!」
米に感動しておるのは皆だけではない、ワシも感動しておる!
やはり、元日本人たるもの、米は必須じゃな!
うまい! 何よりも、うまい!
「これに牛丼を上からかけたり、丼物がつくれるのう……」
「丼物美味しいですよねぇ……」
「マリアン様は食べたことが?」
「ええ。父について行って食べたことがあります」
「丼物のレシピはワシが本を渡すから調理師達に作ってもらおうかの。米の炊き方も教えたいが……人数がのう」
そう、人数じゃ。
足りないのじゃ。今で手一杯なんじゃ。
作りたいのは山ほどある。
さて、どうにかして人数を集められればいいんじゃがのう……。
それから数日後、マリアンのお陰で「絵師」20名と「調理師」たちを50人ほど雇うことが可能となり、マリアンの手腕には驚きを隠せなかった。
それでも子持ちも多く、「子どもを預けられるところがあるのなら」ということじゃったらしい。
そこで、箱庭にて子どもたちを預かり、働ける環境を提供するとしたら人数が一気に集まったのじゃという。
「ふむ……。託児所でも作るか」
「託児所……ですか? 確かに冒険者たちも子どもが一時預かられる為に託児所はありますが」
「その託児所の短いやつじゃな。保育園……とでもいえばいいか」
「ほいく……えん」
「保育園で預かるのは6歳まで。7歳になったら小学校とかじゃな。勉強を教えるんじゃ」
「べ、勉強を⁉」
「なんじゃ?」
「いえ……子どもに読み書きを?」
どうやらこの世界では勉強は親が教える……というのが普通らしい。
無論、金のある家や冒険者は家庭教師を雇ったりもするし、マリアンのように学園に入るというのもあるそうじゃが、ワシはそれに異を唱えた。
「読み書き、計算ができれば大抵の事はできよう。就職とてだいぶ楽になる筈じゃ」
「それはそうですが……」
「ワシはな? 勉学が出来なくて苦労をした人生を歩んだ。無論前世では……じゃが。じゃから分かるんじゃよ……。人から勉学を奪ってはならんと」
学ぶことを人から奪ってはならん。
それは、人生においてかなりの損をする。
無論自分にあう勉学があるのなら、そっちの道に進めばいいし、勉学がどうしても嫌いじゃというのなら、違う道もあろう。
じゃが、意図的に勉学をさせない、させられない……というのは、違うんじゃよ。
そうマリアンに告げると、少々驚いた様子じゃったが、小さく頷き「私はハヤト様の意思を尊重致しますし、尊敬致します」と言ってくれた。
「よし、ならばこの屋敷を持っておるような箱庭師を雇おう! そこが保育園、そして学校としようかの!」
「屋敷のある箱庭師は多いそうです。すぐ手配致します! 後は保育士さんも必要ですよね? 学校の先生はどうしましょう?」
「子どもがまだ小さく働けんぬ者たちを、保育園で子どもと一緒に……というのもいいが、子育てが落ち着いて孫の面倒も見た者たちも雇おう。勉強はそうじゃな、家庭教師になりたいが、あぶれている令嬢達でも雇えばいいじゃろう」
「わかりましたわ! 絵師さんたちも来てますし、ハヤト様はマニキュアの方をお願いしますわね!」
――こうしてワシ等は、働き方改革として……次のステップへと進んだのじゃった。